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Chapter 020_理の堕天使サリエル

対サリエル戦 着想は:


ベートーヴェン作曲

「ピアノソナタ月光 第3楽章」

「・・・すー『(よこしま)な願い 手足捕らえし (やどりぎ)の枝 原始の森を()う』アイビー!」


あの鎌がある以上、迂闊には近付けない。

そう思って最初に唱えたのは鞭魔法(アイビー)!もちろん、カーボンナノチューブを結って作った特別製!!



「それっ!!」


天使の骨がどれほど硬いか知らないけど・・・粉々にしてやるっ!!



「おぉっと!」

『ドゴォォォ―ン!!』


爆発音と共に教会の床を粉砕した左手の鞭はしかし、直前で翼を拡げ空に舞った天使に避けられてしまった・・・

ならっ!



「っと!・・・それっ!!」


空中にピンと張った鞭を足場に跳び上がった私は、再び天使に鞭を振るう!



「おうっとっ!?」

『パシィィーンッ!』


けれどその一撃は、消えるように・・・いや。一瞬にして消えた天使に避けられ



「いや。危ない危ない…」


次の瞬間、天使は余裕の表情でステンドグラスを背に、翼をはためかせてゆっくりと降りてきた・・・



「・・・むう。」


今の動き・・・そうか。

翼で飛翔できるだけじゃなくて瞬間移動まで!?



「ふふふ…凄いね治癒術師君!あの参道(さんどう)を越えて来るくらいだから大した奴だろうとは思っていたが…君。本当に治癒術師かい?戦い慣れ、し過ぎだろう?」


厄介だなぁ・・・

でもっ!!



「・・・おあいにく・・・様っ!!」


その瞬間。左手の鞭から・・・手を離す!!



「えっ!?」


先程まで主力武器にしていた鞭を手放したため天使は驚きの声を上げた。

・・・んふふふっ。

そんな隙を見せて・・・いいのかなっ!?



『パシィーンン!!』


次の瞬間!

私の手を離れた鞭は天使に向かって蔓を伸ばし、襲いかかった!!



「がっ!?」


強烈な打撃を受けた天使はその衝撃で吹き飛ばされる!!

鞭魔法は術者が手で操作して攻撃をする魔法だけど、“術者の求めに応じて補助的に動いてくれる”という便利機能が付いている!!

だからそれを利用して、手を離す直前に「手を離した後、真下から這い上がって天使を攻撃して!」と命令しておいたのだ!!



「えいっ!」


さらに!



「やーっ!!!」


天使を攻撃した反動で跳ね返ってきた鞭を手に取り、追撃を放つ!!



『パシィーンッッ!!』


けど、その攻撃は再び・・・


「…っ!」

「むっ・・・」


鞭が到達する直前に瞬間移動した天使によって避けられてしまう。

しかも・・・



「よっ!」


右手に持つ巨大な鎌を振るい、鞭の枝を・・・切断した!?



「あっ・・・」


断ち切られた鞭は・・・その蔓は・・・その瞬間。まるで枯れてしまったたかのようにクタっと(しお)れ、私の手からこぼれ落ちた・・・

今の感じ・・・【即死】の特殊効果が適用されたに違いない。


鞭魔法・・・いや。

木魔法は“生きている”・・・か。


実は、木魔法は“召喚魔法なのではないか?”と言われている。

そう考えられる理由はいろいろ有るけど、大きな理由は・・・一部の例外を除いて

①発現すると地面から現れ、解除すると地面に還っていく

②発現中は地面とオンラインになっており

③発現中もリアルタイムで術者のイマジネーションを反映する

という点が挙げられる。


・・・もっとも、いま大事なのは“木魔法が召喚魔法か?”という点では無く“魔法にも即死効果が適用される”という点だ。

明確に生き物じゃない魔法・・・例えば、火球魔法とか・・・はともかく、生き物の形を取る(例えばヒュドラ・・・)魔法は封じられたも同然。

これじゃ、迂闊なことは出来ない・・・



「・・・」



取り敢えずヒュドラには「来ちゃダメー」と心の中で伝える。

どこかに隠せないかなぁ・・・



『ルル…』


・・・って!?



「ひゃっ///」


や、やぁんっ///

変なトコ潜り込んじゃダメでしょ!?


『ルル…』じゃないっ!



「うん?…そらっ!考える暇なんかないぞ治癒術師君!」

「くっ・・・///」


も、もぉっ!

・・・こちらの都合などお構いなしに突っ込んできた天使の攻撃を慌てて避ける!

翼と瞬間移動で抜群の機動力を持つ天使だけど・・・幸い。その鎌は巨大で大振りだから、入り口からずっと効果が残っている追風魔法に魔纏術(まてんじゅつ)を加えれば、見てから避ける事ができる。

けど・・・



「ふふ…いつまで逃げていられるかな?」

「・・・」


ずっと、このレスポンスを保っていられる訳じゃない。

時間をかければそれだけ不利になる一方だ。



「せいっ!」

「・・・っ!」


何とかしないと・・・よしっ!



「・・・『大地の願い』」

「むっ?…それっ!!」

「っ!!・・・て、『天より降りて ()を地とす』」

「…よっ!!」

「ひゃっ!・・・『いのち(とこ)とす天槌(あまつち)なして』」

「一体何をする気だ!?…ぜりゃ!!」

「っ!?・・・っと!」


よ・・・よし!

こっちの思惑には気付いていない・・・というか、治癒術の殿堂に居るだけあって・・・多分。何の魔法か気付いていないな!?

ならっ!!



「『北の森を往く』エアハンマー!!」


風属性 第5階位 風塊魔法(エアハンマー)!!



「な、なにをっ…」

「堕ちろっ!!」

『ドゴォォォ――ンッ!!』「がっ!!」

「ハンマーハンマーハンマーハンマー!!・・・おっちろー!!!」

『ドドドグォォォぉ―――ンッッ…』

「ぐっ、ガハッ!」


空気の塊を打ち据える・・・この風塊魔法(エアハンマー)という魔法は、ちょっと特殊な魔法だ。



「ハンマーハンマーハンマーハンマーハンマー・・・堕ちろっ!!」

『ドドドドォォォーーーーーンッッ…!!』

「っ、ぐえっ!!」


棘魔法のようにキー(呪文のうち【魔法名】の部分。・・・なんで「エア」の部分を言わなくていいのか?は、魔導界で長年の謎とされている)を唱えて連射することが出来るけど、



「ハンマーハンマーハンマー・・・堕ちろっ!!」

『ドドグォォォーーンッッ…!!』

「ぐっ…こ、こんのぉ!!」


「堕ちろ!!」

『ドグォォーン!!』

「がっ!?」


風矢魔法のように生み出した空気の塊を装填してその場に留め、「堕ちろ!」の言葉で打ち据える事ができるのだ!



「ハンマーハンマーハンマーハンマーハンマー・・・堕ちろっ!!」

『ドドグォォォーーンッッ…!!』

「グハッッ!?」


二度手間で面倒・・・なのは事実だけど、今回の天使のように“機動力があっても攻撃時は大振りで大きな隙ができる”相手になら、抜群に使いやすい!!



「ハンマーハンマーハンマーハンマハンマーハンマーハンマーハンマーハンマー・・・」


このまま押し切れるかな・・・とも思ったけど。



「えぇいっ!」

「ハンマーハン・・・きゃっ!?」


そこまで甘くは無かった・・・



「はぁ、はぁ~…や、やってくれるな治癒術師君っ。」


横隔膜が無いのに肩で息をする天使は瞬間移動で私の後ろに飛んで、大きな鎌を斜め下から掬い上げるように攻撃してきた



「ぐぅ・・・」

「ふふっ…危なかったね。…お互いに」


予め抜いておいた短剣で受け、後ろに跳んで衝撃も殺したけど・・・風塊魔法への意識は切れてしまった。

「ハンマー」の連射はここまで、か・・・

でも!



「・・・危ないのはそっち!」

「?」

「・・・堕ちろ!」「なっ!?」

『ドグォォーーーンッ!!』「ガハッ!?」


連射は止まったけど・・・



「くっ…ま、魔法は終わりじゃ…」

「・・・空気って・・・堕ちろ!」

『ドドグォォォ―――ンンッッ!!』「ぐをっ!?」

「・・・ほら。見えないでしょ!?でも、そこに在るのよ・・・命みたいに!・・・堕ちろぉ!!」

『ドグォォーーーンン!!』「ガッ!!」


装填済みの空気の塊が点在する聖堂。

何処にも・・・



「堕ちろ!!」

『ドグォォーーーンッ!!』


逃げ場なんて無いぞ!!

でも、まだ終わりじゃない!!



「すー『リブラリアの理第5原理 綴られし定理を今ここに 坑よ口を開け 頭上に地を 足元に天を 深淵なる地の腑で 糧となせ 喰べろ』グラウンドイーター!!」

『パチィンッ!!』


指パッチンの合図で唱えたのは・・・

エヴァーナで、陛下が唱えたあの魔法!!


『ダァァーンンッッ!!?』

「んなぁ!?な、何だこの…は、柱っ!?」

「堕ちろっ!」

『ドグォォーーーンッ!!』

「がはっ!?」

「喰べろォォーーー!!」


お借りしますっ!!



『ガブァン!!』

「ぐっ…こ、このっ!」


大地の鋭い牙に串刺しにされた天使だけど、翼を広げ移動しようとした!?

でも・・・



「させないっ!・・・堕ちろっ!!」

『ドグォォーン!!』

「ぐがっ!?!」


空気の槌はついに・・・やっと!


『バッ…ギィィンッ!!!』

「ぐ、ぐあっ!?」


銀の翼をへし折り!

そして・・・



『ズッ…ズズズズズッッ…』

「くっ…がぁっ?!」


天使を・・・翼を・・・鎌を・・・もろともに!



『ズガガガガッッ!!!!』

「がっ…お、オノレェェ!!!」

『ボギィンッ!!』「ぐっ…」


深淵なる大地の空へ・・・



『ガブォォォン!!』

『バギィンッ!!』「ッッ!!」


還した・・・
















『ザァァァァーーーーーーッ』


喰魔法(グラウンドイーター)が聖堂の床を元通りに(なら)し・・・再び。

聖堂は滝の音だけが支配する静謐(せいひつ)な空間へと戻った・・・



「・・・・・・っはぁっ、はぁ、はぁ・・・ん、はぁ~・・・」


呼吸を忘れていた私は・・・荒く息を吐いて



「・・・んっ・・・ん!」


喰魔法の為に地面に突いていた手と膝を持ち上げて・・・



『ザァァァァーーーーーーッ』


「・・・はぁ~・・・」


き、緊張・・・したぁ・・・

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