Chapter 047_もうすぐ冬休み!
『ペタ…ペッ…ペクュ…』
季節は巡って・・・
カレント2,183年 水鳥の月 39日。お天気は・・・う!?お昼に止んだと思っていたのに・・・また雪が降ってる!?
「…さむっ。」
「・・・今日も冷えるね。」
「フォニア…あんた。いつだったか、纏風魔法のお陰で暑くも寒くもないとかって…言ってなかったっけ?」
「・・・・・・バレたか。」
「ふざけんな!トラ柄にするぞ!」
「・・・それは止めて。・・・ん。効果範囲を拡げたからナターシャちゃんも・・・」
「あっ!あぁ~…温かいっ!!でもなんか悔しい!!やっぱりトラ柄に…」
「・・・ヤめて。お願いします。何でもするから・・・」
「言ったわね!じゃあ…罰として今日は、帰るまでこのままよ!」
「・・・アイマム。」
後期試験最終日の今日。明日1日お休みを挟んで、明後日からはドキドキのテスト返却が始まる。
今年は春から錬金術が忙しくて・・・学園で過ごす時間が短くて、勉強も大変だったけど。
・・・ま。大丈夫でしょう。
「えぇぇ!?ま、魔導概論の…こ、この問題の答え。きゅ、9人じゃない…の!?」
「問題は、えぇと…現存する魔術師・魔女の人数を答えろ。こ、これは…残念だけど…」
「…コレットちゃん。アウトー」
「答えは8人だね。」
期末試験が振るわないと6日後から始まるながーい(白約の月 45日間ぜーんぶ!)冬休みを返上して補講と追試を受けないといけなくなる。
もちろん、お休み期間全部が補講に!という訳ではないけど・・・
「あはははは~残念だったな後輩よ!!以後精進したまえよ!」
「ターニャ…えっらそうに…」
「コレットちゃん。たぶんだけど…【引導】の魔術師キケ・マーカス・アルカンタル様がこの夏、薨御された事を忘れていたんじゃ…」
「はっ!?」
後期試験は、その学年で習ったこと全部から出題されるからテスト範囲が膨大で難しい・・・というか。たぶん、学園側としては補講を受けさせる前提で試験問題を作っているんだと思う。
コレットちゃんが間違ってしまった問題だって、魔導(魔術教育と、その歴史を指す言葉。“魔術を教える事”そのものも【魔導】と呼ぶ。)の問題に時事を絡めた意地悪な問題だ。
学園は生徒を落しにきている。それは間違いない・・・
「…フォニアは会った事ある?引導様。」
「・・・無いよ。・・・“おじいちゃん”だ。って事くらいしか知らない。」
「ふ~ん…魔女のあんたでも、そんなもんか…。チコー!あんたは何か知らないのー?あんたの国のジーさんでしょ~?」
「…引導様は【国の至宝】とか言われて、子供のころからずっと王宮に匿われていた。…ボクの父さんは一応、領主だから毎年王宮に行くけど、それでも会ったことない。魔法も…適性属性すら分からない。」
「…なにそれ?ってか、あんた領主の息子だったのね。」
「…それは前言った。」
とは言いつつも・・・1、2問間違えたからって補講になるわけじゃない。コレットちゃん含め、たぶん・・・みんな、大丈夫だろう。
「引導様はどんな魔法を宿していたんだろう…ね!?」
「さぁ…?適正属性すら分からないんじゃ、予想しようがないよね。ラヴェンナにいるっていう【白檀の魔術師】様なんて“ハシム”って名前以外、何も分からないし…ルクス君は何か知ってる?」
「…さぁ?」
「“失伝魔法”に関しては…詳しいことは、ほとんど広まっていないわ。秘匿されているっていうか…」
「ほ、本人を前にして言うのも難だけど…国の切り札になる存在だもの。当然だわ。…むしろ、オクタシアが広めたローデリア様の【煉獄魔法】と、自慢して歩いている【鉄壁の魔術師】ガドワール・アイゼン様の【鏡魔法】が例外よ。」
「フォニアァ…。さては、まだ隠してることがあるわね!?白状なさい!!」
「・・・ノーコメントで。」
「あやしぃ…」
「あ、あははは…」
人数が増えて大きな部屋をもらった放課後の火魔法研究会は和気あいあいで、私はナターシャちゃんによる爪磨きを受けている。
もう一つの失伝魔法である【汞竜魔法】のヒュドラは今日もおとなしく、私の爪が彩られていく様を指輪に擬態したまま眺めていたのだった・・・
「ねーねー!そんな事よりぃ!…みんな冬休みはどうするのぉ!?研究室に遊びに来てくれるのかな!?」
そう、聞いてきたのはいつも元気なターニャ先輩。
「「「「「もっちろーん!!」」」」」
ターニャ先輩に負けず劣らず元気なのは、新しく研究会に入会した新入生の子たち。
みんな若いなぁ・・・1歳しか違わないけど。
「もちろんあたしも!」
「…ボクも。」
「フォニア!あんたも来るでしょ!…というか来なさい!」
「・・・なんで?」
「なんでもよ!」
私、未だに会員じゃないし。クイニーアマンもらってないし・・・
「…ルクス君もフォニアちゃんが来れば来るでしょ?」
「えっ…ま、まあ…気が向いたらね。」
「・・・」
ルクス君は王子様風のイケメンで剣も上手。頭もいい。素っ気ないところはあるけど誰にでも紳士的で優しい。・・・女子の間ではモテモテ。お父さんは商人らしいけど・・・クラスの中では王子様。
毎朝会っているし、飛び級の関係で一緒になる機会も多いから・・・妖精たちが“そういう”話をしている(ちなみに、ヴァーレル君は女神祭のアレで騒がれちゃったけど・・・約束通り、学園内では我慢してくれるので時と共にそういう話は消えてしまった。)のは自覚してる。
けど、もちろん。私にその気はない。
彼がどう思っているかは・・・正直分からない。
火魔法研究会に遊びに来るのは私かコレットちゃんがいるときだけみたいだし、私達には色々と話しかけてくるから意識はしているんだろうけど・・・こっちから質問すると答えてくれない事がある。
意味わかんない。
“そういうの”とは違う気がする。
ちょっと調べてもらおうかな・・・
「み、みんな行くなら私も行く…よ!」
「ぼ、ボクも!…ど、どうせ槍術部があるから部室棟に来からね…」
「・・・」
たぶん・・・コレットちゃんはルクス君を意識してて、アラン君はコレットちゃん狙いなのだろう。
アラン君はルクス君とはタイプの違うイケメンで、背が高いからモテモテだけど・・・コレットちゃん一筋って感じかな。もちろん誰にでも仲良くしてくれるけど、彼女に対しては瞳の輝きが違う。本人も自覚してるし、周りも気づいている。
男の子としてなら、私はルクス君よりアラン君のほうが素敵だと思う(個人の感想です)。
ブレない男はかっこいいぞ!
一方のコレットちゃんは・・・二人の間を揺れてる感じ。
去年の夏休み、アラン君とあんな事をしちゃったというのに・・・
彼女は“そういうの”を天然でやっちゃうタイプの女の子。
因みに、
ナターシャちゃんは何にも言わないし、そんな気配見せないけど・・・以前、1度だけ夕日の川原を1つ下の男の子と真っ赤な顔をして並んで歩いているのを見てしまった。
あれはたぶん・・・んふふふ。
一番そういう話をないのはチコ君かな。
お兄様とのアレがあったけど・・・結局。お兄様の勘違いという、一番面白くない結末を迎えてしまった。・・・つまんないの。
ちょっと調べてもらったところ、彼の許嫁は“本当に”第4王女らしい。
相思相愛で、婚約を認めさせちゃったとかなんだとか。
彼の将来はこれ以上ない!ってくらい、安泰だろう。
・・・恐るべし、男の娘。
ターニャ先輩は・・・どうなんだろう?
ファンは多いし頭がいいのは確かだから、そういうのもちゃっかりやっていそうな気がする。
チャンスがあったら聞いてみよっと!
エミー先輩はジル先輩しか瞳に映っていない。来年ジル先輩が卒業して故郷に帰っちゃったら、イグニッションしちゃうんじゃないかな?
レベッカ先輩は・・・卒業したら母国(レベッカ先輩はエディアラ王国の南にある【ルスクェルト王国】出身)に帰るので、今はその準備ですっごく忙しそうにしている。
けど・・・欠かさず研究会にやって来ては、お菓子をくれたり、後輩の面倒を見たり、勉強を手伝ってくれたりしている。
(言動以外は)本当に素敵な女性だ!
今はそういう相手がいないらしいけど・・・んふふふっ!楽しみだねっ!!
みんな青春だねっ!
ま。私は私で・・・
「・・・私は用事がある。休み中は学園に来ない。」
「「「「「えぇぇぇ~!!」」」」」
綴られた世界を楽しんでいるんだけどね!
「あんた最近、付き合い悪いわよ!!」
林檎です。
ちょっと誤字を見つけてしまったので修正しました!
・・・失礼いたしました(22/08/12 -18:10)




