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Chapter 034_学園あれこれ

「・・・む~う~!」

「はははっ…さぁ、どうする?…魔女様?」

「・・・参り・・・ました・・・」


学園祭が終われば再び、朝練は私とルクス君の2人の時間となった。



「ほら。手を…」

「・・・ぅ、うんっ・・・」

「よっと」


彼との摸擬戦、勝率は5割といったところ。

魔法アリなら私の勝ちで、ナシなら負け・・・それで5割。



「・・・ひょっとして・・・私の動き、読んでる?」


負けるのは悔しいけど・・・学ぶことは多かった。

私の癖、足りない事、無駄な動き・・・



「…どうしてそう思うんだい?」

「・・・視線や剣捌きから読まれちゃうのは仕方ない。でも・・・さすがに、回避の体勢から予備動作なしで後ろに跳んだのに、その先にいるのは不自然。」

「…」

「・・・前、援風魔法(アシスト)は先読みできちゃうって言ったよね?もしかして・・・纏風魔法(ウェアー)に・・・気づいてる?」



子供のころはおじいちゃんが、師匠の下ではガルさんやディミトリさんやセドにゃんが教えてくれていた事の、さらに上を学ぶことができた。



「…ぷっ…」

「・・・う!?」

「くくくくくっ…」

「・・・う~!?」

「ははははっ…はぁ、はぁ~…はは。ごめんよ。実は…入学式から気づいてた」

「うぅ!?」


とても勉強になった・・・



「最近はずいぶん控え目になったから難しいけど…前までは多分、気づいた人も居たと思うよ?」

「・・・うそ。・・・そんなこと言われたことないのに。」

「う~ん…それはちょっと分からないけど…。フォニアちゃんは動こうとするとき、先に纏風魔法を操作しているよね?その動きで気づいちゃうんだよ。」

「・・・空気の流れは私の体表だけだし、魔法印も出ない。魔力を追加しているわけでもないから気配もしないはずなのに・・・なんで?」

「う~ん…“感”…かな?」

「・・・非論理的に過ぎる。」

「そんなこと言われても…でも、ボクみたいにそれが分かる人間もいるんだから…」

「・・・それもそうか。何か考えないと・・・」

「くくく…期待してるよ魔女様。…さ、そろそろ教室に向かおうよ!」

「・・・ん!」


とても楽しい時間だった・・・


・・・

・・






「フォ、フォニアちゃん好きです!弟子にし…」

「『火種よ』インジェクションふぁいあー!」

「ぎゃぁ~!!」


ナンパと、人体発火。

昼下がりの魔法学園では、よくあることです。



「あ。コイツ昨日も来てなかった?」

「…常習犯。」

「懲りないね。」

「は、はは…ガ、ガッツはあるよね…」

「ちょ、ちょっとくらいお話聞いてあげてもいい気…が…」

「・・・ヤ。」


ヴァーレル君は本当にしつこかった。

何度撃退しても再来するその姿は・・・言っちゃなんだけど、家庭内害虫Gを思い出す程。

どうやれば諦めてくれるんだろうか・・・?



「フォニア!もういっそ、ひと思いにヤっちゃいなさいよ!!」

「・・・ちょっと考えてる。」

「あ、憧れの学園でサスペンスは嫌だ…よ!」

「フォニアちゃんなら完全犯罪に持ち込めるんじゃない?」

「や!さすがにそれは…」

「…バレなきゃオッケー」



人のこと言えないけど・・・みんなも過激な思想をしているよね。

チコ君なんて完全に肯定しているし・・・



「ねー!それより、次の講義だけど…」

「ダンスの講義だ…ね!」

「・・・うぅ・・・やだなぁ」

「フォニアちゃん。ダンスと音楽は苦手だよね…」

「誰だって苦手なものくらいあるんじゃない?」

「…絵も下手。」

「・・・チコ君。ヒドイ。」


テーブルの隣で倒れる生焼けの彼を放置して、仲間との楽しい(男の娘からdisられてるけど・・・)おしゃべりは続いたのだった・・・


・・・

・・






「…そう。それじゃあ…彼女は故郷に帰ったのね。」

「・・・ん。閣下から無事に到着したって手紙が届いた。」

「そう…。よかったわ。」


放課後。

少し遅い時間に火魔法研究会の部室に向かうと、中ではレベッカ先輩1人だけが待っていた。聞けば、他のみんなは広場に魔法の練習に向かったとのこと。

先輩はどうやら、私に話があって待っていてくれたらしい・・・


因みにレベッカ先輩は、あの後火魔法研究会の会員になったらしい。

・・・もちろん私は非会員のまま。



「・・・先輩は優しいね。」

「え///…そ、そうじゃないけど。…だ、だって気になるじゃない?あんな事があったんだから…」

「・・・他のみんなは気にしてない。」

「そう、みたい…だけど…」



実は金領祭の最終日の夜。ちょっとした事件が起きた。


あの、クリスティアーヌ先輩が・・・寮の下で、血まみれになって発見された。



幸い、先輩の部屋は3階で高さもなかったし、彼女のルームメイトがすぐに発見し、私に連絡が来て治癒したから事なきを得たけど・・・


先輩は精神的にかなり弱っていた。

私が関わったことを知られると面倒になりそうだったのでベルナデット様に預け、私は先輩の父 ギヨーム・デュック・オルソート・ドーファン閣下(閣下はオクタシアの元老院メンバー。私とも面識がある。)に手紙を出し、自宅養生を勧めて迎えに来てもらったのだった。

このまま学園生活を続けさせるのは、酷だろう・・・


私は最初の治癒以降、先輩には会っていないから分からないけど・・・ベルナデット様によると目が覚めてからの先輩はずっと無言で、呼びかけにもほとんど応えないとのこと。


体の傷は完治しているし、ベルナデット様が定期的に魔法や薬で心を鎮めてくれているからある程度は安定していたはずだ。

にも拘わらず元気がないということは・・・


彼女の心の傷は深く、癒すには長い時間がかかる・・・という事。


ストレスのたまる学園を離れ、生まれ育った土地の水と空気で時間をかけて、ゆっくりと・・・それが、私とベルナデット様とサリエルが導き出した最適解だった。



「結局…お祭り男爵が厳重注意受けただけで事件は解決…か。なんか、パッとしないのよねぇ…」


状況からみて、まず間違いなく。先輩は自らの意思で飛び降りたのだろう。

事が事だけに聴衆を煽ったエドワール先輩の過失が問われたけど・・・それだって表面的なもの。実際にエドワール先輩に罪があると思う人はいないだろう。

もし加害者を特定するとしたら、おそらく・・・私も含めた・・・あの場にいた全員になってしまう。



「・・・でも、他にやりようもない」

「それはまぁ、そうだけど…」

「・・・」

「…」


私はあの場で、先輩を助けるべきだったのだろうか?


・・・確かに声を上げれば結果は変わっていたのかもしれない。

でももし、そうしていた場合は・・・それはそれできっと、また別の問題を引き起こしていたに違いない。もしかしたら、もっとヒドイ結果になっていたかもしれない。

なにより、その直前まで私を目の敵にしていた人を助ける義理なんてない。


正解なんて・・・なかったんじゃないかな?

どの選択肢を選んでもバッドエンド。

これはそんな、救いのない出来事だったに違いない。

・・・ただの言い訳かもしれないけど・・・本当に、やりようがなかったんだよ。


結果的に先輩は無事だったのだから、それでいいじゃないか・・・そういう意見もあるかもしれない。

もっと不幸な人がいる。それもその通りだ。


けど、先輩は・・・人生で一番楽しい時間であろう学園生活の、おそらくそのすべてを・・・失ったんだ。

それが不幸でなくて、何だというのだ?


前世の中学生時代に散々いじめられた私にはよくわかる。

時間は取り戻せない。それが、理だって・・・


























「…ねぇ、フォニアちゃん。」

「・・・・・・っん。」


季節は・・・冬。

外はもう真っ暗で。他のみんなはそのまま帰っちゃったんじゃないかなぁ・・・って。そんな時間。


レベッカ先輩が話しかけてきてくれた。


・・・よかった。

もうちょっと放置されてたら、余計なことを思い出して泣いてしまうところだった・・・



「…じ、実は…ね。話したいことっていうのは…クリスティアーヌちゃんのことじゃないの。も、もちろん彼女の事も気になってたんだけど…本題は別。」

「・・・」

「そ、その…」

「・・・」

「ま、まだ…」

林檎です。


少し誤字があったので修正しました。

・・・よろしくね。(2022/01/23 18:25)

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