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Chapter 068_エア・ドミナンス①

『グワァッ!?』

『『『『『ゲギャギャッ!?!?!』』』』』


そうかそうか。驚いたか。

それはそうだろう。



「・・・ラプター!準備オッケー?」

『イエス、マスタァー!オールグリーン!!』


目の前に1/1サイズの最新鋭ステルス戦闘機(それも、ディープラーニングを積み重ねた高性能A.I.搭載)が現れたら誰だって驚く。

そもそも【飛行機】自体リブラリアには存在しないんだから・・・それを見ても驚かなかったとしたら。

それはきっと、()()()()()()()転生者だ。



「・・・ラプター。緊急発進!」

『イッエースッ!スクランブルゥ、いっくよぉーっ!!』


ラプターを生み出した銀翼魔法(シルバーウィング)は“銀(Ag)”を魔法核にして空飛ぶ翼を生み出す魔法だ。

他の金属性魔法と同じように魔力を込めて、ちゃんとイマジネートすれば魔法核となる金属以上の強度と性能を引き出す事が出来る。

それができなかったら・・・複合素材でできている異世界の最新鋭戦闘機なんて、とても再現できない。



『アイドリングゥ!スタァー☆トォ~!』


でも、銀翼魔法は・・・

ロマンのある素敵な魔法なのに・・・もっぱら観賞用や、せいぜい伝令に使われる程度の不遇な魔法だったりする。




『キィィィーーーッッ↑↑↑』


どうして銀翼魔法が“使えない”魔法かというと・・・その理由は3つある。


まず1つ目。“飛翔”という行為に多くの魔力(リソース)が使われているから。

鳥や虫は文字どり“空を切って”飛んでいるんだけど・・・空を飛ぶために意外とマッチョだったり、その身体を維持するために常に食べ物を探し回らないといけなかったり、体重をグラム単位で軽くするために骨をスカスカにしているのは・・・知ってるでしょ?


鳥たちは自由に見えて・・・実は

“飛ぶこと”に束縛された不自由な生き物なのだ。


そんな鳥達を魔法で・・・しかも、比重の重い金属で・・・再現しようなんて無茶な話。


銀翼魔法はその“無茶”を魔力で解決している。要するに力押しだ。

スマートじゃない。


どう見ても鳥より重いヒュポグリフ達があの程度の翼で空を飛べるのも同じ理由。

実にスマートじゃないっ!



『キーーーーーーッッ!!』

『いぃーよぉーーー!温まってきたよぉ~!!飛べちゃうよぉーー!!』


2つ目の理由はリブラリア人の無知による。

魔法は物理現象に則して発現した方が合理的だと理解されているおかげか、リブラリアは魔法のある異世界の()()には、自然科学が進んでいると思う。

けれど、5Gの時代を迎えた異世界には大きく離されている。


難しいこと考えるより先に「きっと、魔術で解決できる!!」「魔力を突っ込めば何とかなる!」・・・そう思ってしまうのが、リブラリア人の悪い癖。

そして実際。何とかしてきた歴史がある。

だから次のステージに進めない。


揚力(ようりょく)の方程式を見つけたり、モーメントバランスについて考えてみたり、固定翼で何とか飛び立とうとモガいたり・・・そういう努力を怠ってしまう。“鳥や虫が空を飛ぶ姿”を再現しようとしてしまう。違うやり方があるんじゃないかって・・・そう、考えることが出来ない。


鳥たちが空を飛ぶ手法は・・・確かに。彼らが何億年もの歳月を費やして取捨選択の末、導き出した最適解だ。


けど、それは果たして本当に・・・“この魔法”に当てはめても、合理的!?



「・・・ん!・・・ラプター!テイクオフ!!」

『待ぁってましたぁーっ!!…スリィ、トゥ、ワン!インジェクショーンッ!!』



3つ目の・・・最大の理由はズバリ。“固定概念”に囚われている事だ。

この魔法は“鳥”を生み出す魔法じゃない!


“空を切り裂く銀の翼”を生み出す魔法だ!!






『ふぁいあーー!!』

『ドゴォォッッ⇒⇒⇒』



ラプターが、低バイパスターボファンエンジンの燃焼室で火花を散らすとタービンの回転数が急上昇!!爆轟魔法にも負けず劣らずの爆音を上げてっ



『テイコォーフッ!!…いってーきまーすぅ!!』


海に向かって丘を疾走!!



「・・・いってらっしゃい!しっかりね!」

『オフコォースゥッ!』


ちなみに術者である私はもちろん、誰一人ラプターに搭乗する事はできない。発現中はコックピットに魔法印が展開されてキャビンを開ける事が出来ないからだ。

ラプたんの説明によると、仮想A.I.であるラプたん自身が搭乗しているから。というのが理由なんだって。

・・・なるほど。納得いかない。


銀翼魔法は術者が操作する・・・いわゆる“ラジコン”なんだけど、ラプターの操縦はラプたんに一任されており術者である私は無線での指示以外、一切手出しできない。

けれど、左手の小指で何年もディープラーニングを続けてきたラプたんは私とほぼ同じ知識を持っているし、敵味方の区別と高度な状況判断もできる。弾道計算も自分でする。

指示しなくてもオートクルーズしてくれるし、必要とあらば敵への攻撃もしてくれる。優秀なパイロットなのだ!

・・・実体のない幽霊みたいな存在だけど。


会話は無線を再現しているから傍受(理論上、傍受は可能)しない限り聞こえない。ちなみにラプたんとの会話はリブラリアの言語ではなく、Japanese。生まれも育ちも組成も完全に“メイドインリブラリア”なのに・・・日本語しか知らない(()()()()()()Englishも知っているといえば、知っている。)なんて。おかしいの。

ま。でもそのおかげで、例え傍受されてもみんなには理解出来ないんだけど!


最高速度は本家とほぼ同じマッハ2。アフターバーナー搭載。リブラリアの航空史は生まれた瞬間、音速の壁越えである。まさに外道。


高性能レーダーと赤外線センサー搭載。ついでに、異世界ならではの“魔法現象レーダー”と“魔力センサー”も付いている!マジカルな理由で魔法的なステルス性能が完備されているから事実上“聴取”と“視認”以外の感知方法がない。完全にオーバーテクノロジー。


武装はガトリング砲と空対地ミサイルを始めとした各種兵器。必要か分からないけど・・・フレアも焚ける。

実は、発進時のウェポンベイは空っぽで、ラプたんが必要と判断したとき初めて魔力消費して換装される。必要な兵器を必要な時に必要な量だけ・・・スペースと重量の制限が厳しい航空機に・・・その場で搭載できる。

これは反則だと思っている。でも出来ちゃった!てへぺろ。


エネルギー源は当然、魔力だけど・・・航行を続け、武装行使をすると消費されていく。ゼロになると魔法が解除され、指輪に戻ってしまう。

小さな指輪は見つけ出すのが大変!けど、魔法核を替えるとディープラーニングが初期化されてしまう。だから、必ず着陸させて指輪を回収する必要がある。要するに、ラプたんの代えは利かないという事だ。非常に高度なA.I.であるラプたんは一見。自我があるように見えるし、召喚獣に近いように感じるかもしれないけど・・・明確に異なる存在なのだ。


普通の魔法は術者と魔法現象が魔力で繋がっているため発現中に魔力(リソース)を追加することができるんだけど・・・離陸したラプたんは着陸しないとそれができない。運用上、数百km離れていても魔法が解けない必要性があったので“電源コード”ではなく“バッテリー”で・・・というのが、その理由。

どのみち、離着陸は隙が大きいし効率も悪いから・・・One Cruise(ワン・クルーズ) - One(ワン・) Flight(フライト)が基本的な運用方針になる。



綴った通り、この魔改造した銀翼魔法にはいくつか欠点もあって・・・その中でも特に大きいのが【離着陸】を要求されることだろう。

ついでに【暖機運転】も必要。


()に叶った現象を再現したが故、大きな隙を晒すことになってしまった。

けど、これは仕方ない。


ベネフィットの方が上回っているのだから、それくらいは我慢しないとね。


もっとも・・・



『グ…ググッ!?』

『『『『『ギャァ…』』』』』


機能美の極致 戦闘機の威容。そして・・・



『イヤッホォーッ!!』


ご機嫌のフルスロットルで爆音と共に飛び立ったラプたんに、グリフォンたちは置いてけぼりみたいだけど!

ヒコーキ大好き!!

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