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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
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Chapter 013_フォニアの魔物討伐記録

「・・・カレント2,177年。萌木2日。お天気は晴れ・・・っと。」


夜。

魔法の灯に照らされた勉強机(食卓の一画に木箱を置いただけ・・・)で1人、討伐記録を書いていた。

リブラリアでは何でもかんでも記録記録!!おじいちゃんからもおばあちゃんからも、お母様からも・・・とりあえず、なんでも書いて残せ!と言われている。


あぁ、こういう時にパソコンがあれば・・・関数書いて、ちょっと打ち込んで、あとはマクロが勝手にやってくれるのに・・・



「・・・ええと・・・ルーフベア、は・・・っと。」


ま、無いものねだりしても仕方ない。

おじいちゃんとおばあちゃんから祝理(しゅくり)(4歳の誕生日の事。リブラリアでは人生で3回、4歳/8歳/16歳の誕生日だけ、それぞれ【祝理】/【臨理(りんり)】/【綴理(ていり)】と呼んでお祝いをする。ちなみに、成人するのも16歳)のお祝いとして貰った筆記用具で地道に綴っていこう・・・


「・・・使った魔法は・・・えぇと、突風魔法(ブレス)水球魔法(ウォーターボール)・・・っと。・・・一応、纏風魔法(ウェアー)も使ったことになるのかな?・・・一応、書いておこう・・・」


ルーフベアは大型の熊だけど、ムササビのように滑空して狩りをする魔物だ。緑生い茂る森の中では濃紺色の皮膚(質感はサメ肌に近い)は見つけづらいし、滑空中はほぼ無音で空気の乱れもごくわずか。さらに、個体数が少ないから遭遇するのも難しいし、警戒心が強いから少しでも気付いた()()()を見せると狩りを躊躇(ためら)う。

ルボワの森に4種いる中級魔物の中でも、討伐禁止になっている森の“(ヌシ)”を除いて、もっとも狩るのが難しい相手・・・だった。



「・・・」


魔力を扱う技を宿している野生動物・・・それがリブラリアの【魔物】だ。

もっとも、野生()()といっても植物の時もあるし、無生物の時もある。完全に理解不能な物もいる・・・というか“ある”。

ルボワの森にも木の実の魔物とかいるしね。他にも、ルボワにはいないけど、お馴染みのスライムや金属のロボみたいなのが徘徊しているダンジョンもあるんだって。


魔物が“どうして存在しているのか?”とか、“どうして生きていられるのか?”なんて事は考えても仕方ない・・・というか、考えたら負けだと思うよ。


命とは何か?死とは何か?人はどこから生まれ・・・うんぬんかんぬん・・・

そんな哲学的な話は他所(よそ)の異世界でやってくれ!


居るのだから存在する。それが理だ!!


フォニアは6歳で考察を諦めました!!





・・・あ!

そう言えば余談だけど、私の魔物の知識は冒険者ギルドの資料庫から得たものだったりする。閲覧は有料だけど、田舎のギルドとは思えないくらい豊富な資料が揃っているんだよね。

魔物の生態や、狩りの記録。あと・・・サバイバルでの料理本とか?便利な魔道具のカタログとか?

参考になる本が沢山あるので、入り浸って読書に耽ったことがあるのだ。

・・・と。余談はこれくらいにして・・・



・・・本題だけど、

魔力との相互作用で生まれた魔物の中には当然、進化を遂げ、技を磨いたものもいる。

人間と“同じ魔法”・・・つまり、詠唱して発現させる魔術の1種・・・を宿した魔物はごく少数らしいけど、“固有魔術”と呼ばれる、その種族独自の・・・魔力を利用した技を行使する種族は数多くいる。


ルーフベアもそうだ。

彼等は滑空という狩りの技に一定以上の魔力を用いている。

そうでなければ、数十mもある高い木の上から狙い通り獲物をしとめるなんて出来るはずがない。

彼等は繊細な魔力操作をすることで、風という気まぐれな力を味方に付けているのだ。



「・・・とはいえ・・・」


・・・とはいえ。ルーフベアは風を完全に操れるわけじゃない。見えなくなるわけでも無い。隙だってある。

そしてその狩りの方法は意外と外力に弱いという脆さも持っている。


私が常時展開している纏風魔法(ウェアー)のバリアーは周囲の空気を常に一定に保とうとするから、それを乱す何か・・・空気の流れや音・・・があれば魔力を消費してそれを打ち消そうとする。故に私は瞬時に異常を察知できる。

高い木の上から・・・とはいえ、空気を乱して滑空するルーフベアを察知できない理由はない。


そしてルーフベアは自分の存在に気付いていない・・・はずの、獲物の方から突風が吹いてくるなんて、全く予期していないに違いない。

制御を失ったルーフベアなんて舞い落ちる絨毯も同じ。


後は、地面に不時着した所を・・・



「・・・粘度を高めた水球魔法(ウォーターボール)で・・・溺死。っと。」


水球魔法はファンタジーゲームでもお馴染みの、文字通り水のボールを撃ち出す魔法だ。

高圧の水で攻撃するのもいいんだけど、水の性質・・・粘度や表面張力、光の屈折率まで・・・アレンジする事が出来る。

今回は粘度を高めてベッタベタにした水球を熊の口に撃ち込んで、呼吸を奪って溺死させた。

魔物も冷静だったら吐き出すなりできたかもしれないけど・・・不時着してパニックに陥っていたから、難しかったのだろう。


どんな魔物にも言える事だけど・・・討伐した時、素材となる部位には出来るだけ傷を付けない方が良い。

魔物(モンスター)をハンティングするゲームみたいに剣で尻尾を切り落とし、弓で翼を穴だらけにしては台無しだ。

今回はスマートに外傷ゼロでやってみた。・・・上手くいって良かった。


・・・ちなみに去年。私のサバイバルディナーを邪魔したパラレルテールは尻尾だけが剥ぎ取り対象だったから、鋭利化魔法(シャープネス)で極限まで鋭くした短剣でご自慢の尻尾を根元から切断し、本体は棘魔法(ニードル)で夫婦仲良く串刺しにした。

別の冒険者パーティーをお食事中だったサブヘルアントは、回収できる顎と、おしりの蜜袋を壊さないように、足と胸を土属性の礫矢魔法(グラベルアロー)で磔にして、生きたまま解体した。


・・・うん。

自分でもグロくて残酷だなって思うよ。


でも、狩りってそういう物でしょ?


倒した瞬間。死体は消えて、代わりに報酬がポップするなんてご都合主義もいいとこ。

リブラリアには魔法があるけど、それ以外は割とリアルな世界なんだよ。異世界と同じでね・・・



「・・・それにしても、この魔道具は便利。今回は特に大活躍だった。」


治癒術師のバイトを始めて3年。

貯まったお小遣いの額は・・・もはや子供のお小遣いと言っていい額じゃなくなっている。

エディアラ王国には所得税が無いからいいけど、もしあったら・・・

扶養(ふよう)を外れるなんてレベルじゃない。


おやつと食費と消耗品を除いて特に買う物が無い私には当然、そんなお金使い切る事が出来ない。

でも、お父様もお母様も私の仕送りを受け取ってはくれなかった。

それどころか・・・

「将来のためにとっておきなさい…」

・・・そう言ってくれる私の両親は、世界・・・いや、異世界も含めて

宇宙いちだ!



そこで私は将来の為に魔導書や歴史書を買い漁った。あと、将来の為に運用・・・つまり投資もした。


そのお陰でかなり魔法のレパートリーは増えたし、見地も広がった。

レジーナ先生ご指南の下始めた資産運用は毎月2割UPという意味不明な伸び率を記録し、使いきれないお金はもはや手に負えない資産と化してしまった。

そしてそのお金で買ったのが・・・



「・・・ストレージバッグ。・・・大事にしよう。」


ファンタジーでおなじみの魔道具ストレージバッグ!

ひっくり返したら世界が終わるかもしれない不思議なポケット・・・と違って容量は有限だし、時間が止まる訳じゃないから生ものを入れると時間と共に悪くなっちゃうし、意志あるモノを入れることも出来ないけど、スマホとお財布とお化粧小物と筆記用具と参考書を入れて肩から下げるくらいのポシェットに、掃除用具入れくらいの容量があるというから驚きだ。

理屈は全く分からないけど入り口より大きい物も入れられるし、

入れた物の重さも感じない。

色んな物理法則ガン無視してるけど・・・

考えたら負けだよ。フォニアは5歳で考察を・・・以下略。


それはそうと、このバッグのお陰で、ロジェス先生からたまに出される1泊2日。単独ダンジョンキャンプ!・・・通称“ガチキャン”という、児童相談所に保護されるレベルの鬼畜な課題にも、ちょっとコンビニ・・・くらいの手軽さで行けるようになっちゃった!

巨大なルーフベアも入れる事が出来たしね。


因みにこのバッグ。お値段は大金貨2枚・・・1,000万ルーンである。ルーンは日本円とほぼ同じ価値!

そして、これでも私が持っているのは“最低水準”のストレージバッグだというから・・・金銭感覚狂っちゃう。

野菜は十数ルーンで買えるのにね・・・






「・・・ふぅ。」

「おねちゃ…」

「・・・う?」


ノートを閉じた私に声をかけたのは、可愛い可愛い・・・瞳に入れても痛くない妹だった



「・・・ロティア。どうしたの?」


「こ、こらロティア!ダメって言っただろ?」

「ロティアちゃん。お姉様の邪魔しちゃメよ?」


どうやらお父様とお母様の制止を振り切って起き出してしまったようだ。

いけない子だなぁ~、もぉ~///



「う~…おねちゃと寝んのぉ~!」


・・・なにそれ可愛い!



「・・・ロティア。私ももう寝る。・・・一緒にねんねしよ?」

「んっ!」


駆け寄って来たロティアを抱き上げた私は、そのまま寝室に向かい・・



「おねちゃ…。おやー…みぃ…」


ロティアを抱いたままま、お父様とお母様の間に潜り込んだ!

あぁ・・・しあわせぇ・・・



「・・・んふふ。お休み・・・ロティア。・・・お休みなさい・・・おとー様。お母・・・さま・・・」


そう言う私も・・・あっという間に目蓋が重くなり・・・



「あぁ。…お休み。フォニア。ロティア。…また明日な。」

「すー…すー…」



2人に、抱かれたまま・・・



「いい子に寝るのよ。私の可愛い娘たち…」

「・・・くー・・・くー・・・」


お休みなさい・・・

林檎です。


誤字修正ご報告ありがとうございます!修正いたしました(21/11/06)

ご覧いただいたうえ、ご指摘までいただけて…とても嬉しいです!!

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