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Chapter 026.5_新年祭<閑話>

林檎です!


新年あけましておめでとうございます。


昨年は大変お世話になりました。

今年もどうか、ご声援・ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。



さてさて、本編の投稿は明日となりますが、それに先立ち、この冬休みに書いた閑話を1話。特別公開したいと思います!


どんどんパフパフー!!



舞台は本編の1年半後(フォニアが3年生になった年)。テラ・エディアラ城での出来事となります。

未出の人物が登場しますが・・・いずれ本編でもご紹介することになりますので、詳しい説明は省きます。



それでは、どうぞ。

お楽しみくださいませ!

「・・・陛下。新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。」


リブラリアにも【新年祭】というお祭りがある。

親しい人や目上の人に、会えるなら直接。会えないならお手紙で「・・・今年もよろしくお願いします!」と。挨拶をする・・・



「えぇ!こちらこそよろしくね。万象の君っ!!今日は楽しんでいってね!!」

「・・・光栄に存じます。」


・・・ま。異世界島国と同じようなお祭りだ。


違いと言えば、春に始まり冬に終わる・・・そんな(カレント)を採用しているリブラリアにおいて、この新年祭は“春の到来”を告げる日でもある事。


異世界島国で言うと・・・【立春】が一緒に来たような感じかな。


豆まきはしないけど・・・お祭り好きの国民性も相まって「「「「「レッツパーリィーー!!」」」」」みたいなノリで大騒ぎする人もいるし、王城ではダンスパーティー付きの晩餐会が開かれる。

街には【星月夜祭】ホドじゃないけど出店(でみせ)も出る。



「ねぇ、万象の君。ところで…」


もっとも、異世界島国も昔は【太陰暦】を採用していたし、現代異世界にも【太陰暦】を暦とする国があるのだから・・・リブラリアの【新年祭】がどういうものか。感覚的には分かるでしょ?


待ちに待った春がやって来る日・・・1年の始りを祝う、おめでたい日!

今日はそんな日なのだから・・・



「魔弾隊…ぜっんぜん!(はかど)ってないって言うじゃない?しっかりしてよね!」

「・・・」


晩餐会のご飯を楽しめなくなっちゃうような事。言わないでほしかったなぁ・・・


・・・

・・






「…やあ!フォニアく…じゃなくて。顧問様。新年あけましておめでとう!」

「・・・もくぅ?」


ダンスパーティーそっちのけで端っこの席に陣取り、大皿から直接ご馳走を食べていた私に声をかけてきたのは・・・



「・・・ん、んっく!・・・・お、おめでとうございます。ベアトリス先輩。今年もよろしくお願い致します。」


ベアトリス・クレージュ先輩・・・

1年生のときに知り合った学園の先輩だ。



「ふふふっ…お願いするのはボクの方だよ。今年もご教授の程、よろしく頼むよ!」


学園を卒業した先輩は初め、近衛隊に入隊したんだけど・・・隊長であるレオノールさんに見出(みいだ)され、その年のうちにスナイパー部隊に大抜擢されたエースだ。



「・・・い、いえ・・・先輩がいなかったら、陛下に大目玉を食らう所でした。今後とも、よろしくお願いします・・・」


期待されて発足したスナイパー部隊。

でも・・・陛下が言うとおり、まったく上手くいってない。


50m以上のスナイピングが出来る術者はたったの、7ペアと2人。

魔法と比較して優位性のある、100m以上になると・・・1ペアと1人にまで減ってしまう。

部隊には優秀な隊員が多く所属しているし、発足して2年経つというのにこの有様・・・


そりゃあ、高いお金を出して、専用の練習場も用意して、一流の鍛冶職人が造った最高品質の発動子を提供している陛下としては文句の1つも言いたくなる。


それに、私としても・・・本心はともかくとして・・・やると決めた以上。責任をもってやりたい。

だから今の状況は正直、悔しい・・・



「そ、それは…身が引き締まる思いだね、、、」


そして、この。

私以外で唯一、ソロでのスナイピングが出来る人物こそ・・・



「・・・よろしくお願いしますね。先輩。」

「あ、あぁ…。こ、顧問様には遠く及ばないが…な、何とかやってみるよ。」


・・・ベアトリス先輩だ。


実は、ベアトリス先輩はほぼ純粋な金の瞳をもった金属性魔法使いなのでスナイピングに必須の【鷹の目魔法(ホークアイ)】を行使することが出来ない。(ちなみに【点火魔法(インジェクション)】は宿している。)


だから最初はスポッターさんとペアを組んでいたんだけど・・・上手くできずにいた。



「し、しかし…まだまだ、君のようにはいかないね。止まっている的なら当てられるようになったが、動いているとなると…」

「・・・それは・・・相手の動きと風の流れをよんで偏差射撃するしかありません。」

「それは分かっているんだけどねぇ…」


鷹の目魔法という魔法は術者自身にしか効果を発現できないためペアでスナイピングをする場合、スポッターとスナイパーがひとつの発動子を一緒に持って・・・“撃てない”スポッターが導いて、“見えない”スナイパーが撃つ・・・


という方法をとる事になる。



当然、2人の息を合わせないと出来ない。信頼関係も必要だ。

部隊に所属するスポッターとスナイパーには共同生活をお願いしており・・・ユリユリしてる人もいるし、ホモホモしている人もいる。結婚しちゃった人までいる。

みんな純情で一途ではあるけれど・・・はたから見れば、相当ヤバい部隊である。


ま、まぁ。ソレはともかくとして・・・

深い信頼関係を築くには当然、時間も必要。先輩のように“合わない”場合もある。


だから効率が悪い。合理的じゃない。

もともとソロで開発した技なのでソロでできるなら、その方がいい・・・



そしてある日。気が付いた。


リブラリアには【ガラス製品】がある。

ドワーフ達は高い工芸技能をもっており、金属加工はもちろん。ガラスでできたドラゴン像や、建物の壁一面を彩る巨大なステンドグラスだって平気で造る。

そして、眼鏡や顕微鏡といった光学機器もある。


・・・いっそ。発動子にスコープ乗せちゃえばいいんじゃね?






「・・・この春からライフル型の発動子が正式採用されます。冬休みに旅行したドワーフ王国で調達して来ました。・・・もちろん。アドルフ隊長(スナイパー部隊の隊長様)やレオノール様もご承知です。」


ちなみに新しい発動子の形は“まんま”マスケット銃である。

()()()()な記憶を頼りに私が描いた稚拙なイラストを元に、高精度可変倍率スコープとバヨネット式で着脱可能な銃剣まで取り付けた“あの”錬金術師のお爺様は、実は転生者だったのかもしれない。


だって・・・



「・・・どうせ作るならトリガーが欲しい!」

「と、とりがー!?」

「・・・ん!指をひっかけて、引き倒すレバーの事。・・・私は指パッチンを発現の合図にしているから、同じように・・・「・・・インジェクションふぁいあー!」の切欠(きっかけ)に出来る機構が欲しい。」



・・・これだけの説明で“まんま”トリガーって。造れる物なのかなぁ?






「さ、さすがだね…」

「・・・これも、先輩が試作品でいい結果を残してくれたおかげです!」

「ボクの方こそ。君が提案してくれなかったら今頃…。レオノール隊長、直々のご指名を受けたのに結果を残せないなんて冗談にならないからね…」


リブラリアは結果優先の実力主義社会だ。先輩が試作品の銃でいい結果を出してくれたから、新しい発動子を正式採用できたけど・・・

それが無ければ部隊の存続自体、(あや)うかった。もしそうなれば、陛下が言っていた通り公然とストーキングが始まっていたはず。


それを思うと・・・



「はぁっ…」

「・・・はぁ・・・」


・・・ため息が出ちゃう。


異世界も世知辛いよね・・・






「…そ、それはそうと!」


新年早々パーティー会場でため息をつくと・・・

気持ちを入れ替えるように明るい声で先輩が話し始めた



「ドワーフ王国はどうだったんだい?あそこはここより北だし山沿いだから…寒かったんじゃないのかい?」

「・・・寒くて雪も多かったです。でも・・・温泉もありましたし!それに・・・う!?そうだ!忘れていましたが・・・」


ドワーフ王国こと、エチェンバルレ王国に行った主目的は壊れてしまった発動子を新調する事だったんだけど・・・

折角なので、修行時代にお世話になった人に挨拶に行ったり、観光もしてきたんだよね!

だから・・・



「・・・お土産があります。」

「お、おみやげ!?ボクにかい!?」

「・・・はい!立ち寄った温泉街の近くに現れるスノータイガーというトラの魔物・・・を(かたど)ったぬいぐるみです。お気に召すと良いのですが・・・」


当のスノータイガーは“シン発動子”の試し打ちとして煉獄の劫火に焼かれ、別の物質になった・・・なんて事。先輩に言う必要はないだろう。



「・・・これです!」

「っ!?!?………」


ひと抱えもある大きなぬいぐるみをストレージバッグから取り出してみせると、先輩は瞳孔を『ドクンッ…』と、み開き押し黙った。



「・・・う?」


あれ?

先輩はかわいい物好きだから喜んでくれると思ったんだけど・・・



「・・・お気に召しませんか?」


ドワーフ作のぬいぐるみはフッカフカで肌触りも滑らか。それでいて頑丈で型崩れしないから抱き心地も抜群。もっふもふである。

ぜったい気にいると思ったのに・・・



「ほ…」

「・・・ほ?」


やがて先輩はぬいぐるみをジッと見つめたまま、ワナワナと腕を伸ばし・・・



「ほほほ、ほんとに…こ、こんな良い物を!?」

「・・・は、はい・・・お気に召せば・・・」

「気に召すも何も!!こんなっ…こんなっ!きゃ、きゃわっ///」


ベアトリス先輩は男性の麗人よろしくスレンダーでカッコいい・・・クールな女銃士!といったタイプの女性だ。

そんな先輩がぬいぐるみを前にして



「トラしゃん///」


と言いながら真っ赤になって表情を崩し、腕を伸ばすその姿は・・・



「・・・どうぞ。抱いてあげてください。」

「はうぁ!?…ふ、ふかふか!?もふもふぅー///」

「・・・ベアトリス先輩と出会うために雪山から遥々やってきたのです。」

「あぁぁ///…そうなのね!?ようこそエディステラへ!!」

「・・・名前はどうしましょう?」

「にゃまえ…ユ、ユキたんで!」

「・・・ではユキちゃん。ご主人様の許で幸せに暮らすのよ。」

「あわわわゎわぁ~っ///…よ、よしよしっ!ユキたん、一緒にお家に帰ろうね!!」


これがギャップ萌えというやつか・・・

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