Chapter 024_リハビリ
林檎です。
読者の皆様っ、メリクリです!!
サリエルを巡る戦いの最終話!
少々短いですが・・・お楽しみください!!
「・・・今日はここまでにしよう。」
足を治してもらった数日後。
私のお休みに合わせて我が家に遊びに来たフォニア様は歩行訓練にまで付き合ってくれた。
「・・・夏休みで時間があるから。」なんて言っていた。
やりたいことも、沢山ある筈なのに…
「ま、まだ続けられますわ!」
だから…私のために命まで張ってくれた彼女の前で怠けることなんて出来ない!
そんなこと、出来るはずがない!!
「ぐっ…ほ、ほらっ!」
お父様が急遽取り付けてくれた訓練用の手すりを握る手にグッと力を入れて椅子から立ち上がる!
「・・・無理しないで。」
「え、えへへ…む、無理なんてっ…」
心配そうに見上げる彼女に笑顔を向けて微笑んだ…
「っ!?わきゃっ!」
その時!
「わっ!」
「カ、カトリーヌお嬢様っ!?」
気を抜いた瞬間、腕の力が抜けてしまった私はバランスを失って倒れ…
「・・・っと。」
「っ…」
た。
けど………
「・・・ほら。・・・無理してる。」
背伸びをした彼女に抱きとめられて…
事なきを得た…。
「ご…ごめんなさい…」
「・・・いいから。・・・ソレーヌさん。彼女に椅子を・・・」
「はい。フォニアお嬢様!………さ。カトリーヌお嬢様…」
「…うん………」
………
……
…
・
・・
・・・
「・・・5年間も歩けなかったんだから、スグに歩けないのは当然。無理しないで・・・」
「でも………」
リブラリアには“リハビリ”なんて概念はない。
仮に障害を負ったとしても・・・短期間のうちに高位の治癒術師に診てもらえる機会があれば一瞬で元通りに治しちゃうし、それが無ければ大抵は一生、そのままだからだ。
もちろん。病気の改善と共に良くなったケースもあっただろうけど・・・そういうのは時間をかけて徐々に良くなる物だから、カトリーヌちゃんみたいに、ある日突然、病気だけが治って筋肉や節。骨がそれに追いついていない・・・なんて事。
これまで、誰も経験したことが無い・・・
「・・・いい?カトリーヌちゃんの足は動くようになったけど・・・それは“動かす機能を取り戻した”だけ。・・・11歳の時から一度も動かしていないその両足は、立ち上がるのに必要な力を失っちゃってるし、どうやって歩けば良いのかも忘れちゃってるの。どれくらい力を入れれば立てるのか?どの筋肉を動かせば踏み出すことが出来るのか?ちょっとずつトレーニングを積んで、1つ1つ思い出さないといけないの。・・・分かるよね?」
「…」
「・・・骨も細くなっちゃっているから、焦って転んじゃうと簡単に骨折しちゃうし、無理して動かすと最悪、筋を切っちゃうの。焦りは・・・禁物。」
「でも…フォニア様が治してくださったのに…」
焦る気持ちは分からなくもない。けど・・・
「・・・私のせいでカトリーヌちゃんが無理して怪我したら・・・悲しいよ?」
「っ…」
治した途端、外に出ようとしたエドメ君(ベルナデット様の息子さん)しかり、カトリーヌちゃんしかり・・・治癒魔法に慣れている分、
治った=普通の生活を取り戻した
と。思ってしまうから・・・現実との齟齬に大きなストレスを感じてしまう。
書換魔法は失われた組織を取り戻す奇跡みたいな技だけど、失われた時間を・・・大きな乖離がないように最適化してくれる(例えば、赤ん坊のころに足を失った大人に、この魔法を行使したとしたら・・・“赤ん坊の足が生えてくる”のではなく、“まったく鍛えていない大人の足”が生えてくる)ものの・・・取り戻せるわけじゃない。
書換魔法が発見されたから“こそ”生まれた問題なのだ。
ベルナデット様はじめ、サリエルに習った他の治癒術師さん達もこの魔法を宿すようになれば、同じ問題を抱える患者さんが生まれるに違いない。
だから、その為にも・・・
「・・・いい?生まれたばかりの赤ん坊に、誰も立って歩けなんて言わないでしょ?カトリーヌちゃんの足は今、それと同じなの。・・・赤ん坊がハイハイから、つかまり立ちして・・・1年以上かけて練習して、やっと立ち上がれるのと同じように。時間をかけて少しずつ取り戻すしかないの。」
「…でも……」
「・・・じれったいのも、悔しいのも分かる。でも、焦っちゃ・・・メ。」
「………」
私の言葉をジッと・・・椅子の上で聞いていたカトリーヌちゃんは握り締めた手に、いっそう力を込めて・・・
「…でもっ!」
瞳にいっぱい涙を溜めて・・・
「でもっ…フォニア様に治してもらったのですから、動くにきまってますわ!!なのにっ、動かないのは…わ、私の…私のっ!!」
「・・・ちがう。カトリーヌちゃんせいじゃない!」
「違いませんのっ!だって…だってだってだって!!」
「・・・仕方ないの!ゆっくりやっていくしか・・・」
「ノンビリなんてしてられませんわ!!こんなんじゃ、来月のっ…ら、来年の夏祭りだってっ……ひぐっ…や、やぐそぐがっ…えぐっ…」
たぶん・・・彼女が歩けるようになる日はそう遠くないだろう。
1年は・・・かからないんじゃないかなって・・・思っている。
でも、それは本当に予想でしかなくて。
そんな無責任なこと言えなくて・・・
だから彼女を不安にさせてしまう。
けど、それが理で。
どうすることもできないのは、誰よりも私が一番わかってて・・・
「・・・カトリーヌちゃん!」
だから・・・
「あっ…」
「・・・大丈夫。」
あと、私にできる事は・・・
「フォニア…しゃまぁ…」
彼女の傍で・・・
「・・・ちょっとずつ・・・ゆっくり。一緒に頑張ろう。・・・ね?」
「いっしょ…に?」
「・・・ん。一緒に。」
「でもっ…こ、こんなんじゃ。来年の星月夜祭に…」
「・・・まだ1年もある。」
「でも…」
「・・・無理して骨折しちゃったら、もっと伸びちゃうよ?」
「…」
「・・・さっきは赤ん坊に例えたけど・・・カトリーヌちゃんの足は赤ん坊の足じゃない。筋肉は鍛えてないだけで、ちゃんと年相応の物が付いてる。毎日欠かさず動かせば、スグに力が付く。・・・歩き方だって、ちょっと練習すればすぐに思い出す。だって初めてじゃないもの。」
「…ホントに?」
「・・・もちろん。」
「傍に…いてくれますか?」
「・・・もちろん。」
「ホントに…?」
「・・・約束したでしょ?」
「あの製紙は…ふ、不腐になって…」
「・・・もう一つの約束が果たされてない。」
「は、離れていても…」
「・・・ずっと仲良し。」
彼女を抱きしめて。顔を寄せて・・・
「・・・それに・・・カトリーヌちゃんは果たしてくれないの?」
「まさかっ!?」
「・・・なら・・・まだ、約束の途中。」
「…///」
「・・・離れていても・・・」
「…あ、貴女と共に///」
さて。
今日はイブ・・・という事でっ!!
林檎サンタからお世話になっている読者様へ「お話」のプレゼントです!!
フォニアが汞竜(こうりゅう。と読みます)ヒュドラを宿した時のお話・・・
“Chapter 024.5_汞竜<閑話>”を特別同時投稿させて頂きましたっ!!
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