Chapter 053_雪山の死闘
「ぐわぁ!」
「ガ、ガーリっ!?お、おのれぇ!」
オレたち冒険者パーティー【草の根】はグスェーブの街で活動する3級冒険者パーティーだ!
先々代が5人で始めたパーティーだが…今ではドワーフを中心としたメンバーも30人と増え。多所帯となった。
「き、きゃあぁ!」
「チィーラぁっ!?こ、このやろぉ!『ほの…』」
「バ、バカぁっ!来ちゃダメ逃げてぇ!!」
だ、だが…オレ達は世間一般に言われる“カッコ良い”冒険者パティーじゃない。
山の半ばにある洞窟で鉱物資源(たまに山の幸も)を漁る採集専門のパーティーだ。
この山は魔物が生息するダンジョンだが、同時に良質な鉱物が採掘できる山でもある。だからオレ達のように魔物を狩るのではなく…採集目的でやってくる冒険者パーティーも少なくない。
そりぁ…たまーに目障りなコウモリとか蛇の劣級魔物と戦う事もあるが…それより強い…下級以上の魔物が出たら即退散。
無駄にランクがたけぇのは地元に根ざして数百年の歴史あるパーティーだから。ってだけで…
「に、逃げるんじゃぁ…」
「このままじゃ…ぜ、全滅しちまうぞっ!?」
だから…
ツルハシとスコップ。そして大きなザックがお似合いのオレたちには…
『ガァァ!!』
『グルァ!』
『ぐるルルゥ…』
『ギャギャウッ!!』
じょ、上級魔物…スノータイガーとの戦いなんて無理だ!!
「だ、だがっ!スノータイガーとはいえ…こ、子供だろう!?ならっ!」
この山には天然の洞窟が幾つも開いており、今日選んだのはその中の1つで…比較的、麓からは遠い場所だった。
だから…お、重い装備を背負って山道を行くのは辛いから…い、イザという時の為の装備を携行していなかった事は…認める。
だ、だが!
…さ、山頂の窪地にしか棲息していないはずのスノータイガーが…こ、こんな所で子育てしているなんて、誰が予想出来る!?
っつか、いま冬だぞ!?
魔物…とは言え猫科なんだから。せめて冬眠しろよ!?氷点下の雪山で子育てしてんじゃねーよ!
「ダ、ダメだ!唱える暇もねー!!相手が子供でも…と、とても太刀打ちできん!!」
「だ、だが…だがっ!仲間を見捨てる訳には!」
スノータイガーはそこまで好戦的な魔物じゃ無かったはずだが…まだ子供のせいか。
戯れのように…執拗に。
洞窟の外まで追いかけて、襲いかかる鋭い牙と爪にオレ達の仲間は次々と倒れていった。
「ガハッ」
「ギュムラさんっ!?」
そして遂に、パーティー最年長の元リーダーも倒れ…
「お、おいデューゼル!?ど、どうする!?」
「リ、リーダー!このままじゃ…ほ、ホントに全滅しちまうぞ!?」
「くっ…」
多くの仲間が傷を負ったが…ぶ、無事なメンバーもいる。
全員を失うわけにはい…
「す、すまな…」
ぜ、全滅など…仲間の名を綴ることすら出来なくなる。
しかたな…
「デューゼル!逃げろぉ!!」
そう考えた時だった
『ガルルルッ!』
め、目の前に迫るのは…す、鋭い牙!?
「んなぁ!?」
し、しまっ…
『ドゴォッッン!』
「 」
な…
「だ、大丈夫か!?デューゼル!?」
「デューゼルさん!!しっかり!!」
なにが…何が起きた!?
「あ、あぁ…」
仲間の問に応えたが…
「い、今のは!?」
「ま、魔物が…は、爆ぜたぞ!?」
「お、おい!!誰か…誰か唱えたのか!?」
なぜ…?どこから…?
それは分からない。
オレにわかるコトといえば、
目の前に迫る牙が轟音と共に血飛沫となり…
「い、生きて…る?」
ま、まだ自分が…という、コト…
『タァーンッ…』
「…うん?」
「い、今のは…え、遠雷かしら!?」
未だ呆然とした頭を抱えたまま、遠くから響いた雷鳴に
「…こんなに晴れ渡っているのに?」
…などと。
呑気に考えていると…
「お、おい!」
「あれは!?」
「…は?」
山の下から猛烈な勢いで…
「……てぇぇぇぇ…りゃぁーーーっ!!」
『ギャウッ!?』
「なぁっ!?」
「にぃっ!?」
1人の…白くて小さな
「うにゃぁ!!」
…獣人!?!?
『ギャンッ!?』
…ち、小さな女の子が!?駆け上がってきた勢いもそのまま。
自分よりも大きな魔物を蹴り飛ばし、流れるような動作でもう一匹の首にナイフを刺しこむ。
最後に残された魔物は…
『ドゴォッッン!』
『 』
再び訪れた衝撃によって逃げる隙も…悲鳴を上げる暇すら…与えられることなく。
文字通り…ち、血潮となり
「ぎにゃっ!?い、今の…さ、さっきのも…。ま、まさかコレがご主人の“まほー”!?」
現れた獣人の女の子は耳を抑えながら驚きの声を上げ、はるか下の…小高い丘のようになっている場所を見つめた。
そしてその方向から…
『タァーンッ…』
という。
再びの遠雷…
「う、うそ…。だって。まだ、こんなに離れて…。ひ、ひょっとして…ひょっとしなくても。ご主人様って………」
「「「「「…」」」」」
当事者であったはずのオレたちを置き去りにして。
僅か数秒で全てが終わったのだった…
………
……
…
・
・・
・・・
「・・・さて。」
飛距離1,103m
久し振りの超長距離射撃だったけど・・・うまくいってよかった。
「とっ・・・」
ライフルの出来も上々!
さすがに距離があったから備え付けのスコープじゃ倍率足りなくて。鷹の目魔法唱えちゃったけど・・・精度と剛性は十分かな。
重さもあって安定するし!
環様が私の落書きを超神化してくれたからデザインもカッコいいし!!
トリガーも気分出るし!!!
部隊のみんな。気にいってくれるかなぁ・・・?
「ご主人様っ!」
・・・な~んて考えながら現場に向かっていると、可愛いあの子が全力疾走でやってきた。
「・・・シュシュ!」
「ご主人様ぁぁぁっー…っとぉーっ!…まほー!スッゴイすっごい!!すっごかったですっ!!」
雪を盛大に舞い上げてジャンプし、空中でクルクルして華麗に着地したシュシュ。
興奮しているのか・・・尻尾をふりふり。お耳をピコピコ。
カワユス。
寒さに負けない元気な姿に、思わずニンマリ。
「お待ちしてましたぁ///」
褐色の肌を桃色に染めて見え上げるまっすぐな視線、ヤバい。
普段、見上げられ慣れていないから余計にヤヴァイ。
きゅんきゅんしちゃう///
「・・・シュシュ。頑張ったね。・・・えらいえらい。」
とりあえず褒めておく。ナデナデしておく。
「にゃぁん!嬉しいですっ!!」」
何それカワイイ!!
「・・・ふにっ!」
「にゃふっ!?」
かわいいから抱いちゃう!
「にゅ…にゅふふふっ!!」
お胸に顔をうずめて・・・すりすり!?
尻尾なんて、残像見えるくらい振りまくってるし!?
YA・BA・Iー!
クラクラしてきた・・・
「うにゃぁ〜ん///」
「・・・///」
うわぁ・・・幼女強い。幼女力強い・・・
「…ひぃ、ひぃっ」
・・・なんて。
幼女を堪能していると。
「ぜぇ…ひぃ~…はっ、はっ…はぁ~…ぼ、ぼうげんじゃ…どっ、というか。ま゛、麻婆づがいぃ…はぁ~……そ、そのぉ…ぢ、重JINのほぉ…ご、ごごごじゅじんぐっ…ですかぁ!?」
「・・・う?」
向かう先から氷点下なのに汗をかいて走るドワーフさんがやってきた。
・・・こんな気温で汗なんかかいたら身体冷えちゃうよ?後でちゃんと拭いてくださいね。
あと、もうちょっと息を整えてから話してくれないと、なんて言っているのか・・・
「ぜーっ…ぜぇー…さ、先ほどは危ない所を…」
さらにタイミングよく・・・
「おじょーさまぁ~!!」
「がぁ~ハァーッ…じゃぁ…」
息一つ上げないローズさん(ローズさんは綴られていない所でちゃんと鍛えている努力家。お仕事は“侍女”だけど、学園の騎士科をセコンドで卒業した実力者)
鳶君は・・・ま、まあ。
空気薄いし。仕方ないよね。
標高5,000mは越えているであろう、この場所まで駆け上がってきたんだから。むしろ凄いっていうか・・・
纏風魔法で雰囲気最適化している私を除いて、みんな人間離れしているよね。
・・・あ。1人は本当に人間じゃ無かった。獣人チートだった。
そう言えば鳶君もハーフドワーフだし、冒険者さんは純血のドワーフっぽいし・・・
そう考えると・・・一番凄いのはローズさん?
「あ、あのぉ…」
「・・・う?」
シュシュを追いかけてきた冒険者さんが口を開くと・・・
「さ」「にゃ!?そうだご主人様!ケガしてる人がいっぱいいるですよ!」
胸からパッと顔を上げたシュシュがそう言った。
っと!
「・・・そ、そうだった!シュシュ案内して!」
遠目で見ただけだけど・・・トラに襲われて深い傷を負った人もいるようだった。
冒険者さんのお話も聞いてあげるべきなんだろうけど・・・
今は、それよりも!!
「にゃんです!コッチでーす!!」
駆け出したシュシュに続いて走り出す!
「ぢょっ、ぢょっぉ〜!まぁっ…」
「お、お嬢様ぁ!?まってぇ〜!!」
「ぜーっ、ぜはぁ〜!!」
み、皆には悪いけど・・・
「・・・みんなは後から来てー!」
今は1秒だって惜しい!
・・・え?
幼女充填してる暇なんて無かったんじゃ無いかって?
そ、それは・・・そのぉ・・・
う〜・・・
「…ご、ご主人様!?向かう先から別の魔物の気配がしますです!!それも、大きな…」
「・・・う!?もちょっと速く行くよ!!」
「に!?にゃんです!」
が、頑張って走りますから!治癒しますから!!次の魔物もちゃんと倒しますから!!!
だから、その・・・な、なにとぞご寛容に!!
林檎です。
活動報告にもうpしましたが、外伝はじめましたっ☆
←お掃除妖精クロニクル!!<外伝>→
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本編ともども
・・・よろしくね!




