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Chapter 031_敗者の行方

『は、はは…ま、まさに“らしい”オチだったがぁ…魔法は素晴らしかったぜぇぇい、タチヤァァーナァァァ!!』

「「「「「ウオォォォッ!!!」」」」」」


「キラッ☆」



声援に答えるターニャ先輩。

そういえばあの人。最初は私と一緒に震えていたはずなのに・・・今では一番順応しているよね。

さすがです。真似はできない・・・



『さぁ!続いては!!去年は残念な結果に終わったこの人!2ねぇぇーんん!1組ぃ!!トロワぁ!!…クリスティアァァァーヌゥ・ドーファァァーーンッッ!!』

「…」


エドワール先輩の言葉に一瞬『ムッ…』とした表情になったものの・・・



「はぁ~い、みんなっ!チャオぉ~っ!!クリスティアーヌで~す!!」

「「「「「わぁぁあぁーー!!」」」」」

「クリス―!!」

「今日も可愛いぞクリス―!!」

「クリスせんぱ~い!!」


「みんな、声援ありがと~!!」


クリスティアーヌ先輩はブロンドの長い髪を巻き巻きにしたお洒落さんで、ネックレスやブレスレットと言った小物も沢山身に付けたお嬢様然とした・・・正真正銘のお嬢様。

オルソート領領主、ドーファン公爵令嬢だ。



『っさぁ~!盛り上がりもバチコォ!なうえ、次に魔女様が控えてんだぁ!!去年みたいな醜態は曝さないでくれよぉ!!』

「…っ。」

『頼んだぜェェェェ!!』

「…た、頼まれましたー!!」



身分も、お金も、容姿も、成績も、魔法の実力もオールグリーン!

オマケに(詰め物だけど)お胸もおっきい!・・・と、くれば、男性受けしないわけがない。



「…なによっ。運が良かっただけの癖に…」

「・・・」


なのに・・・何故か、事あるごとに私に絡んでくる。

(自分で言うのも悲しいけど)ちんちくりんな私なんかに構わないで欲しいんだけど・・・






「…き、今日は良い夜ねぇ!」

「「「「「イエェェェェーーーーーイッッ!!!」」」」」」


「…ほら見て!月は…ま、まだ見えてないけど。お星さまがきれーね!」

「「「い、いえぇ~…」」」


「み、みんなは学園祭楽しめたかしら!?わ、私はダンス部の演技で…」

「「「「「…」」」」」


・・・?

他の演者と違ってすぐに演技に入ろうとしないクリスティアーヌ先輩。

なんだろう?お喋りしたい気分・・・とか?



『Wo~いクリスぅ!…お喋りなんか誰も聞きたくねーんじゃねーのかぁ?それとも、お前にとってそれは演技なのかァ?』

「ち、違うわよ!ただ…」

『だったらサッサとヤーレーよっ!』

「くっ…」

『なんだぁ!?自信ねーのかぁ!?“自称:陛下のお気に入り”のクリスセンパイよぉ!?』

「んなっ!?」

『ははっ!何だその顔!?自分で言った事も忘れたのか?』

「あ、あぁっ…もうっ!!唱えるわよ!唱えるから…ちょっと黙っててよ!!」


なんか、雲行き怪しいね。

「私は陛下の○○」的な言葉は、下手をすれば不敬と疑われかねない危ない表現なんだけど・・・



『あぁ、それでいい!…盛り上げなくていいから、せめて今のテンションを保ってくれよぉ“お気に入り”様!』

「う、うるさいっ!黙っててよっ…」

『おっと失敬。…はっ。』


感じわるっ・・・







「ふぅ~………。…わ、私は…み、見ての通り土属性が得意だし…へ、陛下の事は勿論。大好きよ!!憧れてるの!だから…へ、陛下と同じ………お、王級魔法に挑戦してみる…」

「「「「「おぉぉぉぉーーー!!!」」」」」


・・・そういえば、この物語は私を軸に展開しているから感覚麻痺しちゃうけど

普通、12~13歳(学園1~2年生)の子供が宿している魔法と言えば、第3階位の中級魔法くらいが精々で、それだって行使できない人の方が多いくらい。

5年生のベアトリス先輩が第6階位を宿しているのも世界有数の才能と言われるレベルだし、3年生のターニャ先輩が同位の炎舞魔法を宿しているのは神童と呼ばれる域。


だから、2年生のクリスティアーヌ先輩が王級魔法・・・第5階位以上の魔法・・・に挑戦するというのは、十二分に凄い事なのだ。



「スー…ー………はぁ~…~……。」


ながーい深呼吸のあと、先輩は・・・



「…す…『砂よ』


唱え・・・って!?



『有れど成さぬは無きに成り 風を(とど)めて幾年月(いくねんげつ) 水を奪いて母が手へ 留め奪いて海と成せ ふ、吹け』


あっ・・・



サンドストーム!!」











「「「「「…」」」」」



つ、土属性第6階位砂嵐魔法(サンドストーム)は広範囲に砂嵐を巻き起こして、相手を翻弄(ほんろう)すると共に目潰しをし、切傷(せっしょう)を負わせる魔法だ。

でも、第6階位という難易度の割に効果が大したことないし、発現後、周囲に砂が撒き散らされて後片付けが大変・・・という理由で人気がない。らしい。

スナイパー部隊の報酬の一環として陛下に教えてもらった魔法の一つなんだけど・・・使い勝手が微妙だら、私が唱える機会は無いかもね。



「…あ、あれ?おかしいな?」

『…をぃ、クリス…』

「も、もう一回やらせてよ!!すー『砂よ 有れど成さぬは無きに成り 風を留めて幾年月 水を奪いて母が手へ 留め奪いて海と成せ 吹け』サンドストーム!」


「「「「「…」」」」」


・・・発現しない理由は単純に、呪文を間違えているから・・・なんだけどね。



「…あれれ…れ?」

『クーリースー!?』


でも、正直言って間違えてくれて助かったと思っている。

土魔法は比較的【理論然】(論理的に動かす事が出来る。という意味。反対に、風魔法や木魔法は予期せぬ動きをする事があるため、理論然としていない・・・つまり【自然】としている魔法。因みに、火魔法と水魔法はその中間で、治癒魔法と契約魔法は“理論そのモノ”と言われている。・・・もっとも、【召喚魔法】は属性に由らず、この枠に当てはまらないけどね。)としているんだけど、この魔法は例外的に取り扱いが難しくて、効果範囲を逸脱(いつだつ)しやすい、取り扱いの難しい魔法だ。

大平原で唱えるならともかく、こんな人の密集した場所で行使するような魔法じゃ無い。

もし発現したらスグに押さえ込もうと思っていたけど・・・その必要は無さそう。






「も、もういっか…」

『いい加減にしろよ!!』

「ひっ!?」


エドワール先輩の怒声に驚き、たじろぐクリスティアーヌ先輩。



『お前にはもう、舞台に立つ資格なんかねーよ。…下りろ』

「そ、そんなっ!?まだっ!」

『まだ…なんだ!?…あぁ!?チャンスはくれてやった。だが失敗したんだ。それがオメーの実力だろ?』

「で、でもっ!」

『でも…だぁ?「でも」なんて、「まだ」あると思ってんのか?』

「っ…」

『…おら、会場を見ろよ。オメーに期待してる奴が1人でもいるか?あぁ!?』


「「「「「…」」」」」 


当然・・・会場から答えなんて無い。


・・・と、言うか、今の言い方されて声を上げられる人なんて居ないよ。

ここでそんな事したら・・・空気読めない奴って指さされて、今度は自分が矢面に立たされちゃうもの。



「み、みん…な…。そんなっ…」

「「「「「…」」」」」


『…ほら、クリス。どうする?』

「…」

『お前に出来る事は2つだけだ。自分の足で舞台から下りるか…実行委員に強制退場させられるか。…唱えろ。」


・・・う?

私は助けないのかって?・・・冗談いわないでよ。

ここで下級生・・・しかも、先輩が公然と批判してイジメていた相手である・・・私が手を差し伸べたりなんかしたら、話が(こじ)れて収集つかなくなっちゃうもの。


・・・ま。イジメって言っても、綴るほどの事された訳でも無い・・・本当に子供の嫌がらせだったから、今更“とやかく”言うつもりもないしね。



「…っ………」

『おーい、クr』

「おっ、下りるわ゛よぉ!!………み、みんなのバカァァーー!!」


クリスティアーヌ先輩は泣き叫びながら舞台から駆け下りていったのだった・・・

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