Chapter 015_ダンジョン【カタコンベ】-第1層-
林檎です。
きゃぁぁ~っ!!
大失敗です!!呪文を誤植しておりました!
修正させていただきます!!
大変ご迷惑おかけしましたっ(21/12/13 21:00)
ベルナデット様によると、
過去に、1つ目の扉を開けっ放しにしたら中からアンデッドが出てきたことがあったらしい。その時は王都にアンデッドが徘徊し、国王軍の精鋭部隊・近衛騎士団すら出払う事態となり、綴られる程の大事件になったとか・・・
それ以来、1つ目の扉は「開けたら閉める!」が鉄則になった。
異世界のゲームなら・・・ほら。そういう所は見えない壁があったり、敵が急に帰っていったり、リスポン位置にワープしたりするじゃない?リブラリアはそうじゃない。そういう所リアルみたい。
どうして?と私に聞かれても困るけど・・・むしろ私に言わせれば、ゲームの方が「どうして?」って感じだから何とも言えない。
・・・とりあえず、メタ発言はこれくらいにして・・・本題。
「・・・」
応援してくれるみんなの顔を惜しみつつ扉を閉めた私は
「・・・ふぅっ。」
息を一つ。そして、
「・・・ん!」
先手必勝!唱えます!!
「『耕せ』レクラメーション!」
土属性第1階位 開墾魔法は土を耕す魔法だ。
副次効果として畝を作る事も可能。
『ガゴォン!』
と、音を立てて。
私の背を超える大きな畝が・・・横道が連なる幅5mほどの石畳の通路の両脇に生み出された!
『ガラガラガラガラァァ………』
現れた畝はそのまま・・・闇の彼方へ真直ぐ続く通路の先まで。
綺麗に敷き詰められた石畳を崩しながら伸びていく!
「・・・ふぅ。」
・・・うん。
今の感じだと・・・距離は500mも無いだろう。これなら十分、全速力で走り抜けられる!
「・・・すー『鳥の願い 翼に孕みて 影の森を往く』アシスト!」
追風魔法も準備オッケー!!
「・・・いくぞ!」
全速力で、闇に向かって走る!走る!!
「・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」
1つ目の門の先・・・このダンジョンで唯一ヒントがあるこの場所にはアンデッド・・・所謂ゾンビが沢山いるらしい。ベルナデット様によると、ゾンビは最初、目の前の通路上にはおらず時間と共に横路から出てくるというのだ。
ならっ!
『ェ…』
『アァァ…』
ゾンビが出てくるという横道を畝の小山で塞いでしまえばいい!
それがさっきの、開墾魔法の目的だ!
『ガァァ…』
『ゲッ…グェッ…』
「・・・きもきも・・・」
キモイ声が両脇から聞こえてくるけど・・・作戦が功を奏したようで進む道にゾンビの姿はない。
一応、念には念を入れて畝の向こう側の地面をフッカフカに耕しておいたから、足をとられてなかなか前に進めないはず。
効果の程を確認する術は、ないけどね・・・
『グッ…ェェエッ…』
『グガァァー』
「・・・」
扉を開ける前に唱えて、少し前を行かせている鬼火魔法の灯りで視界は良好。
カタコンベ下層の通路はひたすらに真直ぐ続く1本道(本当は両脇に横道があるんだけど・・・)。
石畳を蹴ると、発がん性がありそうな灰色の埃が『フワッ』っと音も無く舞い上がる。私の体には纏風魔法のバリアーが張られているから吸い込むことはないけど・・・これが理由で病気になりそう。
それって・・・堕天使的にはアリなのだろうか?
逢ったら問いただしてやりたい。「掃除くらいしろ」と言ってやりたい。
「・・・ふー・・・着いた!」
そうこうしているうちに無事に2つ目の扉に辿り着いた。
1つ目の扉・・・みんなと別れた、ダンジョンの入り口になっている扉は天然の岩を人ひとり分だけ、そのまま切り取ったような場所に鍵穴が付いていただけだったけど・・・2つ目の扉は石造りの、見上げるほど大きくて、そして重そうな扉だった。
『ガァァー!』
『ゴエェェー!!』
『アァア゛ア゛ア゛ァァァ…』
って!
のんびりエクステリアのチェックなんてしている場合じゃない!
「・・・は、早く出よう!」
背面から聞こえる呻き声と、畝を登ろうとしているのか・・・土が崩れる不気味な音をサラウンドで聞きながら、ベルナデット様から預かった鍵束を取り出す!
「・・・えと。1つ目の扉がこれだったから・・・これかな!?・・・ち、ちがう・・・こっち?」
鍵は全部で4本。それぞれ柄の部分に特徴的な装飾が施されている。
1つ目は違ったみたいだけど、2つ目の鍵を刺し込んだところ・・・
『ガッ…ゴンォッ!!』
と、大きくて重い音を立てて鍵が回った!
「・・・やた!」
ここから先は未知の領域。心してかからないと!
そう思って、扉を押す・・・
「・・・う!?」
押すぅぅ・・・
「・・・ぐ・・・ぐぐぐ・・・お・・・おも」
この扉・・・重ぉぉぉっっ!!
「ぐっ・・・ぐぐっ・・・」
『ズ…ッ゛…』
ちょ・・・ちょっ・・・と、ず・・・つ・・・
押せては・・・いるっ・・・けどっ・・・まだっ
「ぐぅ・・・くうっ・・・って!」
その時だ!
『ガァァ…!!』
『ゴゲェエェー!!』
「・・・うっ!?」
クリアに聞こえたその声に驚いた私は、慌てて振り返る。
すると・・・
『ア゛ア゛ァァァ…』
『ゲゲッ…ゴッ゛…』
ゆっくりと・・・しかし確実に。こちらに迫るアンデッドの姿が闇の彼方に浮かび上がった!!
「う、うそっ!?・・・もうっ!?」
まずい・・・どこかの畝が突破された?
ゾンビたちが折り重なれば、いつか越えられてしまうと思っていたけど・・・こんなに早いなんて!?
「・・・くぅっ!!」
急いで向こう側に抜けなきゃ!!
「・・・くっ・・・うぅっ・・・」
ま、魔纏術を使ってもっ・・・わ、私が小さくて軽いせい・・・で。な、なかな・・・かはっ!はぁ・・・と、扉を・・・押し・・・おしェ~・・・にゃいっ!
『ガッ…ゲェェェ!!』
このままじゃ・・・
「・・・はぁ、はぁ・・・」
このままじゃ間に合わない!?
「・・・すー、はぁ~」
・・・なら!!
「ん!『萬世揺るがす力を帯びし 大地が生みし永久の輝よ 今こそその威を示す時 今こそその名を印す時 大地轟く鉄鎚を下せ 大気揺るがす晩鐘を鳴らせ 衝け』ゴールデンストライカー!」
金属性第7階位 金鎚魔法!
「てりゃぁぁーーー!!」
右手の小指に嵌めている金の指輪を魔法核に。生み出された巨大ハンマーを横薙ぎに。石造りの扉に打ち付ける!!
え!?スマートじゃないって!?
そ、そんな事言ってる場合じゃないでしょーーー!!
『ドゴォォッッンッッ!!』
金鎚魔法で生み出したハンマーは術者の力を何倍にも増幅してくれる特殊な効果が付いている。
だから、体重ゴニョゴニョkgしかない私でも、何トンもあるハンマーを指の間でペンを回す様に振るう事ができるのだ!
因みに、その重量は2t!
私の体重を足してもやっぱり2t!
さ、サバなんか読んでないよ!ただ・・・す、数字を“丸めた”だけなんだからね!
「・・・う!?うっそぉ・・・」
ハンマーの直撃を受けた石造りの扉はバラバラ・・・かと思いきや。真ん中にクレーターとひび割れがあるものの原形を保っていた。
扉は開放されたから、目的は達したものの・・・
「・・・納得いかない。地面と擦れていたんだから摩擦力が。張力が。応力集中が・・・」
とは言え!
「・・・い、急がなきゃ!」
これまた巨大な敷居をまたいで反対側に出た私は・・・
「・・・ふぅ・・・」
扉の裏側に回り、一呼吸おいて・・・
「・・・ん!」
ハンマー持って!!
「てぇりゃぁぁーーー!!」
『ドゴォォッッンッッ!!』
再び扉にインパクト!
風切り音と共に巨大な扉は『グワッ!』っと動き!
『ズゴゥォンォォォー!!』
派手な音を立てて石造りの扉はあるべき場所に戻った!
『ォォォゥゥーッッ………』
そして裏側にもクレーターを生み出し、パラパラと石の欠片を落としながら・・・
『ッ……………』
沈黙・・・した。
同時にアンデッドたちの声も足音も消え。静寂が辺りを包んだ。
「・・・・・・はぁぁ~っ・・・」
第1の関門。
純粋な物理でクリアですぅ・・・




