Chapter 069.5_スウィート・チェリー<閑話>
『トゥルルンッ、トゥン、トゥン!!』
カレント2,184年。萌木の月12日。
学園で迎える3回目の【春の女神祭】
「…ありがとうございました。マドモアゼル・フォニア。」
「・・・ありがと。ムシュー・チコ。」
産めよ殖えよ。お祭り大好き!
ヒナ様のヒナ様によるヒナ様の為のナンパ祭り!
それが春の女神祭。
この日ばかりは大人しい男の子もオオカミさんに大変身!
大講堂のダンスフロアが時間と共に閑散とするのは、きっと・・・
・・・い、いやん///
これ以上は恥ずかしくて綴れないよ!!
「…大分うまくなったね。」
「・・・ほんと?チコ君とコレットちゃんのお陰!・・・来月、王城で行われる麦秋祭(麦秋祭:ヒナ教の祭事のひとつで、金海の月に催される・・・所謂“収穫祭”のこと。祭事としては最大級で、王城や領主邸でダンスパーティーが執り行われる。ただ、どちらかというと“統治者(貴族)のためのお祭り”であるため、盛り上がりとしては【星月夜祭】の方が上かな・・・)で踊っても大丈夫かな?」
「…ふっ………」
「・・・」
単純にダンスを楽しみたいだけの私は、女の子同士で踊る事が多い。
コレットちゃんやナターシャちゃんは勿論。研究会や部活の先輩・後輩とも!
あとは・・・安心安全!不可侵条約締結済みの、男の娘とか?
「・・・・・・ご馳走を楽しむことにする。」
「…それがいいよ。」
「・・・」
安心安全!“だけどドイヒー”な、男の娘。
に、訂正・・・
・・・
・・
・
「・・・ふぅ・・・」
「…お疲れ。」
「フォニアちゃん!チコ君!こっちだ…よ!」
「ジュース用意してやったわよー!!感謝するがいいわ!!」
「はははっ!2人ともお疲れ様!!…お菓子もあるよ!」
ダンスマスターに3曲ほどご指南いただいた後、休憩しようとコレットちゃんたちの席に向かうと・・・
「フォニアちゃん!次はボクと!」
「いや、ボクとだ!」
「おい後輩!出しゃばってんじゃねーぞ!」
あっという間に、オオカミさんに取り囲まれてしまった
「相変わらずモテモテだ…ね!」
「…みんな懲りないね。」
「・・・フォニア困っちゃう。」
「何よそれ!?嫌味!?嫌味なのね!?…よろしい。ならば戦争よ!」
「・・・受けて立とう?」
「み、みなさん。フォニアちゃんは今、休憩中だから…」
3年生ともなれば、みんなも慣れたもの。
ナンパを無視してお菓子をぱくぱくしていると・・・
「それにしても…今年は去年よりお誘いがすごい…ね?」
「・・・ふぉ?」
「「・・・そ?」じゃないわよ!?…まったく。去年、あんなことしたせいに決まってるでしょ?!自業自得ねっ!」
「・・・はんはほほ?」
「…G君。」
「そ、そういえば…。そんなこともあった…ね…」
「・・・ほうひへはほーはっははほ。」
「何でもいいけど…お行儀悪いよ。フォニアちゃん…」
あぁ・・・
そういえばそんな事もあったなぁ・・・
「あれからアイツ…全然見かけないけど。どうなのよ?」
ヴァーレル君は約束通り、学園内では声を掛けてこなくなった。
ちゃんと約束を守ってくれるし・・・ローズさんたちの圧力にもめげないし!
相変わらずおっちょこちょいだけど・・・タフで律儀なところはステキだと思う。
銘をあげてからも私の仕事を手伝ってくれるし、最近ではグランドマイスターのお手伝いもしているみたい。
いい錬金術師に育ってくれるといいなぁ・・・
「・・・んっく。・・・ノーコメント。」
もちろん彼との関係は続いているけど・・・
いちおう、錬金術師でもある事は秘密にしたいので皆にも黙っている。
騒がれる要素をこれ以上増やしたって、いい事ないからね・・・
「怪しいぃ…怪しすぎる!!」
「…ルクス君といい、G君といい、馬術部の先輩といい…浮いた話。多いよね。」
えっ!?
「・・・ノ、ノーコメント。」
前半2人は“まだ”いいとして・・・ば、馬術部の先輩?
・・・誰!?
そんな話、初めて聞いたよ!?
何処にも綴られてないよね!?・・・なかったよね!?
「フォニアちゃんちのパティシエのお兄さんとも、仲良かったよ…ね…」
「確かに…。泊まりに行ったとき、お菓子の話で盛り上がってたよね…」
「…「・・・あーん」してもらってた。」
「フォニア、アウトー!!」
「・・・の~こめんと・・・」
ノエル君のことか・・・ノエル君のことかーっ!?
「でえぇ!?…誰が本命なのよ!?…やっぱり。目の前で見せつけてくれやがったG君なんじゃないの~?大銅貨…いえ!銀貨1枚!!賭けてやるんだからっ!」
「き、気になる…な…。わ、私も…す、ストーカーさん。かなって…思ってるけ…ど…」
「…ボクは大穴で。セドリック先生に銀貨1枚。」
「攻めるねチコ君!?じゃあボクは…順当に。ルクス君に銀貨1枚。」
そう言いながら、4人はいい笑顔で私に詰め寄ってきた。
「・・・の、のー・・・」
お茶を濁そうとカップ持ち上げようと・・・したら!?
「おぉっと!逃がさないわよ!?」「うぅっ!?」
横から伸びてきたナターシャちゃんの手がそれを阻んだ!?
「ふっ、ふっ、ふーっ…さぁ、フォニア!今日こそ白状なさい!!」
にじり寄るナターシャちゃん。
気付けば周囲の男の子たちも寄ってきてるし・・・
「魔法使いよ!唱えよ!!…よ!」
お、おのれぇ・・・
「・・・ぅ・・・」
かくなる上は・・・
「・・・ランベール・ヴェルニエ君。」
「!?」
「…へ?」「…は?」「…うん?」
「・・・アレシア殿下に言いつけるよ?」
「…!?!?」
「はぁ?」「う…ん?」「アレシア…誰?」
「・・・言ってもいいのかな?去年の星月夜祭最終日。2人で。地下聖堂で・・・」
「っ…!?」「!?!?」
「え…」「…えぇ…」
ふっふっふー・・・
魔女の情報力を舐めるな!!
「・・・ノーコメントで・・・いいよね?」
「え、えぇと…」
「…な…なぜ…」
「…み、見られて…はにゅぁ///!?」「だ、だって…あの時、みんなは…」
「・・・いいよね?」
「「「「はいっ!!!!」」」」
みんな、青春してるね!!
でも、覚えておくといいよ?
恋は甘くて・・・そして、恥ずかしいモノだって!




