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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
1st Theory
11/476

Chapter 011_憧れの冒険者

「も、もう!いい加減にしてくださいよぉ!くださいよぉ!!」

「ふ、2人ともぉ…!」


「ほいぃ!えっと…アランジェヴィ?の…」

「あ…は、はい!ペチュカです。…ほ、ほらっ。アリョーシャ君もポタ君も!…2人も!!私達呼ばれたよ!!」


待つこと数分。

パーティーの名が呼ばれたのは、再びからかい始めたアリョーシャ君にポタ君がいよいよ怒り始めた時だった…


「はいはい。ペチュカちゃん。あと、エリザヴェータちゃん。アレクセイ君。ポタ君…で、最後はヴァルラム君…さん…だね?」

「…あぁ。」

「冒険者パーティー:アランジェヴィ…登録完了だよ!新人冒険者諸君、ようこそルボワへ!!」

「「「はいっ!!」」」「おうっ!」「あぁ…」


名前を呼ばれた私達は興奮して大きな声でそう答えた。

ついにっ!ついに、ついに!!!

私達5人は夢にまで見たはじまりの街で、夢にまで見た冒険者になった!


そう思うともう、もうもうっ!!嬉しくって!!



「ははっ…君たちの活躍を期待しているよ。…それじゃあ、えぇと…冒険者登録は王都でしたみたいだから、基本的な説明は省略するよ。でも、このギルドには独自の大事なルールがあるんだ。それについて説明するぞ。…いいかい?初級ダンジョンルボワの森は…」


嬉しくて…



『ここの魔物は基本的に…』

「やった!ついにやったな!」

「いやっほー!」

「やりましたね!やりましたねぇ!」


『ダンジョンの階層は…』

「お前ら…まだ何もやってないだろう?」

「そうよ!私達はまだ、スタートラインに立ったばかりよ!」


ついつい…



「…おーい、新人!説明中だぞー!」

「「「「はーい!」」」」


デュランさんの説明を…



「まず何の依頼を受ける!?」

「そりゃぁー討伐依頼でしょ!マモノ、コロス!」

『注意して貰いたいんだが…』

「怖い!リーザちゃん怖いよ!」

「無難に採集依頼だろう?」

『…には手を出すなよ…』

「えぇ~…ヴァル兄の臆病者。私も討伐がいいなぁ…」


「おーい!ホントに大丈夫か?」

「「「「大丈夫でーす!!」」」」


誰一人、聞いていなかった………


………

……






「はぁ~…。こいつら全然聞いてねぇでやんの。ま、周りも騒がしいし…初日だしな。仕方ない。…ほらお前ら!次来た時にもう一回説明してやるから、今日はもう帰れ!」

「「「「はーい!」」」」


見かねたデュランさんはため息交じりにそう言うと、私達を開放してくれた。

ノイズが消えたのを良い事に、話はさらに盛り上がり…



「じゃあ…せめてプルーナッツ(木の実型の劣級(れっきゅう)魔物。地面に落ちるとピョンと飛び跳ねて攻撃してくるけど、動きは鈍いので良く見ていれば避けられる。倒して皮をはぎ、焙煎すると香ばしいおやつになる。プルーナッツには目も鼻も耳も無いのに、敵を見つけられるなんて凄いよね…)30体の捕獲と採集!せめて!」

「え~っ!?…プルーナッツじゃ剣使えないじゃんか。ここは順当に、ツリーカプラ(木の幹の様な角を持つ、森にすむ山羊(やぎ)型の下級魔物。単独か、せいぜい家族単位でしか行動しない。比較的おとなしいけど、怒ると角を振りかぶりながら突進してきて危険。適正ランクは4級からなので私達にはまだ早いような…)の討伐を…」

「どっちも4級クエストじゃないですか!?無理だから!無理だから!…なんで2人はそんなに血気盛んなんですかっ!?ですかっ!?!?」

「う~ん…そもそも5級じゃ討伐クエストはほとんど無し…か…」

「…アーバンラット(ネズミ型の劣級魔物。臆病で弱いけどすばしっこい。穀物を荒らすので何処へ行っても嫌われている。)討伐があるじゃないk「むうっ…」…ペチカ。なんだその目は?」

「…ヴァル兄。私がネズミ大嫌いって…知ってるよね?」

「あ…」

「サイッテ―!!」

「す、すまん!」

「「「あ~ぁ~…」」」


「ほらっ。おしゃべりは向こうでやれ!…邪魔だぞ?お前ら!」


「お前らもう終わりだろう!?」

「早く退けよ!」


期待に胸を膨らませて話し合う私たちを、デュランさんと後ろ並んでいた冒険者たちが注意した…その時だった。






「・・・う?あ・・・こんばんは。アルフレッドさん。ドローテさん。私も元気。・・・んふふっ。今日も仲良しだね。」


それは小さな声だった。

ギルドに入ってきた小さな女の子が、すぐそばのテーブルでエールを楽しんでいた男女のペアに声をかけられ、挨拶を返した…それだけだった。



「えっ…フォニアちゃん!?」

「あっ!フォニアちゃんだ!!」

「なにっ!?」

「こんばんはフォニアちゃん!!」


けれどその声はギルドに響き渡り、一瞬で全員の視線を…会話を…心を奪った。

それはまさに、魔法のひと唱えだった…



「・・・う?・・・みなさん。こんばんは。ご機嫌麗しゅうございますか?」


周囲の声と視線に気付いた彼女が小さくカーテシーをすると…



「「「「「うぉぉぉーーー!!!」」」」」


歓声が鳴り、そこかしこから…



「きゃーきゃー!挨拶してくれたー!…こんばんはぁ!フォニアちゃん!」

「おうっ!元気だぜェ!」

「バッチリだ!」

「こんな時間に珍しいねぇ!?どうしたんだい?」

「フォニアちゃんこそ、ご機嫌ようございますか!?」


彼女の来訪を祝う言葉が上がった。



「え?…なに?なになに!?」

「あの子…何者?」


困惑する私達をよそに



「こ、こんな時間に会えるなんて…ついてる!」

「今日は逢えないと思ってたのに!?やったやった!!あぁ…私にも声をかけてくれないかなぁ…「・・・アルメルさん。」…って呼ばれたい!きゃー///」

「よーし、今日はイケる!…おいお前ら!これから狩りに行けばいい成果になると思わないか?な?」

「「「「それは止めとけ!!」」」」


冒険者たちは沸きに沸いていた。

しかも、彼等の声には、ただ可愛い女の子に会えて嬉しいというだけではない…憧れの色が…含まれている…?



「あ~…すまん。ちょっといいか?」

「もちろん!…早く行ってやってくれ。」

「もうすぐ夜だもんなぁ…」


カウンターにいたデュランさんは…呼ばれた訳でもないのに…順番待ちをしていた冒険者に一声かけて、あの子のもとへ急いだ。どうしてそこまで…?


それに…早く行ってやれ?もうすぐ夜?

私達には荒っぽく「退け!」と言った冒険者たちなのに。随分態度が違うなぁ…



「・・・こんばんはデュランさん。えっと・・・」

「こんばんはフォニアちゃん。何か用があるんだろう?ここで聞くよ。」


デュランさんに挨拶をした彼女は冒険者が並ぶ受付を見て



「・・・そうだけど。でも・・・」


躊躇いの言葉を口にした。

割り込みをしてしまうことに抵抗があるのだろう。けれど…



「あはは…オレ達の事は気にしないで。先に済ませてくれ!」

「オレ達のは…失敗…の。報告だしな…」

「・・・ご、ごめんね。ありがと。」


苦笑いしながら順番を譲った2人の冒険者に頭を下げたその子供は、再びデュランさんに向き直り



「・・・・・を・・・」


ここからでは聞き取れないほどの小声で話し始めた。

あんな小さな子供がギルドに何をしに?それ以前に、どうしてこんなにも冒険者たちに思われているの?

その横顔を見ながら、そんな事を考え始めたのだけど…



「…っな、なんだってぇ!?」


私の思考はデュランさんの驚きの声でかき消されてしまった。



「「「な、なんだ!?」」」

「おい、どうしたデュランさん!」

「なになに!?フォニアちゃんがまた何かやったの!?」

「今度はいったいなにを…」

「言えっ!言えぇぇ!白状しろデュラン!!」

「ギルド員だからって…抜け駆けはズルいぞ!?」


「・・・ここじゃ・・・」

「よ、よし!外で見よう!…エドモンさーん!来て下さーい!!フォニアちゃんがまた大物仕留めたってー」

「「「「「なんだってぇ!」」」」」


さらに続いたデュランさんの言葉でギルドはパニック状態。そこかしこから…



「おい、聞いたか!」

「大物っ!?見たいっ!!」

「今度は何だぁ!ジャイアントグールー(グール―という飛べない鳥のボス的存在となる、飛べない鳥型の大きな中級魔物。とても足が速い。森のダンジョンにはいない筈じゃ…?)か?」

「プルーツリー(プルーナッツを生み出す木型の劣級魔物。成長が早く大きいけど、プルーツリー自体は動けないし…おいしいナッツを生み出す以外、普通の木と変わらないから放置されることが多い。栽培している農家もいる。)でもたたっ切って来たんじゃねーか?」


といった、まことしやかな話が聞こえる。

みんな…混乱している?



「よし行こう!!」

「・・・ん。」

「おっし、お前ら行くぞ!」「「へい!親方」」


デュランさんと共にその子が外へ向かうと、片手を着いてカウンターを華麗に跳び越えたガタイの良いお爺様…たぶん。デュランさんが呼んだエドモンさん…が2人の筋骨隆々のマッチョ様を引きつれて走っていった。さらに…



「オレ達も行くぞ!」

「「「「もちっ!」」」」

「見る―!フォニアちゃんの獲物、みーたーいー!!」

「「「私達も行くわよ!!」」」

「オレも!」

「当然わしも…」

「わ、私も…」

「おい。どうする?」

「呑気に並んでる場合じゃ…ないよな?行くぞっ!」

「うぃ!」


ギルドに溢れるほど居た冒険者は、一斉に外へと走り出した。



「「「「「…」」」」」


ガラーン…としたギルドに残っているのは私達パーティーとカウンターの向こうで淡々と書類を書いているギルド員1人だけ…



「オ、オレ達も…行くか?」

「そう…ね…」

「こ、ここにいても仕方ありませんしねぇ…ですしねぇ…」

「…うん。」

「行くか…」


ギルドに入った時から書類に向かい続けているギルド員…見た目にそぐわぬ事務作業をしている逞しいオジサマ…を横目に、私達も外へ向かったのだった…

林檎です。


1st Theory に関して。

投稿の目途が立ちましたので、今日から 1日2話 のペースでアップしていきたいと思います。


頑張ります!


「次へ>>」を押してくれると嬉しいです!


応援してくれるともっと嬉しいです!!

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