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Chapter 018_ダンジョン【カタコンベ】-第3層-

「・・・くー・・・すー・・・」

『…』

『シュルル…』


・・・

・・






「・・・・・・う?」


目を・・・覚ますとそこには、全く見覚えの無い灰色の天井が・・・



『…!』

『ルルルッ…!』

「・・・う!?」


微睡んでいたのは数秒。



「・・・ふゎあぁ〜・・・おはよ。蝶さん。ヒュドラ。」

『『!!』』

『ブシュルルゥッ!!』


炎舞蝶に温めてもらいながら、ヒュドラのたおやかなウォーターベッドで“ひと休み”した私は、見守ってくれていた精霊たちに「おはよう」を告げ「んーーー」っと、背伸びをしてから地面へ降りて、

そして・・・



「・・・ごはんごはん。」


腹ごしらえの支度をはじめた。



『ルルッ…』

「・・・う?いいの?・・・んふふっ。ありがと!」

『シュルゥ…』


「使え」と言わんばかりに差し出されたヒュドラの尻尾に腰掛け、首の1本をテーブルにして



「・・・いただきまーす!・・・ハフハフッ・・・もにもにもに・・・」


ストレージバッグから取り出した、まだ温かい大盛りグラタンをハフハフもにもにと食べ始めた。



「・・・もにもにもに・・・」


この子・・・ヒュドラは。

師匠と一緒にドワーフ王国に行った折、倒して宿した召喚獣だ。


見た目は1つの胴体から5つの首が伸びた蛇の姿。

その体は液体金属である【水銀】からできており、銀光沢があって“タプンッ”とている。

密度が高くて重いから、さっきみたいに敵の攻撃を受け止めることが出来る。もちろん武器にもなる。

首の数は変えられるし・・・そもそも液体だから全部切り落とされても瞬時にくっついてなんとも無い。


燃やされると気化して猛毒。気化した状態で動くことも、元の姿に戻ることも可能。もちろん、私には無害。

普段は指輪に擬態して指に絡まっているけど・・・ピンチになると、さっきみたいに飛び出して守ってくれる。


・・・え?高性能すぎるって?

そうでしょそうでしょっ!自慢の魔法の1つなの!!






「・・・もにもにもに・・・」

『『…』』


もう一つの自慢の魔法・・・ヒュドラの頭に止まり人肌に温めつつ、周囲を警戒してくれている。蝶達・・・あんなに沢山召喚したのに、残り2頭となってしまった。

炎舞蝶は【精霊】という種族だから、たとえ自爆してもそれで死ぬわけじゃない。リブラリアに点在するという、彼等の住処に戻っただけだ。

でも、たとえ、そうだとしても・・・



「・・・蝶さん達。ありがとう。もう少し・・・よろしくね。」


そう言わずにはいられない。

迷路を攻略できたのも、“ガイコツ戦隊スケルトンズ”を倒す事が出来たのも、ダンジョンの中で安心してお昼寝できたのも・・・この子達のお陰だ。



『…?』『…!!』


「・・・んふふっ。」


突然感謝を伝えられて驚いたのか・・・一瞬逡巡(しゅんじゅん)した蝶達は、それでもすぐに私の傍にひらりと飛んで来て、指の周りを回ったりフォークにとまったりした。



『シュルゥッ…』

「・・・んふふふっ。ヒュドラも。・・・お願いね」

『シャァァァァッッ!!』


あと少し・・・残り半分。がんばろう!


・・・

・・






『ガシャァンッ!!』


青銅製の2つ目の扉に鍵を差し込み、回して

扉を押すと・・・


『ズズッ…ズズズズズ…』


と、重い音はしたものの。

第2の扉ほどの力を加える必要も無く、大きな扉はゆっくりと開いた・・・



『『………』』


漆黒の闇が支配する未知の空間に入っていく蝶達。



「・・・」


鬼火にその後を追わせ、出力を上げて明るくする・・・と
















「・・・なに・・・ここ?」


そこには・・・下に向けてどこまでも続く、暗い縦穴が空いていた・・・



『…』『…!!』

「・・・う?」


どうしろというのか・・・?と思っていると、蝶達が何かを伝えようとしている事に気付く。



「・・・なにか・・・」


あるの?

ヒラヒラと舞う蝶達の向かう先に顔を向けると・・・



「・・・」


巨大な円筒形の縦穴の内側面(うちそくめん)に、杭を突き刺す様にして作られた螺旋階段があり・・・下へと続いていた。



「・・・・・・・・・はぁ。」


行けばいいんでしょ。行けば・・・


下に誰かいたら見えちゃうからヤだなぁ・・・なんて思いながら最初の階段に、足を・・・



『トッ…』


掛けると



『ガアァァァ―――ンッ!!』

「ひゃっ!?」


突然響き渡る、鐘の音にも似た轟音。

階段の上でなんとか踏ん張り、慌てて振り返えると・・・



「・・・扉が!?」


入ってきた扉が勝手に閉じられたようだ!



『『!?!?』』

「・・・蝶さん!!ガスパール!?」


扉の衝撃で蝶は飛ばされ、壁にぶつかり堕ちてしまう。

鬼火の火の勢いも弱まり、辺りは闇に閉ざされた。

そして・・・



『ポッ…ポッ…』


「っ!」


真っ暗な空間に生れる・・・灯



「マズいっ!」


そう思う間もなく



『ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポppppppppppppppp…』


数えきれない程の小さな光点が視界を埋め尽くした!!


あの光は【ウィルオウィスプ】という魔物・・・精霊の放つ光。所謂鬼火・ヒトダマだ!

“火”そのもので出来ているウィルオウィスプは水を掛ければ簡単に退治することができる。1体1体は決して強い魔物じゃない。

けど、これほどの数・・・普通の方法じゃ、とても対処できない。



「・・・っ・・・ありがと!ごめんね。」


ここまで頑張ってくれた私の鬼火と蝶に感謝と謝罪の言葉を述べて魔力を断ち。そして・・・



「すー『噴水よ そなたは命の泉 余りある生の飛沫(しぶき)上げ 大地に実りを 高らかに』スプラッシュ!!」


水属性第5階位の噴水魔法(スプラッシュ)を行使!!


闇の支配する穴の・・・天井に!!

浮かび上がった青い魔法印に紋様が追加されると、すぐに!



『ドババババババアアァァァァッッ…!!!』


滝のような水が降りそそぐ!!



「あうぅ・・・」


当然、私も豪雨に打たれる・・・


アラクネの繭糸で作られた帽子と魔女服。そして纏風魔法(ウェアー)のバリアのお陰で体はほとんど濡れないけど・・・

髪も、袖口も靴も濡れてしまって気持ちワルいぃ・・・

服越しに伝わる雨の衝撃で歩く事もできない。


けど、その甲斐あって・・・



『シュ…ジ…』


ウィルオウィスプはみるみる数を減らし、再び縦穴は闇に閉ざされた。



「・・・えっと。たぶん・・・」


ウィルオウィスプがほぼ居なくなったのを確認してから、水の勢いを霧雨レベルまで弱めてストレージバッグを漁り・・・



「・・・あった。さすがローズさん。」


愛する薔薇ちゃんの、準備の良さに感動しながら



「・・・テュリプ・・・スイッチONっ!・・・っと。」


マイスター嘘様と私の合作【テュリプ(チューリップ型の懐中電灯)】の明りを灯す。



「・・・」


テュリプを手に、辺りを見回す。

ウィルオウィスプは・・・



「・・・ん。」


ほぼ全滅させたし、新しく現れてもすぐに消火出来ている。

もう心配ないだろう。



「・・・あとは・・・」


前に進むだけ・・・


この荒っぽい造りの螺旋階段は、段差が大きいし隙間もある。さらに今は濡れていて危険だけど・・・ま。慎重に下りれば何とかなるだろう。



「・・・はぁ・・・」


再び溜息をついてから・・・



『トッ…』


「・・・」


『トッ、トッ…』


テュリプが放つ光を頼りに、闇に(けぶ)る深淵を目指した・・・



・・・

・・
















『ピチョン…』


階段を降ること・・・3時間。



「・・・」


穴はまだまだ下へ続いているけれど・・・階段には終わりがあった。



『トンッ…』


最後の一段の先は穴をグルッと取り囲む(ヘリ)になっており、中心に飛び込む以外、道が無かったのだ。



「・・・」


遥か上空から降る雨の音と、階段に着いた雫が落ちる音。それと、水を含んだ私の足音以外、物音1つ聞こえない闇の世界・・・



「・・・う?」


円を描く通路を・・・半分も歩いていない所で、

ふと気付いた。



「・・・壁が・・・赤い?」


石を敷き詰めたような壁が続いていたのに・・・そこから先だけ赤黒くなっていたのだ。

試しに触ってみると、ペリっと剥がれ、指にはザラザラが残り・・・



「・・・これは・・・鉄?」


表面が赤錆に覆われた巨大な鉄の板・・・壁?が。そこにはあった。

テュリプを向けてじっくり見ると・・・



「・・・第4の・・・門。」


壁・・・と思っていたそこは、円弧状の巨大な門だった。

よく見れば赤錆に覆われた表面に彫刻が彫られている。



「・・・」


門の中央まで移動して、テュリプの光を拡散モードに変えて、見ると・・・



「・・・・・・はぁ・・・」


思わずため息。


その門に彫られていたのは・・・



右手に巨大な鎌を持ち

左手で分厚い本を抱く

翼を生やした骸骨の姿・・・



「・・・最後は死神・・・か。」

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