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Chapter 066_鳥籠③

「『焦炎の獄火』バァーーン!!」


空に達する特大の業火で、ジジイはヒュポグリフを焼き、



「せぇいっ!!」


水矢で弱った嘴のない首をクロードが薙ぎ落したのは…



「そっちは!…って。心配なさそうだな…」


俺の手合いのヒュポグリフが沈黙した直後の事だった………






「…誰に物を言っとるか!?」

「どうにか…な。セドリック。お前も無事か?」

「おーよ…」


さすがに、単体のヒュポグリフに遅れをとるようなヘマはしねぇか…



「ふぅ…とりあえず。じゃな…」

「えぇ…」

「あぁ…」







「…先生がた〜!」

「…お?」


避難壕からロドリゴ先生が走って来たのは、その直後の事…



「いやぁ〜!さすがですね!」


労いの言葉をかける彼の後ろには



「先生!!魔法…凄かったです!」

「ベルナール先生!どうやったらあんな高火力の業火魔法を!?」

「クロード先生ぇ!か、カッコよかったです!!」


先程までの戦いを見ていたのか…生徒達が群がってきやがった。



「なんじゃ、おぬしら。もう来たのか?」

「こ、こら。下がりなさい…」

「オメーら、うっせーぞ!」


ったく。隠れていろ!ったのによぉ…



「コラッ、みんな!危ないから先生たちに任せて隠れてなさいって言ったでしょ!?こんなところまで来ちゃダメじゃない!!」



遅れてやってきたソフィ先生のその言葉に生徒共は…



「だって…」

「…ねぇ?」

「目の前で、こんな戦い見せられたら気になっちゃって…」

「これも…そう!これも勉強です!!」

「そうだそうだ!実地訓練だ!!」


さっきまであんなにビビッてやがったくせに



「んもうっ。調子いいんだから…」


まったくだぜ…



………

……






「ふ、ふぅ…。死体の処理はこれでいいですね。」


その後…ロドリゴ先生が地面に孔穴魔法で開けてくれた落とし穴にヒュポグリフの死体を投げ入れ、ジジイがそれを焼却し、穴を埋め戻すと…



「みんな。ご飯はちゃんと食べたわね!?」

「「「「「はーい…」」」」」


目の前で死体処理しているさ中、飯を食うのは辛かったようだが…

生徒に急いで出発の準備をさせた俺達は早速…



「…では、行くぞい!」

「「「「「…」」」」」


先に向かう事とした






「だ、大丈夫…かな?」

「大丈夫だって!さっきの…先生たちの戦い。お前も見ただろ!」

「でも…む、群れがいるんだろ!?」

「本当に帰れるのかなぁ…」



威勢がいい奴は少数で、大半の生徒がこんな感じだ。先が思いやられる…とはいえ。

この実習で初めて魔物を相手にした生徒が大半。

ゴビーに手こずった奴も少なくねぇ。

それがイキナリ、悪名高きヒュポグリフ…とくりゃ

ビビっちまうのも。仕方ねぇ…



「だ、大丈夫よ!先生(わたし)たちが皆を守るわ!!」


最寄りの集落までは最短でまる1日。生徒達を引き連れていることを考えると…1日半といったところか。だが…



「あと何回襲われるんだろう…?」


だが、この最短経路は使えない。

なにせ、この経路は半島の中央にある小高い丘上を歩くルートだからだ。


ヒュポグリフ…そしてグリフォンは草原に住まう魔物。

渡りのために立ち寄るこの半島でも、丘上の草地で羽根を休めている。むろん、そんなルートは取れねぇ。


かと言って(かた)に入っちまうと足元がおぼつかねぇ…


そして、丘にしろ潟にしろ、見渡しが良く身を隠す物が殆どないのは変わらねぇ…



「おらっ!ビビってんじゃねーって!!…案外、もうどっか行っちまってるかも知れねーしよっ!」



海に突き出た半島…それも、その最深部まで来てしまった俺たちは“籠の鳥”も同然。

この【鳥籠】に安全な場所など。無い…



「そ、そんなコト言われても…」

「さっき襲われたばっかりなのに…」



生徒たちだって…誰だって。

んなこたぁ分かる…







「…こ、ここで待ってちゃダメなの?」


1人の女子生徒が声を上げたのは…歩き始めて、まだ数歩の時だった…



「だ、だって…だって!その方が安全でしょ!?エビの魔物食べてお腹いっぱいになれば、帰るんでしょ!?こ、このまま…ここで隠れていれば!」

「ジ、ジゼル!?私達はそれで良くても…フォニアが、ナターリアが…コレットも、チコも、アランもいるのよ!」


その言葉に反応したのは、ソフィ先生

“かわいい”生徒を、誰一人として失いたくねーんだろ…



「で、でも…し、仕方ないじゃない!」

「ジゼル!あなた…友達を見捨てる気なの!?」

「だ、だって…そ、それに!フォニアちゃんは友達なんかじゃないもん!!」

「なっ…」


…ったく。

んな話してる場合じゃねーだろ…



「あ、あなた達は…クラスメイトでしょ!?仲良く…」

「話しかけても無視するし…瞳も合わせてくれない子と、どうやって仲良くなれっていうのよっ!!」

「そ、それは…」

「…ボクもジゼルちゃんと同じ意見かな。」

「ルクス君!?」


だーもうっ!めんどくせー奴が加わりやがって!

しかも…



「フォニアちゃん…先生達より強いでしょ?僕らが行っても、足手まといなんじゃない?」

「っ!?」


ほんっと!余計な事ぬかしやがってっ!!



「…あ、あれ?ルクス君はフォニアちゃんと…」

「…たまたま席が近いから話すだけさ。ボクも彼女…嫌いだね。お高く止まってて…さ。」

「そ…そうなんだ!!…そ、そうだよねっ!」



「おぬしら、いい加減にしないか!!」

「セコンド!おめー、ちょい黙ってろ!」

「…」

「お、怒られ…」

「君もだよ。ジゼル!!」

「………ぶー…」


「ソフィ先生も…と、とにかく行きましょう!」

「プリモ達の班を追いかけるのはベルナール科長のご判断です。今は…進みましょう」

「………そ、そう…そうでしたね。ゴメンなさい…」



よー…やく。

騒然とした場を無理やり鎮め…



「…ではいくぞぃ!」


ジジイが号令を上げた…


















「「「「「「っ!!」」」」」」


その時だった



「い、今の…」

「今の気配は!?」

「オ………オ、オイオイオイ…」

「まさかっ!」

「こ、これほどなの!?」


魔法…

そ、それも特大の広域魔法が行使された気配!?

そして同時に



『…』


向かう先の丘から漏れたのは…あ、青い光!?

魔法印か!?!?



「あの色…」

「そ、空色…火魔法か!?」

「まさか…オ、オクタシアで伝説になっているという!?」

「あ、あの色の魔法印を発現できる者といえば…」

「あの子…た、戦っているっていうの!?」


そして遅れて現れたのは…く、黒い煙!?



「お、おい!何だよアノ雲…煙!?」

「ふぅん…さすが…」

「…どうしたの?ルクスく…」


そして悟る…いや。確信する



「あんのヤロォ…やりやがったな!?」



あの丘の向こうで何が起こったかを…






「こ、こうしちゃおれん!」

「スグに発つわよ!!」


始まってしまった…

その事に気付いた俺たちは焦った。


綴られた魔女…それも、煉獄の魔女の弟子だ。

中級魔物に引けを取るはずがない。



「行くぞ!!」

「み、みんな出発するよ!!」


だが…












『ドォォ…』


「…うん?わぁっ!?」

「うをっ…びっ、びりびりって?か、風!?」

「海風じゃ…ないよな?もしかして、さっきの…」


「オラ、オメーら!さっさと歩け!」

「「「「「は、はいぃ!?」」」」」


確かめないわけにはいかない。

光が見えてから数十秒後…10km以上は離れているであろう、この場所に轟くほどの爆音が、リブラリアに何を綴ったのかを…


………

……
















・・

・・・



班のみんなには魔法で作ったバンカーに隠れてもらった。

ヒュポグリフの群れが見える距離・・・とはいえ。丘の影で目立たないし強度は核シェルター並。

魔物に見つかる心配も・・・戦いの巻き添えを受ける心配も無いだろう。



「・・・ふぅ~・・・」


だから今は・・・



『グクゥワァ…』

『ギャギャッ!』

『グルゥ?』

『グギュグググ…』


丘の上に立つ私に気が付き始めた、この数百頭の小鳥に集中しよう。



「・・・すー」


まだ距離があるせか判別出来ないけど・・・これ程の群れだ。

まず間違いなく上位個体のグリフォン・・・竜並に強いとされる、空の王者・・・もいるはず。


グリフォンにはアラクネやヒュドラのような特殊能力は無いものの、固有魔術で風を自在に操ることができるという。

力は強く。身体は大きい。それでいて俊敏で機転も利く。

頭脳も人間の子供くらいはあると言われている。

そして残忍で執念深く・・・好戦的。


おまけに今は、仲間の小鳥を連れている。


手ごわい相手だ・・・




「・・・は〜・・・」


大丈夫・・・準備は万端。



『グルルルッ…』


だ、だいじょうぶ・・・私なんて一飲みにしちゃうくらい大きいヒュポグリフだけど、恐れることは無い。作戦は完璧だ!

この魔法なら一撃でヒュポグリフを全滅出来るはずだし・・・出来なかったとしても、保険がある。


フェニックスを倒したことだってあったじゃないか!

じ、自信を持て!私っ!!



「・・・」


大丈夫・・・だいじょうぶだいじょうぶだいじょぶだいじょぶ・・・


・・・やれる!!



「・・・ん!!」


唱えますっ!






「・・・すー『衝撃よ』!」

投稿前に修正したと思っていたところが直っていなかったので修正しました。

・・・よろしくね(22/05/02)

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