表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/476

Chapter 044_捨て狐に愛を。名を。

「さ、30!?30ルーンじゃ足りないよっ!昨日は40ルーンくれたのに!?」


わたしはただのドレ~です。

名付けて貰う事すら出来なかった。ただの無力な子供です…



「おぉぅ…。毎回思うが、おめー…ホンっとに、よく分かんなぁ?」

「そ、そんな事よりっ!…話が違うよっ!」


おまけにお目々(めめ)が見えない役立たずです。

部族から追い出されたイラナイ子です…



「…っせーな!足りねーならもっかいフカせよっ!!そしたら60ルーンで…ほら、昨日より多いじゃねーか!!」

「にゅぅ…3回で120ルーンにしようと…」

「だったらっ4回で120ルーンにしろよ!!」

「…」


わたしは小さいころから目が見えなかった。

そのお陰か…気配察知は得意なつもり。だからここまで生きてこられた。


魔力も…多くはないけど、少なくもないと思う。


実を言うと、4回くらいは“フカ”す…あの“卵”とかいうアクマの(けど、ご飯を生んでくれる)道具に魔力を通す…ことが出来ると思う。

だけど…



「…オラっ!やらねーならどけよっ!!次が…」

「や、やるよっ!」

「礼儀がなって…」

「やらせていただきますっ!!お願いしますっ!」


だけどっ…


………

……




「っ…あぅっ…」

「…うっし。約束通り4回で…100ルーンな。」

「えっ…そ、それ…は…」

「終わったんだからさっさと出てけよっ!次が待ってんだろっ!!」

「えっ…あっ…」


4回フカすことは…出来ないわけじゃない。体中の魔力を絞り出せばギリギリ、何とかなる。けど、ギリギリまで魔力を消費してしまうと…



「ちょっとアナタ…終わったなら早くどきなさいよ!」

「ご、ごめんにゃ…しゃ…ぃ…」



意識が…



「おらっ!ガキ!これ持ってさっさと行っちまえ!」

「あ、あり…」


………

……






「にゅふ…」


フカし屋さんに握らされた銅貨を手の平に乗せたまま

『キュー…』っと痛いお腹を抱え、『ぼー…』っとしながら建物から出た…


フラフラぁ…



広場をで…



「こ、こっち…だっ…け?」


路地に入ったところで…



「っ!ちょ、ちょっとアナタ…大丈夫!?」


赤いお姉ちゃんに抱き止められて…



「・・・う?あっ!」

「ま、マジョ様!!それはっ」

「ダメですっ!」

「カラスちゃん!ど、どうするつ…」

「どうする!?こうするのよ!!・・・すー『この肉をパンに この血を水に 右腕を引き寄せ 左腕を回し この身を()ぐ あなたのために 祈り込めて捧ぐ』キュア!」

「あっ…」


黒い……に…



「・・・もう・・・大丈夫よ。」

「にゅ…」

「・・・よく・・・頑張ったね。」

「み…ゅ………」

「・・・・・・ごめんね、ごめんねっ。」

「………」


そこから先は眠くて…温かくて…



「・・・ごめんねっ・・・っ」


覚えていない


………

……

















「…ど、奴隷なんて拾ってきて…し、しかも治癒まで!?どうなさるおつもりですか!?」

「・・・うちに招く。」

「えっ!?…は、八百歩譲って奴隷を飼う事は…か、構いますが…構いませんが………。でもっ!こ、これはダメです!野良じゃないですか!?こんなんじゃなくて、他で…せ、せめて店売りで…よ、良いではありませんか!?奴隷商人ギルドに見つかったら何を言われるか…。だ、だいたい!ご存じの通り奴隷を飼うには奴隷印への“紋付け”が必要です!でも、野良では…」

「・・・何とかする。」

「何とかって…」

「・・・カトリーヌちゃんが何とかして・・・」

「っ!…す、好きにすればいいじゃないですか!!お嬢様のっ…っ~!!!も、もう知らないっ!!」

『バタンッ!!』


「・・・怒られちゃった。」


………

……

















「…………う、うそ…」

「・・・ごめんね。思ったより長く寝ていたから・・・その間に全部済ませちゃった。本当なら自由にしてあげたいんだけど・・・レ~ゾクまほーからの開放は出来ないし、野良のままだと治癒したのが見つかったとき・・・」

「そ、そうじゃにゃくて!」

「・・・う?」

「目が…」


わたしはずっと魔力の気配とか色とか。周囲の音とか匂いとかを頼りに生きてきた。



「ひ、光っ…色っ…かたっ…っ」


光を失ったのは…本当に小さいころ。

部族でマモノを狩っていた時。わたしはオトリにされて…その時…



「ひぐっ…ぐじゅっ…ッ、」


普通、仲間意識が強い獣人は部族の仲間…まして子供を…オトリなんかに使わない。


けど…

わたしは茶色い毛並みの砂狐族なのに、たったひとり。白い毛並みを持って生まれてきちゃった…。

部族意識が高いが故、わたしみたいなヘンな子は仲間外れにされて…イジメられて…

いつもいつも。オトリに…


しかも、わたしの場合は毛並みだけじゃなくて…瞳の色が左右で違う…らしい。

自分で見たことは無いけど…


リブラリアで生まれる獣人は人間と同じように瞳の色が八人七色。混色の人もいっぱいいる。

けど…左右ではっきり分かれているのは、とっても珍しいんだって…



「・・・チユしたからね。」

「ち…ゆ…ま、まほー…?」

「・・・ん。」

「まほー…」


わたしにだって親が…いた…はず。


でも覚えていない。

部族の全員が私には冷たくて…質問しても、答えてなんてくれなかった。


わたしは部族のお荷物で、みんなの小間使いにされて、残り物を漁って何とか食べツナいでいた。狩のオトリにされながら…






そしてある日。

岩山の向こうからやってきた“獣人狩りをする獣人”にイケニエとして引き渡された。






「…人間様をオメメで見たのは初めてです。」

「・・・そう。」


けど…それでも。

仲間のことは恨んでいない。


わたしの部族はパドの砂漠を放浪している。

まいにち毎日。水とご飯を探して歩き回り、怖いマモノと命がけの戦いをして、奴隷狩りに追われながらギリギリの生活をしている。



「…初めて………はじめて。まほーも初めて。こんな凄い魔力を感じたも初めて。お姉ちゃんみたいな…色も…初めて。」

「・・・」

「きれい…初めてがお姉ちゃんで…よ、よかったっ…」


みんな必死だった。


何だかんだ言いながらも、お荷物の私を最後まで見捨てずにいてくれた。

それで…それだけで…



「・・・コキョ~に帰してあげる。」

「え…」

「・・・だからそれまで・・・我慢して。」

「…」


「・・・私のドレ~は・・・ヤ?」「まさかっ!?」

「・・・う?」

「こ、こんな嬉しいことはありません!わ、わたしを…わたしなんかを選んでくれて…あっ、ありがとうございましたっ!!」

「・・・」

「い、いっぱいお仕事するです!頑張ります!帰りたくなんて…帰る場所なんてないっ!ずっと、ずっとお傍にいさせてくださいっ!お願いします!お願いっ…お願いしますっ!!」

「・・・・・・ん。よろしくね。・・・えっと・・・あなたのお名前、教えてくれるかな?」

「名前…名前は()()です…」

「・・・う?名前が・・・ない?」


「名付けて…貰えませんでした…」

「・・・」


それだけ

だった…




「…ご、ごめんなさ」

「・・・っ、あっ、謝らなくていいのっ!」

「っ…」

「・・・わ、私の方こそっ・・・ご、ごめんねっ・・・っ。」

「そ、そんな…わ、わたしなんかの為に、そんにゃ…」



………

……












「・・・決めた。」

「にゅ?」

「・・・あなたのお名前。気に入ると良いんだけど・・・」

「な、名前を…貰えるですか!?」

「・・・もちろん。名前が無いと呼びにくいし・・・なにより。今日から家族だもの。」

「か、家族…かぞく…っ…ひぐっ…わ、わたしに…かじょくっ…」

「・・・もう寂しい思いはさせない。・・・今日からあなたはこの家の・・・ホトリテーの・・・一員よ。」

「にゃぐっ…ひぐぅっ…」

「・・・んふふっ。小さくまとまってて、可愛くて、柔らかい・・・。・・・そんなあなたのお名前は・・・」

時は来たっ!


林檎の嫁(異論は認めーん!)登場です!!



因みに狐ちゃんのモデルは【フェネック】です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ