Chapter 033_後の祭り
「・・・みんな。お待たせ!」
レダ戦のあと。
「おっそーい、フォニア!!遅刻よ!ちーこーくーっ!!」
先輩達・・・特に広報部の・・・に囲まれて。
なかなか開放してもらえなかった私は、それでもギリギリ・・・い、1分遅れくらいで・・・みんなの待つレダ川の川原に到着した。
「そんな事言っちゃ可哀そうだ…よ。おかえりフォニアちゃん!魔法…すごかった…よ!」
「…カッコ良かった。」
「さすが魔女様!!…今はレダ様か!!」
「はは…。すごかったよフォニアちゃん。流石だね!」
「・・・あ、ありがと///」
因みに川原・・・といっても、ここは立派な学園の敷地。
学園はレダ川と、崖の間・・・中州みたいな場所に建てられているから、敷地の半分は川原なのだ。
・・・いや。それはいいとして・・・だから、なんでそんな所に?
そう思っている読者様も多い事だろう。その答えは、もうすぐわかるよっ
「フォニアた~ん!!準備完了!!ばっちこーいっ!!」
「もう時間もないわ!すぐに始めましょ!」
「・・・ん!・・・って、う?なんでレベッカ先輩がいるの?」
「は、はぅ…そ、そのぉ…」
待ち合わせ場所には火魔法研究会のみんなと、ルクス君と、ジル先輩に加え・・・先程のレダ戦で知り合ったレベッカ先輩の姿もあった。
「ふっふっふ~!!聞いて驚け見て騒げ!!血沸き肉踊…」
「意味わかんない事言ってんじゃないのターニャ!!…レベッカ先輩はあの後、ターニャとお喋りしたらしくて…」
「ふ、不肖レベッカ・リースマン!魔女様の御業のお手伝いさせて頂きたく参上仕りました!!」
エミー先輩の説明に続き、顔を真赤にしたレベッカ先輩がそう言いながら大きく頭を下げた。
レベッカ先輩・・・なぜ後輩にそんな態度を?
さっきもストーカーまがいの事言っていたし・・・この人、ちょっと危ない人なのかもしれない。
気を付けよう・・・
でも、お手伝いしてくれるのか・・・それは助かる。
レベッカ先輩なら大いに力になってくれる事だろう!
「・・・ありがとうございます。・・・というか、私は火魔法研究会の会員ではな」
「ちょっとフォニア!!喋ってる時間なんてないわよ!!さっさと始めなさい!!」
そ、そうだった!
「玉はこれだ…よ!」
「いやぁ…大変だった…」
「これ全部拾ったの?」
「…頑張った。」
そう言ってみんなが出してくれたのは、学園の森に落ちている“松ぼっくり”が入った木箱。
これから始まる火魔法研究会の出し物に欠かせない小道具・・・
「・・・ん!・・・それじゃあ、先輩も。」
「りょ!」
「うんっ!」
「は、はいっ!!はあぁ~…魔女様とユニゾンなんて…ゆ、夢のよう///」
私達4人・・・
私と、ターニャ先輩と、エミー先輩と、レベッカ先輩・・・
は、それぞれ松ぼっくりを手に持って・・・
「「「「(・・・)せーのっ!」」」」
『『『『炸花よ』』』』
声を一つに、
唱えた!
『『『『風と機詠んで華々と 閃の花びら振り撒かん 潔く散る 瞬く炎華』』』』
「「「「フラワリング!!」」」」
火属性魔法 第5階位 炸花魔法を行使!!
「…では、頼んだぞ!後輩よ!」
「…頼まれた先輩。」
「ジル!シッカリやんなさいよ!!」
「ふっ…誰に言ってるんだ?…任せろエルミール!」
「わ、私のは…」
「・・・アベル君とルクス君。投げるだけでいいから・・・レベッカ先輩の分。お願いしていい?」
「もちろん!」
「ボクもか…。まあ、いいけど…」
魔法を唱えた私達が生み出した炸花・・・松ぼっくりを、それぞれのパートナー(私は自分でできるから、パートナー無し。・・・なんか寂しい。)に渡して準備完了!
「それじゃあみんな!」
「「「「「(・・・)せーのっ!!」」」」」
『『『林の願い 北の森を往く』』』
「「「ブレス!」」」
「「それっ!!」」
チコ君、ジル先輩、そして私の3人は突風魔法で、
アラン君とルクス君は投擲で・・・松ぼっくりを空に投げる!!
そして・・・
「「「「(・・・)咲けぇっ!!」」」」
指パッチンと一緒に唱える!!
すると・・・
『『『『パァ―ンッ!!』』』』
空に大輪の・・・火の花が咲いた!!
「さぁ、ドンドンやっちゃうよぉ!!…フラワリング!!…チコ君頼んだぁ!!」
「…あい分った!『林の願い 北の森を往く』ブレス!!」
「ヒューッ…」
火魔法研究会の出し物。それは・・・魔法を使った【花火】だ!
「フラワリング!…はい、ジル。」
「あぁ。…『林の願い 北の森を往く』ブレス!」
「フラワリング!!…さ。2人とも…お願いね!」
「願われた!…せりゃあぁ!!」
「ん。…よっ!とっ…」
「・・・フラワリング!・・・『林の願い 北の森を往く』ブレス!」
炸花魔法は・・・術者が手に持った“意思無きモノ”を炸裂させる魔法だ。
熱や爆風よりも、火花の散乱に重きを置いたこの魔法は「フラワリング」の言葉で対象物を炸裂の“蕾”に変え、
「咲けぇい!!」
『ドパァァァ――ンッ!!』
「たーまやぁぁ~~!!」
「咲け!」の言葉で文字通り“咲かせる”事が出来る。
「咲いてっ!!」
『パァァ―ンッ!!』
蕾に変える時に一瞬魔法印が現れるものの、その後は見た目も元通りの“意思無きモノ”に戻る。そして術者が魔力の繋がり(魔法に対する意識)を絶たない限り、任意のタイミングで炸裂させることが出来る。
このため・・・
「咲けっ!!」
『『ドドパァァ―ンッッ!!』』
・・・テロリスト御用達の魔法として悪名高いのだ。
炸裂の威力は蕾の大きさと材質に由来するから、人を殺傷するにはそれなりに大きくて重いものを選ばなくてはならない。けど、それに比例して魔法の難度も上がるから・・・「誰にでもできる。」というほど、甘くはない。
けれど“そういう”使われ方をされているのは事実だ。
「・・・咲け。」
『ドッパァァァ---ンッッ!!!』
そんな炸花魔法ではあるけれど・・・要は使い様だ。
科学技術と一緒で、科学や技術“そのもの”には善悪なんて無くて、
誰がどう使うか・・・それが重要。
私の場合は、この魔法を師匠から教えてもらったとき、最初に思い付いた使い方が・・・花火だった。
「…ブレス!」
「咲けぇぇ!!………たぁぁぁ~まやぁぁ~~!!」
「ブレス!…いいぞエルミール!!」
「咲いてぇっ!!…あはっ!我ながらキレイ!!」
「よっ!」
「はっ!」
「「先輩!!」」
「さ、咲けぇ!!………うふふっ!2人ともナイススロー!」
「先輩もさすがです!」
「むしろ先輩の方が…。ぶっつけ本番でよくできますね?」
「・・・ブレス!・・・咲け!!」
「むぅ…フォニアァ!来年は私も参加させなさいよ!!」
「・・・それは・・・ナターシャちゃんの頑張り次第じゃない?」
「ぐっ…。ま、まあ。そうなんだけど…。み、見てなさい!フォニアの出番は今年が最後よ!!」
「・・・んふふ。期待してる。」
「来年は私とフォニアちゃんで消火隊だ…ね!」
そういえば・・・ここにいる10人のうち火魔法研究会のメンバーって、たったの3人なんだよね。
何だかんだ言いながらも、結局、私も手伝う事になっちゃったけど・・・ま。楽しいし!
いっか!!
「みんな大玉いくよぉ!いっせーのー…でっ!!」
「「「「(・・・)咲けぇ!!!」」」」
『『『『ドッ…ッパァ―ンッ!!』』』』
「「「「「たーまやぁぁーーー!!」」」」」
・・・
・・
・
…
……
………
どうして…
どうしてどうしてどうしてどうして………
どうしてあの時…あ、あんな無茶をしてしまったんだろう…?
だ、だって…だって仕方ないじゃない!!
だって、あいつが…隣にいたんだもの………
だって…負けられないって…
「………」
暗い寮の部屋でひとり、私は何度も何度も。同じ自問自答を…言い訳を…繰り返していた。
「…」
ルームメイトは…幸い。お祭りに出ているようでここにはいない。
良かった…
泣きはらして髪も振り乱した今の姿を誰かに見せるわけにはいかないから…
「…」
きっと明日から、みんなの瞳の色が違う…
レダ戦は生徒がほぼ自主的にやっている行事であって評価には影響しないと言われているし、実際その通りなんだろうけど…それは、先生や成績に対して。という意味であって…
「…」
2年連続で無様に負けてしまった…しかも、今年は最悪の形で…私をクラスの…同じ学年の皆は許さないだろう。
「…っ」
ど、どうしよう!?
ルームメイトのルシールちゃんが、すぐに帰って来てしまうかもしれない!?
に、2年生の恥だとか…それでもトロワか!?とか…それでも公爵家の子供か!?とか言われたらどうしよう!?
「っ!!」
怖いっ…怖いよっ!!
常に1番を要求するお父様がこの事を知ったら…ど、どどどうしよう!?私…わ、わたしっ…
『『『『パァ―ンッ!!』』』』
「ひっ!?」
暗い寮の部屋が明るく照らされたのは…そんな時だった
『ドパァァァ――ンッ!!』
「!?…な、なに…あれ…」
それは…秋の夜空に咲いた大輪の花だった
「っ………」
誘われるようにベランダへ出ると…お祭りの残り香が微かに薫り。遠くからは笑い声が聞こえていた…
『パァァ―ンッ!!』
「…」
そんなお祭りの後を彩るように。惜しむかのように。
…夜空をハナビラが彩っていた。
現れてはすぐに消える
魔法の花…
『『ドドパァァ―ンッッ!!』』
「…///」
綺麗だった。
美しいのに、潔く散るその姿…
『ドッパァァァ---ンッッ!!!』
「ワタシ…も……」
無意識だった
ベランダの手すりに立ち上がった私は手を伸ばし…
『『『『ドッ…ッパァ―ンッ!!』』』』
クリス先輩…
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ちょっと誤字を発見したので修正させていただきました。
・・・よろしくね。(2022/01/30 10:55)




