Chapter 001_物語のはじまり
初投稿。
よろしくお願いします。
「・・・ふぁ・・・」
「あら…お目覚めかしら?フォニアちゃん?…抱っこする?」
「・・・う~・・・う!?ままん!・・・たこ~」
人生いろいろあるっていうけど・・・どうやら、ソレは
本当の事みたい。
「うふふっ。はいっ、抱っこ~。…でも、タコじゃないわよ?だ・っ・こ…よ。」
「・・・だっこ・・・」
「うんっ、そう!もう言葉を覚えるなんて…さすがは我が娘!どやぁっ!!」
「・・・どや?」
瞳に映った素朴ながらも美しい女神様・・・薄い茶髪・・・亜麻色の髪と
いうのだろうか・・・を緩く結わいた、スタイル抜群のこの人は
私のお母様のようだ。
いつも、いちばん側にいてくれるし、
聖母の微笑みを向けてくれる。
優しく抱っこしてくれるし、
お乳も与えてくれる。
この女性が私の母親でなかったら・・・そんな無償の愛を持った人が
この世にいるのなら。この世界はとっくの昔に平和になっていたはずだ。
だから逆説的に、この人はまず間違えなく私のお母様。
そして私はこの人の子供で・・・赤ん坊。
「さぁ、ごはんよ。フォニアちゃん!」
「・・・ごはん。・・・んちゅ、んちゅ・・・」
「うふふっ。いい子ね…。いっぱい飲んで。大きくなるのよ…」
でもちょっと待って!
歯の1本も生えてない私が赤ん坊なのは・・・多分っ、
事実なんだろうけど・・・
でも、だとしたら・・・どうして私には
20歳まで生きて。大学に通っていたという記憶があるのだろう?
冷たいアパートの部屋
暗い地下鉄のホーム
他人と歩く銀杏並木
方程式で埋め尽くされたノート
参考書に向かっていた私・・・
・・・うん。どれもリアルに覚えている。
とてもじゃないけど、これが夢や幻だったなんて思えない。
それなのに・・・今はこの人の赤ん坊をやっている。
これがいわゆる“転生”という奴だろうか・・・?
「・・・んちゅ、んちゅ・・・」
「…ただいまー!」「ただいま帰りましたぁ~…」
「あらっ?…フォニアちゃん!どうやら…パパとデシさんのお帰りよ!?…2人とも、お帰りなさい!」
「んちゅ・・・う?」
いやいやいや・・・
転生なんていう非論理的なモノを信じる事なんてできない。
敬愛するアインシュタイン先生も、シュレディンガー先生だって、
こんなコトが起きるなんて一言も言ってなかった。
私は死んだはずだ。
理由は・・・思い出したくもない。
でも、最後に感じた、あの浮遊感は本物だったハズ。
あの時の開放感と失意、無力感と悔しさ。
もう、どうだっていいという極限の絶望感は・・・忘れられない。
忘れられない・・・
私はあの時、
世界とリンクして真理を瞳に刻み。そして・・・
・・・うん。間違いない。
真理はココにある。
私は1度・・・
「おー、フォニア~!たっだいまぁ~!!元気にしてたかぁ~!?」
「・・・ぱぱん!おか・・・り!」
「ぬぉ~!!まだ1歳にもなってないのにお喋りできるなんて…うちの子は天才だ!!いい子いい子いい子~~!!」
「・・・きゃっ、きゃっ!」
・・・なのに何故か。
私は目を覚ました。
しかも、そこには
見た事もないような温かな光が満ちていた。
私には新しい名前が与えられ。
仲の良い両親が与えられ。
夢にまで見た愛が与えられた。
誰も呼んでくれなかった名前や、
ママゴトをする血縁者や、
凍り付いた日常はすべて真っ黒に塗りつぶされ、
代わりにこの瞳は色とりどりの光を映すようになった。
なんて素晴らしい事だろう!
なんて、悲しい事だったのだろう・・・
「チェルシー。」
「…なぁに?」
お父様もお母様も、
もう一人の家族であるお手伝いさんも。
私を深く愛してくれた・・・
「んー…」
「えっ…ちょ、ちょっとテオ!今はフォニアにお乳を…」
「…そんなの分ってるさ。でも…ほら、帰ってきんだし。んー…」
「…も、もうっ///仕方ないわねぇ…」
「「ちゅ…」」
「・・・」
・・・ちょっと。
愛が過ぎる事もあるけれど・・・
でも、そんなモノを1ピコグラムも感じられなかったあの頃より
ずっとマシだ。
「・・・んちゅ、んちゅ・・・」
いいじゃないか 愛!
「んっ…あっ///…ちょっ、ちょっとテオ!それはダメよ!!今はフォニアが…」
「いいだろちょっとくらい?片方空いてるんだから…。…なぁ?フォニア?」
「・・・メっ!ごはん!」
どうしてこんな事になったのか・・・その理由は分からない。
神様も仏様も信仰していない私だけど、そういう存在や超常的な力を
信じてしまいそうになる。
もしかして、最悪の最期を迎えた私を神様が哀れみ
今一度の機会を与えてくれたのか・・・
あるいは、煩悩にまみれた私に解脱なんてできるはずも無く
今一度の責め苦を与えられたのか・・・
・・・なんて、ね。
「ごはん!?…ふ、2つあるんだからいいじゃないか?」
「・・・メーっ!・・・んちゅ、んちゅ・・・」
「わっ!な、なにも叩かなくても…」
・・・とにかく。
分からない事を悩んだって仕方ない。
ソレはソレとして・・・今は、
精いっぱい生きてみようと思う。
そうすればいつか、嫌な思い出も全部
忘れる事ができるかもしれない。
愛だの幸せだのとは無縁だった私も
ソレを掴めるかもしれない。
私だって・・・ちょっとくらい幸せを願ったって。
いいじゃない・・・
「ほら、テオ。フォニアが嫌がっているわ。それにフォニアは本当によく飲むから…両方使うのよ…」
「・・・んふっ!」
「あ、あはは…。そ、そっか。両方…」
だから、とりあえずの目標は
成長すること!
その為にもお父様っ、
お母様の“愛”を掴むのは
「・・・んちゅ!んちゅ・・・!」
私よ!
・・・
・・
・
「フォニアちゃーん!今日もお勉強よ〜!」
自我が芽生えてから数ヶ月
私もずいぶん成長した・・・
「・・・んー!いま―。」
言葉も沢山覚えたし、立って歩けるようにもなった。
前世から好奇心旺盛だった私は、子供なのを良い事に
あちこち動き回って大人たちを質問攻めにした。
ちょっとウザイくらい。しつこく訊ねた事もあったけど・・・
お父様もお母様もお手伝いさんもみんな
初めての子供である私が可愛いらしく、
面倒がらず丁寧に説明してくれた。
それによると、私の家族は・・・
①私の名前はフォニア。
②お母様の名前はチェルシー
③お父様の名前はテオドール
④お手伝いさんの名前はデシ
以上!
・・・うん。ここは日本ではないね。
そもそも、お母様とお父様の超美形な顔つきからして
現世かどうかすら怪しいね。
ドコここ?
エデンの園か、なにかカナ?
「さぁ!今日は何を教えようかしら…?」
家は平屋の3DK。
すきま風が抜けるボロ屋。
ライフラインは何一つ通っていない。
ちなみに、お父様の職業は小麦農家だったりする。
・・・うん。ここは人里離れた秘境だね。
5Gの時代にこんな素朴な場所が残っていたなんて・・・世界は広く。
文化は多様だね。
さぞや田舎に違いない・・・と思っていたけれど。
お散歩した時、見た限り。
通りには、意外と人がいたりした。
街並みが中世ヨーロッパ然としているのが気になったけど・・・
・・・“そういうの”をウリにしている土地もあるだろう。
世知辛い世の中だ。
仕方ない。
でも、みんな
上水道すら整備されていない未開の地で
本当によく生活できるよね。
ビックリだよ・・・
「・・・わくわく!」
そうそう。街と言えば・・・私が住んでいる街は
【ルボワ】市というらしい。
人口は千人ほど。
お父様がソウであるように。大半の人は農業に勤しんでいるらしいけど・・・
露店でナイフや弓(?)。串焼肉や。
よく分からない物を売っている人もいる。
店舗を構えた商店や、パン屋さん。
宿屋なんてものもあった。
石畳の道は荷馬車が往来し。人・・・なぜか、10代くらいの若者が多い・・・の通行も多い。
車どころか、自転車すら見かけない事実に危機感を覚えるけど・・・
少なくとも。栄えてはいるみたい。
でも、荷馬車はさすがに
やり過ぎじゃないかな・・・
お母様曰く。
人が多い理由は・・・【ルボワのモリ】というダンジョン(?)が
近くにあって。ボーケンシャ(??)が多く訪れるから・・・だ、そうだ。
・・・ダンジョン?ボーケンシャ??
なにそれ美味しいの?
ひょっとして、道行くお兄ちゃん・お姉ちゃんが
剣を佩き弓を背負っているのと関係ある?
毎日“のほほん”と暮らしているけど・・・案外、物騒なのかな?
それ以前に、ここ本当に21世紀の地球?
田舎にしたって、ちょっと文明社会から取り残され過ぎてない・・・?
「…そうだわ!今日はマホー(?)を見せてあげる!」
気持ちを切り替えて、お母様との会話に集中する。
どうやら今日は、私の知らないコトを教えてくれるみたい。
知識を増やす、楽しい時間だ!
「・・・マホー?」
なにそれ美味しいの?
未知なる単語に胸をときめかせていると、お母様は
微笑みを浮かべて言葉を続けた
「そうっ、魔法よ!見ててね…」
両手のひらを揃えて上に向け瞼を閉じたお母様は
ひとこと・・・
「…『理の願い』ヴァージンリーフ!」
・・・唱えた
難しそうな漢字や特殊な読みにはできるだけ“ルビ”を振るようにしていますが手動なので完璧じゃありません。
読めない単語があれば教えて下さい。必要そうなら振ります・・・
久々に見直して、いろいろ修正しました!
・・・よろしくね! (2024/01/14 21:20)