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Chapter 062_折返し地点

フォニアちゃんが(何時の間にか)捕まえてくれた獲物をチコ君がオリーブオイルで揚げてくれた(何処にその道具と材料を持っていたの!?)…ゴビーのフリッターをオカズに。

(チャッカリと生徒にゴチになる)先生達と一緒にランチを終えた私達は、帰り道の食料を補給(先生たちは折り返し地点であるこの場所で待機して、やってきた生徒の無事の確認と帰りの分の食料を配っているんだ…よ!)してから復路に向かって出発しようとした。


すると、クロード先生か…ら…



「ブラッディーシュリンプと遭遇したか?」


と聞かれた。

でも…



「いいえ先生。1尾…も…」

「…そうか。お前らもか…」

「はい…」


私達がこのダンジョンで見かけた魔物はゴビー種だけ

もっとも、エビの魔物は臆病で、いつも砂に潜ってるらしいから遭遇する確率はずっと低いんだけ…ど…



「先生。「お前ら“も”」って…先生たちも!?」

「あぁ…」


実は…このダンジョンにはもう2種。出現する魔物がいる。


この2種の魔物の脅威度はそれぞれ、【中級】と…【災害級】

しかも、もし本当に居たとしたら“群れ”で…ということになるから。その脅威度は災害級の上である【災禍級】に匹敵すると言われている。

その上、この魔物は好戦的で…ひ、人も食べるっていうか…ら…


生徒である私達は勿論。先生も…ま、魔女であるフォニアちゃんですら…苦戦するかも!?


もっとも。この魔物は今の季節、この場所にはいないハズなんだけど………




「…もしかして」

「い、居るんです…か!?」


ブラッディーシュリンプはその魔物の好物と言われている。

それが少ないという事…は…も、もしかして!?



「いやいや。それは軽率だよ!」

「…そうだな。現時点でソレと判断することは出来ない。が…一応、お前たちも頭に入れておくんだ。何かあればスグに信号弾を投げろよ。」


「「「「は、はぃ…」」」」


私達は緊張しながら先生の言葉に頷いた。



「・・・る・・・い・・・」

「いやぁ…だ…ろ?」


先生達も、まだそれと決まった訳じゃないって言っている。

フォニアちゃんも道中、そんな事は一言も言っていなかった。


彼女が向こうでセドリック先生と何を話しているのかは…

き、気にはなるけ…ど…



「・・・そう・・・。・・・で・・・じゃ・・・?」

「だが…」

「・・・」


ま、まさか…ね…?


………

……
















……

………



「…フォーニアー!行くわよー!?」

「・・・んー!・・・では、先生。ご機嫌麗しゅう・・・」

「…」





「…セドリック。あの子はなんと?」


小さな黒い帽子を見送った俺に声をかけてきたのは同期のクロードだった。

コイツもあの生徒…魔女…の意見が気になるのだろう。

当然…か。



「「・・・いるんじゃないの?」…だとよ。」

「なっ!?…お、おいっ!行かせて良かったのか!?」

「奴も半信半疑みたいだぜ?証拠と呼べるようなものはないし、奴らの好物であるブラッディーシュリンプを見かけないから~…だけで確信は持てねー。結論は出せねー。…だとよ。」


ホント、めんどくせーこと言いやがるぜ。

まぁ、現状じゃ。本当にその通りなんだけどよぉ…



「そ、それは…本当に大丈夫なんですか!?」


そう言ったのはロドリゴのおっちゃん。

相手は生徒…とはいえ。1級冒険者。

弱気なおっさんは不安なんだろう…


だが…



「ロドリゴ先生の懸念も最もですが…」

「…奴らがこの半島に渡ってくるのは毎年、春と秋。この時期にいるわけねーっすよ!」


翼の生えたアノ魔物は毎年。冬は南方。夏は北方へと群れで渡る習性を持っている。もっとも、偶に野良(ノラ)…単独…の場合もあるが。そういう奴は好戦的で積極的にヒトの集落に襲い掛かるから、こんな辺鄙な場所に現れたりしねぇ。


だから…



「…ま。心配ねーだろ!それでも行くって決めたのは奴だし…いざとなりゃ。魔女様自身で、なんとかしちまうだろぅ!!」


俺のその言葉に。

2人は…



「「…」」


「お、おいおい…」


勘弁してくれよ…



………

……






そして。日暮れ前…



「よぉー!お疲れぇ~!!」

「「「「「先生ぇ!!」」」」」


本日3組目となる班が到着した。

最初に到着した魔女の班から大分時間が空いているのは、生徒たちには数時間の間隔を開けて出発させているためだ。


そうしねーと生徒同士で合流したり、魔物の出現頻度が落ちて…訓練にならねーだろ?



「首尾はどーだー?」


「全員無事でーす!」

「無事なのはお前だけだ!!」

「みんな怪我してるってばぁ!!」

「つ~か~れ~たぁ~…」

「お腹空き過ぎましたぁ!!」

「み、みずぅ…」


「ははは!どれ、怪我を見せなさい…」

「…食料はともかく、水は班員から出してもらえ!…なに?お前が担当!?…だらしのない奴だな。まったく…」



魔女の班は全員ピンピンしていたが…数時間前に到着した2班目も、この班も。

メンバーは疲労しているし、(大したもんじゃ無いが…)傷も負っている。


時間も時間だし…前の班と共に、コイツらも今夜はここでキャンプだな。


…ま。それは仕方ねー。

無理されても困るしな。

だが…



「がははっ!大丈夫かオメーら!まだ半分だぜぇ!!」


チィっとばかり。ハッパはかけてやんねーとな!



「「「「「うがぁ~!!」」」」」


もっとも、生徒達の疲労に関しては…魔女の班が例外なだけで…普通はだいたい。

こんなもんだ。


実地訓練は甘くねぇ。ちょっとくらいの怪我は何時ものこと。さすがに死者は…少なくとも、俺が赴任(ふにん)してからは…出てねーが。過去には大怪我を負った奴もいる。

最寄りの集落に治癒術師をスタンバらせているのも、このため。


生徒だけの“班”で実地訓練を行う(同じ学年でも、2組から3組は教師が各班に付き添って実地訓練を行う。4組以下は…もちろん。実習はするが…“実地訓練”は、行わない。)のは1組だけ。

人間なんて。あっけねーもんだから…な…


ま。それはいいとして



「…なに!?お前らもブラッディーシュリンプを見かけなかったのか?」

「はい!…だよね?みんな?」

「あぁ。でも…エビの魔物って臆病でスグ逃げちゃうから遭遇しなくても不思議はないんじゃないんですか?」

「そう言われたよな?」

「そうだった筈よ?」

「ま、まあ…そうなんだけどねぇ…」


コイツらもか…

先導した俺たち教師3名。そして生徒たちの3つの班…4パーティーが3日間ダンジョンを歩いて誰一人遭遇していないとなると…



「せんせー!それより早く!ゴハンくださーい!!」

「もう、腹減って死にそうだよぉ~…」

「お前、殆ど唱えてねーじゃねーか!?何言ってんだよ!!」

「そーよそーよ!!みんなの水を生み出していた私が一番、魔力消費してるってコト。忘れないでよね!」

「なっ!?テ、テメーは…せ、戦闘には殆ど参加してねーじゃねーかよっ!」

「失礼ね!私の水帳魔法(ウォーターカーテン)で難を逃れたってコト…まさか、忘れたの!?」


なーんて思っていたら、生徒が騒ぎだしたじゃねーか!?

…ったく。



「おめーらヤめろ!騒ぐなて!」

「喧嘩するとご飯抜きですよぉ!」

「「「「「えぇぇ~!?」」」」」


「そりゃないよ先生!?」

「酷いっ!!虐待だっ!?」

「スクハラだ!!訴えてやる!!」

「そーだそーだ!!パパに言いつけてやる~っ!!」

「理事長に請願してやる!!」

「覚悟しろ先生!!次に会うのは法廷だ!!」


「…はは。冗談だっ!だが…ちゃんと分配して、しっかり休めよ!」

「「「「「はーい!!」」」」」


調子いい奴らだぜ…ったく。

何考えてたか忘れちまったじゃねーか…



………

……











そして。

殿(しんがり)の教師陣が残りの生徒を引き連れて…夜行までさせて…やってきたのは

日を跨ごうという夜更けの事だった…

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