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Chapter 065_鳥籠②

リブラリアには【グールー】のように逃げ惑う魔物もいれば、“ヒト”を“食料”として積極的に襲う【ルーフベア】のような魔物もいる。


精霊のくせして子供(卵)が生まれたドラゴン(その魔力は何処からきたと思っているんだ!?)や、ボッチが解消して大はしゃぎの天使もいる。


1,000年くらい昔に全人類(人間+獣人+エルフ+ドワーフ)を数日で1割くらい削った伝説の氷龍(ひょうりゅう)もいたらしい。一種の王国を築き上げたアラクネだっている。


姿も、性格も、生態もバラバラ。非常に多様な魔物(水龍の2柱も。サリエルも。私が宿すまでは分類上“魔物”。“魔物”は“種族”を表す言葉じゃない。)の中で、果たして最強の魔物は?と聞かれれば・・・答えは恐らく、



【氷龍 グラ二クェートゥム】

だろう。


現在のヴィルス帝国にあった、いくつかの小国を“通過した”だけで崩壊させ。降り立った場所は1,000年経った今でも“氷漬け”になったままだという。

当時勃発していたエルフとドワーフの戦争を終結させる切欠(きっかけ)にもなったとか。“初代”大図書館(グランリブラリア)を崩壊させた(現在、デュクサヌ・ウェーバル宗主国に建立されている大図書館は“2代目”)のも、この龍だ。


この龍(【龍】と言われているけど・・・エルフとドワーフの戦争は人間と獣人も巻き込んでいたため、当時の世論は相当に混乱していた。さらに大図書館が失われたため、記録も散逸している。実態はよくわかっていない。以後、一切の目撃情報が無いため“幻獣”と呼ばれる事も多い。)は数日間で倒された(一応、史実では「全人類が奮闘して倒した」と綴られているけど・・・実際は「追い返しただけ。」もしくは「勝手にいなくなった。」のでは?という説が有力視されている。)のだけど・・・その被害は甚大で。多くの命と遺産が失われ、復興には数十年を要したという・・・


でも、そういった凶悪な魔物は数が少ない。

だから被害は地理的にも時間的にもピンポイント(全人類が・・・とは言ったけど、実害を受けたのは北方の人だけ。さらに、数百年から数千年に1度あるかないか・・・というような出来事)。


そもそも、そんな魔物がうじゃうじゃいたら・・・人類はとっくの昔に滅亡しているよ。



けれど一方で。リブラリアには全時代・全地域に渡って・・・“言葉通り”の意味で全人類に被害を齎している魔物も存在する。


この魔物の脅威度は中級で。1頭1頭は決して倒せない相手じゃない。


けれど厄介な事に

この魔物は翼を持ち、空を飛ぶ事ができる。


ある日突然。長閑な集落から一人残らず住人が消えた事がある。

平和な午後のティータイムが血生臭い餌場と化した事もある。

合戦の最中に飛来して。勝負を“両者全滅”という名の引き分け(ドロー)にしたこともあったらしい。


基本的に“群れ”で行動しているけど・・・時々、野良となって単独で。お腹も空いていないのに戯れに狩りを行う事もあるという。

好戦的で気まぐれ。それでいて執拗なこの魔物は・・・正に【空の狩人】


数百頭クラスの群れには災害級魔物である上位個体がボスとして君臨しており、対処するには“騎士団”規模の戦力が必要と言われている



毎年、各地で甚大な被害を齎しているため警戒されているけれど・・・規則正しい生活をおくっていると言われている群れですら、この有様だ。野良に至っては、その行動を予想するのは不可能に近い。


私達リブラリア人はみな、この魔物の脅威に怯えながら生活を続けてきたし。これからも“そう”しなくてはならない。


これはもう、

異世界島国の地震や感染症と同じ・・・天災だ。


その魔物の名は・・・


・・・

・・
















……

………


「ヒュポグリフ…3頭か!?」

「くそっ!!本当にいやがった!!」

「せ、せせせ生徒を守りながらなんて…そ、そんな!?」

「何言うとるか!?グリフォンに率いられた大群が来んかっただけマシと思え!!こうなった以上…やるしかあるまい!!」


現れたヒュポグリフは3頭。

うち1頭は翼から血を流した痕があり、もう1頭は嘴を半ばで失っている。

…セコンドがやった個体で間違いあるまい。


わざわざ復讐の為に戻ってきたという訳か…ご苦労なこった。



「「「「「きゃぁーーっ!!」」」」」

「き、きたぁ!!」

「ウソ…だろ!?」

「アレが…」

「デ、デカイ…せ、先生!!」


慌てふためく生徒たち…無理もねぇ。

だがっ



「おめーら!ウロチョロすんなっ!!」

「そうじゃ!騒ぐと標的にされてしまう!!」

「み、みみみんはソフィ先生の元に走れ!慌てず…けど、急いで!!」

「いけっ!急ぐんだ!!」

「みんな、早くいらっしゃい!!クロード先生とロドリゴ先生が避難壕を築いてくれたわ!!…ルクス!あなたはジゼルを守ってあげなさい!!」


ここには学園教師が5人も集まっている。数十人の生徒を守りながら…というのは面倒だが…

ま、なんとかなんだろ。


問題は…



「…ソフィ先生とロドリゴ先生は生徒達の護衛を!!セドとクロードは手負いの2頭をそれぞれ相手にせい!」


…なんて考えている間にジジイが指示を出しながら魔物に向かってくじゃねーか!?



「…って、おいっ!ジジイ!?」

「ベルナール科長!?」

「人をジジイ扱いするでない!!『炎よ 侵略者なり』フゥアイアーボォオールゥ!!」


指示だけ出してジジイは早速ヒュポグリフに火球魔法(ファイアーボール)を行使!?



『『ギャウワァ!!』』

『グギャウ!!』


ジジイが放った特大の火球により、翼に傷を負っていたヒュポグリフが避けきれず落下!後の2頭も散り散りになった!!



「ほぅれセド!!落ちた小鳥は貴様がなんとかせい!!クロードはそっちじゃ!サッサと動かんか!!」

「クソっ!…たくっ。わーったよっ!」

「た、ただちに!!」

「後ろのお二人も頼んだぞ!!」

「「頼まれました!!」」






「っくぞをらぁ!!」


俺の相手は手負いの1頭!

適正が木属性な俺は、空飛ぶ相手がチィと苦手だ。

ジジイはそれを承知で、俺にコイツを任せたのだろう。


…ったく。

お節介っつーか…流石っつーか!



「すぅ『茨の願い 花の森を這う』ニードルニードルニードルおらぁ!!」


『ギャウ!ギュ、ギャッ!!』

「ニードルニードルニードルニードらぁ!!」

『ギュギュ!ギャ、ウギャウ!!』


「ちっ…」


手負い…とはいえ

さすがはヒュポグリフ。中級魔物は伊達じゃねー…か。


飛び立つ事は出来ねーようだが、翼をはためかせて3mを越える巨体を浮かせ。ステップでも踏むかのように俺の棘を避けやがった…くそっ!



「ならっ!コイツでどーだ!!…すぅ『果実の願い 愛し子守りし 花衣 影の森を這う』スティンガーぁ!!」


完唱と同時に地面に浮かぶアンバーの魔法印。

その中心から1輪の花が『ボコッ…』と這い出し。そして…



「射貫けぇぇぇ!!」


発動子であるナイフを向けた先…ヒュポグリフめがけて!



『ダダタタタッ!!』


目にもとまらぬ勢いで、数多の“針”を打ち出した!!



『ギュギャウッ!!』


木魔法の中でも特に発現速度が速いこの魔法。

反応して急所への命中を避けたのは、さすがヒュポグリフ!だがっ!!



「終わりじゃねーよっ!!」


木属性第4階位 針魔法(スティンガー)は…発現した場所から移動させることは出来ねーし。射程も短けぇ。おまけに威力も高くねぇ。

だがっ!!



『ギュァウ!?』

「うぉら、アッチだ!!」


一度発現させれば…命じた方向に即座に花前を向け、魔力と意識が続く限り針を射続ける事が出来る!!



『ダダタタタッ!!』

『グギャウッ!!』


威力はねぇ…とはいえ!!



「まだまだぁ!!」

『ダダタタタッ!!』


ノンストップで浴び続ければ



『ダダタタタッ!!』


当然…



『グギュ…ゥ…』


こうなんのが理だ!!



「これで…終ぇだっ!」


トドメにヒュポグリフに駆け寄り。その首に…



「ぜりゃあっ!!」


ナイフを刺し込む!

すると…



『ギャッ!?!』


赤い飛沫を上げる喉からひと声。



『グブッ…ゴプッ………ッ…』


それを最後に



『ズズゥゥンッ…』


地に伏した…

林檎です!


エビ好きに悪い人はいない。って・・・

最近どこかで聞いた気がします。



でも、どこだったか・・・思い出せないや。

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