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Chapter 060_ボーケン者(仮)。ダンジョンを行く!

「『…架けろ』リフトォ!アランくん!!」

「うをぉぉっ!!」


マスティアラーネ潟は5日も有れば一周できるほどの広さしかないし、出現する魔物も最難で下級魔物という、主なきダンジョンだ。



「って!?コレット危ないっ!!」

「へっ…キャァァ!!」

「「「コレット(ちゃん)!!?」」」


王都から最短のダンジョンの1つだと言うのに・・・

実地訓練中に1人の冒険者とも出会うことがないのは、このダンジョンに魅力が無いのが原因。



「『芽の願い』フェンス!!」

『グギョ!?』

「きゃぁ…って。あ…れ?フ、フォニアちゃん!!」

「・・・ん!」

「フォニアナイス!!」

「…柵魔法で進路妨害…さすがだね。」

「ほっ…」


ゴビーは美味しいけど生物(なまもの)だから日持ちしないし、食用以外で利用価値が無い。

もう1種のブラッディシュリンプも同じ。

さらに低級の魔物だから・・・倒したところで名誉にならない。


おまけにこのダンジョンは集落からは離れているため人的被害も無く。討伐依頼も出ない。


要するに・・・冒険者的には旨味がまったくない。



「・・・魔物に集中!!」


当然、人気(にんき)もない。

それ以前にギルドがない。

最寄りの集落は小さな漁村で、宿屋すらない。


生徒から不満が出ない筈が無い。

「楽しみにしていた実習が・・・」

「何もない田舎になっちゃうなんて!?」

「私達の夏を帰せ!」

と・・・



「え、えぇ!!」

「…うぃ。」

「あぁ!!…よくもぉーっ!!」


実習がここに決まって。私は個人的な理由で嬉しかったんだけど・・・他のみんなはそうじゃない。先生達は不満を言う生徒達への配慮で大変そうだった。


カトリーヌちゃんによると、候補地の選定には多分に"大人の事情”が影響しているとか。


生徒は子供・・・とはいえ。千人以上が寝泊まりするのだから“それなり”のお金が動く。

異世界島国の修学旅行も旅行業界的にはウマい話だって聞くし・・・

世界が変わっても、世の中そんなものだ。



『ググッ!!』

「こんのぉっ!『炎よ 侵略者なり』ファイアー…」

「…ナターシャちゃん!!アラン君がいるよ!?」

「ボールぅッ!…って!えぇっ!?!?」

「うわあぁぁっ!!」


「『雫よ 天の恵みを』ウォーターボールっ!!!」


『ボフォンッ!!』


だから・・・



「た、助かっ…」

「っ…ご、ごめんねアラン!」

「…魔物は!?」

「・・・すー『茨の願い 花の森を這う』ニードル!!」

「フォニアちゃ…ん…」


『グゲェッ!?!?ゴッ…ボボッ………………』


慣れてしまえば意外と弱い・・・しかも、ずっと同じ外見の・・・魔物を相手にし続ける事に刺激を感じなくなってきた2日目。


初めて出現したゴビー種の最終進化形である、乗用車サイズのフロウゴビー・・・とはいえ、アウトゴビーを大きくしただけ・・・を前に。皆が油断しちゃうのは・・・仕方のない事だと思う。



「・・・ふぅ。」


「フォニア…」

「…ありがと。」

「い、今のは…あぶなかった…ね…」

「助かったよ…」


けど。



「・・・コレットちゃん。」

「は、は…い!?」

「・・・進化を経た魔物は大抵素早い。大きい魔物は一歩が大きい。相手のスピードも把握していないのに、いきなり長文の第4階位は・・・軽率だよ。」

「うぅ…。ごめんなさい……」


「・・・ナターシャちゃんは・・・言わなくてもわかるよね?」

「うん…ごめんねアラン…」


「・・・アラン君もだよ。・・・まずコレットちゃんを助けないと。その後はコレットちゃんを連れて離脱。魔物は二人に任せるべきだったんじゃ、ないのかなぁ?」

「そう。だね…うん。ボクの方こそ、ごめんよ…」


「・・・チコ君は・・・どうして何もしなかったの?仲間がピンチなんだから、矢を射って気を逸らさせるとか突風で進路を妨げるとか・・・出来る事はあったはずだよ?」

「…面目ない。」


間違いは誰にでもあるし、失敗は成功の足がかりだ。

でも、そのせいで・・・小さな気の緩みが大きな過ちに繋がることもある。

だから十分注意して・・・



「・・・みんな。フロウゴビーの強さは分かったから・・・気を引き締めていこうね。」

「うんっ!」

「…了解!」

「もちろんだ…よ!」

「あぁ!!」


残り4日。頑張ろう!!


・・・

・・
















……

………


その日の…夜…



「ナターシャちゃん。フォニアちゃ…ん…?」


ふと目が覚ますと、隣で寝ているはずの2人の姿がなかった。

ちょっと不安になって、テントから外へ出てみる…と…



「…でね………」

「・・・なら・・・」

「そ…けど…」


火を前にした2人は腰を下ろして

何やら話し込んでい…た…



「あ!コレット…」

「・・・ごめんね。起こしちゃった?」


近づくと、まずナターシャちゃんが。そしてフォニアちゃんが私に気づいて振り返った。



「う、うぅんっ!大丈夫!!ね、眠れなかっただけだ…よ!」


マスティアラーネ潟には夜に活動する魔物がいないけど…訓練もかねて。先生から、夜は必ず交代で見張り番をして、焚火を絶やさないようにと言われている。


私が目を覚ましたのは、ちょうど2人が番の時だったみた…い…



「…そう?」

「・・・寝直した方がいいよ?」


2人はそう言うけど…



「ちょっと涼んでからそうする…ね!それより…何のお話をしてた…の?」


スグには眠れそうになかった。

それに…2人が何を話していたのか気になって。

尋ねてみる…と…



「…///」

「・・・」


ちょっと顔を赤らめるナターシャちゃんと、そんな彼女を見つめるフォニアちゃん…



「…?」


何だろう…?

そう思って黙っていると…



「・・・将来の話。」


フォニアちゃんが静かに、そう告げた。



「しょうら…い?」


2人に近づくと、フォニアちゃんがちょっと横に避けてくれた。


彼女が家から持ってきたという、クッション代わりのヘビさんのヌイグルミに腰を下ろす。ちょっとヒンヤリしていて…『タプッ』と形が変わって気持ちいい…


…あれ?

でも、このヌイグルミ…

フォニアちゃんが寝る時にいつも抱いているから見覚えがあるけど…

3人も並んで座れるほど、大きかったっ…け??



「ちょっ、フォニア!」

「・・・いいじゃん別に。・・・コレットちゃんなんだし。」

「そ、そう…だけど…な、なんか恥ずかしいじゃない!」


私の疑念をよそに、ちょっと顔の赤いナターシャちゃんと、いつも通りのフォニアちゃんはそんな話をした。

えぇと…



「ご、ごめんね!お邪魔だったか…な?」

「えっ!?あっ…えぇと!だ、大丈夫よ!!」

「そ…う…?」

「うん…卒業したらどうしようかなーって。フォニアに相談してただけだから…」


卒業後のお話…


これまでにも何度か、フォニアちゃんのお家にお泊りに行ったときに、そんなお話をした事がある。

たしか…



「学院に行くんじゃない…の?」


ナターシャちゃんは故郷でもあるヴィルス帝国に戻り、帝都のオクタシア魔導学院に進むつもりだって。

そう聞いたと思…う…



「い、一応…そこは変わらないんだけど…」

「・・・冒険者稼業もしたいんだって。」

「えぇっ!?」


驚いて大きな声を出してしまった口を慌てて塞ぎ…



「ま、魔導師になるんじゃない…の?」


聞いた筈の、その事を尋ねてみると…



「そ、それはもちもん!そのつもりよ!でも…」

「・・・軍に所属していたり。冒険者稼業をしながら研究をしている院生も沢山いる。」

「それを目指す…の?」

「…………そ、そうしようかな〜……って…」


頬を染めて伏し目がちにそう言うナターシャちゃんに、フォニアちゃんが…



「・・・いいと思うよ?ナターシャちゃんなら、やっていけるんじゃない?」

「うぅ…そう…かなぁ?」

「・・・今日だって、最後の火球でトドメをさせたじゃん」

「そ、その前は大失敗だったじゃない!?」

「・・・冒険者稼業は経験が大きい。初めは誰だって失敗する。」

「でぇ〜もぉ〜!」


不安そうにするナターシャちゃんだけど…



「かっこいい…ね!」


私は、それってカッコいいって思…う!



「…へ?」

「皆が憧れる冒険者と、院生をいっぺんにやっちゃうなんて!すっごくカッコイイ…よ!!」

「あ、あぅ…///」

「ナターシャちゃんは魔法も剣も上手だし、頭も良いからピッタリだよ!!」

「・・・んふふっ!私もそう思う!!」

「や、やぁーめぇーてぇ~!!」


ふふふっ!

いつも強気なナターシャちゃんが照れて…るっ!



「それにそれ…に!出身も髪の色も適正属性も一緒で、ローデリア様みた…い!!」

「・・・そう言えばそうかも。」

「りょ、リョーデリアしゃまと…一緒ぉ!?」


火魔法研究会のメンバーでローデリア様に憧れていない人なんていない!



「ねーっ!」「・・・ねー!」


私の言葉がナターシャちゃんの背中を押せたら…



「い、いっ…しょ…」


素敵だ…な!

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