表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
17/476

Chapter 015.5_食欲の秋 <閑話>

林檎です。



1話完結の閑話。


ダンジョンでモンスターをハンティングするフォニアのお話になります。

時系列的には少し戻って、本編の半年前くらいになりますでしょうか。



登場人物はフォニアを入れて8人。

未出もいますが、全員、重要人物ですので名前を出します。


本小説初のバトルパート!

どうぞ、ご賞味あれ!


<閑話>の表記を統一する改定を行いました!(21/11/28-10:00)

ある秋の日。



「・・・すー『林の願い 北の森を往く』ブレス。」


突風魔法(ブレス)はその名の通り、突風を吹かせるシンプルな風属性魔法だ。



『ザザザザァァ――――ッッ!!!』


同じ魔力を込めたのなら・・・

風を狭い範囲に圧縮させた方が威力は上がる。

けど、効果範囲はとうぜん狭くなる。


風を拡散させると威力が極端に落ちる。

けど、広い範囲に効果を及ぼす事が出来る。



つまり、こういう事。

いっぱい魔力を込めれば、広い範囲に暴風を吹かせることが出来る!



『バラバラバラァァッッ…』


劣級魔物プルーナッツはプルーツリーの木になる木の実型の魔物だ。

年がら年中実るけど、じつは秋のこの時期が一番美味しい!


木から落ちてきたプルーナッツを捕まえるのがセオリーだけど・・・でも、セオリーなんて関係ないっ!

落ちてこないなら落せばいい!だって食べたいんだもん!!



「・・・たいりょう大漁っ!」


少し先のくぼ地に根を下ろすプルーツリーに突風を放ったため、大量のプルーナッツが私の真上から落ちて来る事は無い。

突然、母なる木からふるい落とされたプルーナッツたちは訳も分からず、「なんだなんだ?」とでも言いたげに地面をピョンピョン跳ね回っている。

意志を持っている木の実なんて、想像しづらいと思うけど・・・ビジュアルとしては、大きめの栗(イガ無し)が地面を跳ねている感じである。

シュールと言うか、なんというか・・・


ま。それはいいとして!



「・・・む。もう気が付いたな・・・」


感覚器官が1つもないくせに・・・プルーナッツたちは自分達を落っことしたのが私だと気が付いたようで、近い者から順に跳びかかって来た。

かくなるうえは!



「・・・すー・・・『(かまど)よ 時を包みし (おわり)衰火(すいか)』ファイアーウォール!」


火属性第3階位 火壁魔法(ファイアーウォール)

ファンタジーゲームでもおなじみの、火の壁を生み出す魔法だ。

防御魔法なんだか、攻撃魔法なんだか・・・立ち位置が微妙な事が多いけど



「・・・包んで!」


リブラリアの火壁魔法は超攻撃的!!

前に構えた短剣の先から炎の壁は左右に分かれ・・・



『ゴバァァァーッッッ!!』


と音を立てながら、迫るプルーナッツたちを円を描いて囲い込み、さらに中心へ迫る!

この魔法は生み出した火の壁をある程度操作することができるのだ!



『ババババッ…』


魔法の(かまど)にくべられたプルーナッツたちに逃げ場なんてない。

なす術も無く、あとは・・・



「・・・んふふっ。・・・まだかなまだかなぁ~・・・?」


・・・あとはコンガリ。焼けるのを待つだけっ!


・・・

・・














「・・・うぅっ・・・真っ黒・・・。」


フォニアのダンジョンおやつ・・・失敗である。


森の中に現れた黒いミステリーサークル。

死の灰に覆われたその場所に食べ物の気配はなかった・・・


それでも諦めきれず、焼け跡を木の棒でつついて探す・・・と!?



「・・・やた!これは食べれそう!・・・よっ・って!あちちっ・・・ふ~、ふぅ~・・・うぅ、落としちゃった・・・・・・ツンツン・・・うぅ~・・・だ、大丈夫・・・かな?・・・ん。これなら・・・・・・か、皮っ・・・む、()いて・・・・・・ん!よしっ!・・・いただきまーす!もにも・・・・・・ぺっ。」


私はちょっぴり反省していた。






「・・・う゛ー・・・外はまっ黒。中は生焼け。・・・どうしてこうなった?」


焼野原の中心で唇に指を当てて考える。


一体何が悪かったんだろう・・・?

・・・単純に、火力が強かった?いや、でも・・・生焼け?

じっくり弱火で焼かないとダメな感じ?


そういえば私。

料理って苦手だったかも・・・


ひょっとして魔法の問題じゃ・・・ない?






『くー・・・』


お腹すいたなぁ・・・


・・・

・・





















『…ッッ』


「・・・う!?」


街に帰って専門店の焼きプルーナッツ食べよぉ・・・

そう思って、森の出口に向かい歩いていた時だった。



『ェッ…‥』

「…っ!!」


森の奥から何かの音。誰かの声。

音も声も急速にこちらに迫っている!?






「・・・っ」


万が一に備え身構えると・・・次の瞬間!



『ズザザッッ!』


足先を低木に擦りながらも跳び越え、走ってきたのは・・・



『クエェーーッ!!』『グワヮァーッ!!』

「・・・グール―!?」


飛べない鳥型の劣級魔物『グール―』!

このダンジョンで一番実りがいい獲物だ!!しかもそれが・・・2羽!?



「まっ、まてぇぇえ!!」

「は、はやいっ…」

「ひいっ…げ、限界ぃぃ…」


息も絶え絶えに遅れて現れたのは、私も良く知る先輩冒険者パーティーのよに・・・あ、あれ?3人?

と、とりあえず声はかけないと・・・



「・・・アベルさん!ジルさん!ナタリーさん!」

「「「フォニアちゃん!!」」」


このパーティーにはもう一人、ジュリーさんという元気な女性がいるはずなんだけど・・・



『エェェ…』『クワッ…ワッ…』


「くっ…ご、ごめんフォニアちゃん。いっ…いま…はっ…」

「み、見ての通り…だはっ…はっ……」

「はぁっ…ひぁっ…っ…」


2羽と3人は私から少し離れた場所で距離をとり、息を整えながらにらみ合っていた。

グール―はかなり脚力のある魔物だ。ウコッケイくらいのサイズ(見た目は斑点がある褐色で、丸々としている・・・大きいウズラと言えば分かるかな?)だから1歩が小さく、それ故に人間でも頑張れば追いつくことが出来るけど・・・



「・・・ん。分かってる。邪魔はしないよ。・・・ジュリーさんは?」


助けを求められたのでもないかぎり、他人の狩りに手出しはしない・・・

それは異世界共通のルールだ。


でも一応、もう1人のメンバーの所在は聞いておく。

森の中で倒れている・・・とかだったら、のんびりしていられないからね!


ちなみにジュリーさんは、このパーティーで斥候や遊撃を担当する・・・ま、RPGで言う所の【盗賊】職に近い事をしている人だ。

彼女は木属性魔法を宿しているから先回りすれば罠を張る事が出来るし、身軽で弓矢を武器にしているから追いかけて攻撃するのも得意。


苦戦しているのは、彼女がいないことが大きいだろう・・・



「はぁ、はぁ…じゅ、ジュリーは…ね、寝坊!」

「・・・う?」


寝坊?

ま、まあ・・・それなら仕方ないか・・・



「…バカがっ」

「ホンっと信じらんないっ…狩りのっ、前っ…なのにっ…はぁぁぁ~」

「…し、仕方ないだろ………」


ジルさんとナタリーさんは含みのある言い方。そして目を逸らすアベルさん。


何が・・・


・・・・・・・・・あっ・・・











「・・・ばいばい」


呆れたとたん空腹を思い出した私が、彼らに背を向けると



「ちょっ!ちょっと待ってフォニアちゃん!!」

「一羽やる!一羽やるから!!」

「手伝ってぇ~!!このままじゃ今日の実り無しなのよぉぉ~~~」






・・・一羽もらえる?



「・・・んっ!」


そうと分かれば!



「・・・すー『茨の願い 花の森を這う』」


木属性魔法 第2階位・・・



「ニードル!」


棘魔法(ニードル)

名前の通り、棘を・・・



『クエェッ!?』


地面から突き上げる魔法!!

さらに!



「ニードル!!」

『グヮヮッ!!?』


この魔法は呪文を唱えた後、意識をそらさない限り魔法名(キー)を繰り返す事で魔法を連射出来るのだ!!



『クェェ…』

『グワァ…』


「「「おぉっ!!」」」


グールーはほぼ全身に価値が有る。

だから傷付けないように先端を丸めた棘で空へと打ち上げて・・・



「『芽の願い』フェンス!」


木属性第1階位 柵魔法(フェンス)で蔦のクッションを生み出し、



『ズザザザザァ…』


優しくキャッチ!



『クェ…ッ…』

『ググッ…』


・・・蔦に絡まったグール―は身動きを取る事が出来ない。

これでおしまいだ・・・



「は、はは…あっさり捕まえちゃったか…」

「お見事!」

「はぁ…。木魔法のスピードと応用力の高さ。なによりフォニアちゃんのセンスに脱帽ね…」

「・・・んふふ。ありがと。」


・・・

・・











「・・・ばいばーい!」

「あぁ!バイバイッ」

「またなっ」

「今日は助かったわ!また、森で会いましょうね!」


捕まえたグールーはアベルさんとジルさんの手によってその場で解体され、一羽は私が。もう一羽は彼らがギルドに納品するため持って帰った。



「・・・んふふっ。グールーだぁ!」


城門で3人と別れた私は1人。血抜きされた丸鶏を見つめてニンマリ!



「・・・どうやって料理してもらおうかなぁ・・・トマト煮込みかなぁ?それとも、王道の照り焼きかなぁ?」


クークー鳴るお腹を抱えて家路を急ぐ私。


グールーは食べられる魔物だ。

皮もお肉も内臓も臭みがなくて味が濃く、骨からも濃いダシが採れるので、

どんな料理でも美味しく頂ける!当然、人気も高い!!


・・・なのに、人工的には飼育も繁殖も出来ない。

捕まえようにも、逃げ足が速くて隠れるのも上手。

オマケに、ピンチになると甲高く鳴いて近くの魔物を呼び寄せるという最悪の

習性を持っている(今回は走りっぱなしで余裕がなかったのかも・・・)ため、

入手困難。


故に高価で。ウコッケイサイズしかなくても一羽で10,000ルーン(≈1万円)

以上もするのだ!

初心者ばかりのこのダンジョンにおいて、この価格は非常に魅力的。

だからみんな狙うんだけど・・・ギャンブル要素が強くて。

なかなか・・・ね。



「・・・そうだ!じゃがいもとキノコと一緒にグラタンにしてもらおう!!・・・ホクホクポテトとジュワっとチキン。キノコとチーズのハーモニー・・・あぁっ///たまんないっ///」


無論、調理はお母様とデシさんにお願いするんだけどね・・・



「おっ…お帰りフォニア!!」

「おやおや、お嬢様のお帰りですかぁ!?」

「ほら、ロティア!お姉様よ!」

「う~?…ねちゃ?」


って、そんな事考えていたら我が家はもう目の前!!

ちょうど畑から帰ってきた皆が玄関で荷物を片付けていた!

私は皆に気付いてもらえるように獲物を高く掲げて・・・



「・・・ただいまみんなっ!今日はご馳走だよ!!」

お気に召されれば、ご評価いただけると嬉しいです。



次からまた、本編が再開されます。

数話に渡って【治癒術師】としてフォニアのお話となります・・・


未出の魔法の説明を省いてしまっていたので追記。失礼しました(2021/10/03 20:30)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ