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Chapter 063_鳥籠①

朝…



「ふぁぁあああぁあ゛ぁぁあ~~~~…」


あぁ…

やっと。朝か…



「ねっ…むぅ…」


夜中…

ソフィ先生とベルナールのジジイが合流してからは忙しかった。

生徒を寝かしつけてから教師で緊急会議を開き、今後の方針を話し合い。

そして…



………

……






「…んなっ!?お、襲われただと!?」

「えぇ…」

「大丈夫なのか!?」


ソフィ先生によると…


最期に出発した生徒の班が信号弾を打ち上げた。

ソフィ先生とベルナールのジジイが急いで駆けつけてみると。そこでは…



「応急処置はしたけど…」

「傷自体は大したことないんじゃがな…」

「…何か問題が?」

「か、顔に怪我を…ね。かわいそうに…」


たまたま居合わせた運の悪い女子生徒が魔物に襲われ。傷を負ったというのだ。

まさか本当に…



「ま、魔物の方は!?」

「…幸い。セコンドがおったのでな。」

「彼が皆を守ってくれたみたいなの。私達が到着した時にはもう、魔物は逃げ帰っていたわ。」


ほぉ~…

確かに剣の腕は大したモノだと思っていたが…あのボウズ。

初見でアノ魔物を相手取るとは、やるな…



「でも、だからこそ…」


セコンドの勇姿に感心している俺をよそに、ソフィ先生は深刻な表情で言葉を続けた。

言いたい事は分かる…



「復讐に来るな。…間違いなく。」

「じゃのう…」


あの魔物は好戦的で…そして。“執念深い”という最悪の性格をしている。

獲物を逃がし…反撃まで受けたとなれば…まず間違いなく復讐に来るだろう。

それも、群れをなして



「な、なななな…」

「ど、どうかルクスを責めないで!あの子は皆を守る為に…」

「ワシとてその場にいれば同じ事をしただろう。…取り逃して群れに戻してしまったのは、マズかったがのぉ。」

「さ、3羽もいたんですよ!?しかも、怪我したジゼルを庇いながら…。十分すぎるわよ…。」

「やむを得んか…」


もはや、この半島に逃げ場など無いのは明らかだった。

日が落ちた今はいいが…

目が効くようになればきっと。人と見れば誰であれ容赦なく…

って!!


まてよっ!



「…ちょ、ちょっと待って下さい!!」


ロドリゴ先生が声を上げたのはその時だった。



「プ、プリモの班は…だ、大丈夫ですかね!?」


俺が思い至ったのも、正にそれだ



「…うん?フォニア達の…班?大丈夫もなにも。生徒達はみんな…」


この時はまだソフィ先生とジジイに魔女達の班が復路に出発していた事を告げていなかった…



「…ま、まさか!?」

「「「…」」」


「え…?」


黙り込む俺たちを見た2人…

と、特にソフィ先生は…



「う、うそ…よ、ね………?」


顔色を…



「あ、あの時は…まだ…け、決定的な証拠が…」

「…じゃが。ブラッディーシュリンプの出現が少ない事をおぬしらも感じたであろう?」


「で、ですが…」

「ですが…何よ?クロード先生!!“ですが”何よ!?異変を感じていたんでしょ!?…な、何で?なんでなんでなんで!?!?!?」


「あ、あの子自身も可能性を考慮したうえで…」

「生徒に(さい)を執らせたとでも言うのか!?こんのバァカもんがぁぁぁ!!!!」


……

………






「…ほら、セドリック。水やるから…お前も。顔拭け。」


「おっ…ありが…冷だっ!?」

「…目、醒めるだろう?」

「…ちっ。」


結局あの後…

どのみち、その時間からでは日の出前に魔女達に追いつけない上、他の生徒が居るのに戦力を削る事などできない…と言う事で。


ここで夜を明かし、出来るだけ早く出発して魔女達を追いかける事となった。



「ふっ…。ところで…大丈夫ですか?ロドリゴ先生?」

「………えっ…も、もぉちろん。デージョブだぁ…」

「「…」」


無論

あの状況でソフィ先生とジジイに夜番を任せるわけにもいかず…



「はぁ〜あっ…ったく。なんだってこんな事に…」

「…今更言ったところでどうにもならん。…だろう?」

「そう…です…よ…」


ジジイの火事(かじ)が堪えたのか…

2人とも大人しくなりやがって…ったく!


「だ、だが…今の時期は!?」

「…相手は魔物だ。唱えた通りにはならん。…それはお前が、1番よくわかっているだろう?…“元”冒険者殿。」

「っ…」

「い、いったいどうな…」

「ドーナルもコーナルもねーよ!予兆があったのに危機管理が甘かったと言われれば…」

「セドリック!気持ちは分からんでも無いが…今は!生徒達の事を考えろ!!」

「あんでテメーはそんな…」


ロドリゴのオッサンの呟きに苛立ち

クロードの言葉が癇に障り

俺が叫んだ…



「…止めんか!見苦しい…」


…その時だった



「ベ、ベルナール科長…」

「ベルナール様っ」

「ジジイ…」


俺とクロードが学園生だった頃から、ずっと()()()()()()の…ベルナール魔法科科長が…発動子であるねじれた槍(ヘンなスピアー)を杖に近づいてきた



「…生徒達はまだ寝とる。大声を出すでない。」

「…」

「「す、すみません…」」


「それとな。セドリック」

「…んだよ?」

「相手が相手だからな。弱気になるのも分からんではないが…」


…ちっ。

余計な事を…



「…ワシらの背中を見る者がいる事。忘れるで無いぞ。ワシとて不安しかないが…しかし。堂々とせにゃいかん。それが教師と言うものだろう?…うん?」

「…」

「…お主ら2人もだ。最期まで学園教師らしく、生徒の前に立って戦わんかい!!」

「「…」」


…ったく。

キレイごと抜かしやがっ…



「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!指導者たる者。キレイごとの1つや2つ唱えられんでどうする?」


こんのジジイ!…人の心よみ…



「…ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!瞳は喉より物を言うわい!!」

「「「…」」」

「それに…な。昨日はワシも大声をだしてしもうたが、ワシとて同じ状況なら同じはん…」

「「「「「先生!!」」」」」


ジジイが言葉を続けようとした、その時

慌てた生徒達が駆け寄ってきた



「き、来ました!!」

「先生!!」

「き、来たっ…」


生徒たちが指さす先…水平線の彼方。

昇り始めた太陽を背に…



「む、群れです!!…群れで来ました!!」

「ど、どどど…」

「先生ぇ!!!」


東の地平線低く

大きな翼で朝日を照り返しながら…



「…寝ている生徒(みな)を起こせ!!全員だ!!ソフィ先生も呼んで来い!!」

「わ、私は…そ、そうだ!!クロード先生!!一緒に築城魔法(ルーク)を!!避難壕を造りましょう!!」

「よし!スグに取り掛かりましょう!!」

「ほれ、お前たち。映えあるエディアラ王立総合学園の生徒であろう?騒ぐでない。…あれしきの小鳥、ワシらが成敗してくれるわい!!」


「「「「「先生ぇ!!!」」」」」


………

……
















……

………



「・・・やっぱりいたか。」


カ…カレント…な、何年…だっ…け?

…と、とにかく今日!

お天気は雲1つない快晴。



「フ、フォニア…」

「や、やっぱり戻った方…が…」

「…だよ。」

「今ならまだ…」


先生たちの待機する折り返し地点を過ぎた私たちは…ほ、殆ど魔物と遭遇しないことを疑問に思いながらも…普通にゴールを目指して歩き。

普通に野営をして…ふh、不安だったので。まだ日も昇らない早い時間に出発した。


異変を…そ、ソレと気付いたのは…いくつか目の丘を越えたあたり。

東の空から日が差し始めたころ。


お、遅すぎ…だよ、ね…。

あ、あははは…は…



目の前の丘の向こうから数羽の…ソレが…西へ向かって、その大きな翼を広げて飛んでいく姿を…目の当たりにしたと…き…


い、異変というか…う、疑いようもないよ…ね…。

あ、あははは…は…



耳をすませば丘の向こうから喧騒にも似た騒めきが…



「・・・日が高くなればスグに活動を始める。こんな開けた場所じゃ、隠れることもできない。もう・・・間に合わないよ。やるしかない。」


彼女の先導で、そ~っとそ~っ…と…

丘の上から、見下ろしてみる…と…



「…っ」

「ほ、本当…に!?」

「…あんなに沢山。」

「あ、あれ…が…」


毎年…至る所で集落を壊滅させたと綴られる凶悪な魔物。

体も大きくて…翼を拡げたら、3m以上あるんじゃ無いか…な…


単独でも3級冒険者パーティー以上でないと太刀打ち出来ないと言われる程。

それが…か、数え切れないほ…ど………



「・・・初手で特大の魔法を唱えるから。」


彼女…冒険者でもある彼女は…


「・・・皆はここで。隠れていてね。」


私達以上にあの魔物の恐ろしさを知っているはず。なのに…



「・・・大丈夫。皆には・・・勿論、ココにいないクラスメイトや先生も含めて・・・皆には。指一本も触れさせないから。」


臆する事なくいつもの様に…え、笑顔さえ見せて死地に向かおうとしていた。

まるでそれが、当然の事であるかのように…



「・・・さて。と・・・」


伏せていた体勢から立ち上がり、



「・・・んしょ」


リュックを置いて、



『パッ、パッ…』


軽く服を払い



「・・・よしょっ・・・っと。・・・これくらい・・・かな?」


その名の証である漆黒の帽子をちょっと傾けて被りなおし



「・・・いち、にー、さん、しー」


右手を広げ。

その指に嵌めた指輪を目で追い



「・・・ごー、ろく・・・って。今日はそっちなのね?『ル…』・・・んふふっ。・・・よろしくね。『ッ!』」


左手の手首に巻いた。ヘビのようなデザインのバングル(…あれ?フォニアちゃん。あんなアクセ付けていたっけ?それに…いつも付けているヘビの指輪…は??)に微笑みかけ…



「・・・ろく、なな・・・ん。・・・みんな揃ってるね。今日も・・・よろしくね。」


左手に嵌めた指輪も確認した彼女は私達に振り返…り…



「・・・行ってくるね。」


まるで、何でもない事のように…そう言った。

いつものように。淡々と…



「フォニア…」

「フォニアちゃ…ん…」

「…フォニアちゃん。」

「フォニアちゃん…」


私達の呼びかけに振り返った彼女は…



「・・・んふふっ。行ってきます!」


笑顔でそう唱え…た…

林檎です。


ちなみに、フォニアの指輪セットは


右の人差し指に2つ。

  薬指に1つ。

  小指に1つ。


左の人差し指に1つ。

  中指に1つ(ヒュドラの気まぐれで変わる事もある)。

  小指に1つ。


です!

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