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社会ノゴミノ日  作者: 蝉山 小空
19/31

19、総統対国連軍

 日本近海には各国から駆け付けた軍艦が無数に並び、厳戒態勢を取っていた。


智恵が調べたニュースによると国会が占拠されて1週間ほどで支援要請が入ったお陰で早い対応が出来たようだ。


日本国民は攻撃対象である東京湾と国会議事堂から離れ、安全の為地下に避難するよう呼びかけられている。


最初のミサイルを防いだ総統はそのまま国会頂上に待機、軍服男はハジメ達を地下へ送り届けてから総統の元へ戻っていた。


「次の攻撃に備えてここの守りを任せます。建物に被害が出ないよう飛翔物は全て叩き落としてください」


「了解」


軍服男に国会の防衛を任せると総統は建物の中へ戻った。


そして拠点として使っている執務室に入るとタイミングよく電話が鳴る。


「もしもし。お久しぶりです。ええ、わかりました、すぐに向かいます」


総統は受話器を置くと屋外に待機させていたドローンに乗り込み上空へと飛び立っていった。



 八丈島では状況を確認した五十崎麗子が東京湾に位置する強制収容施設にいる斎藤智浩と連絡を取り合っていた。


「斎藤さん、現在日本近海に国連軍の艦隊が100程待機しています。そちらが総攻撃されるのも時間の問題でしょう」


『そうか、こっちも執行者を全部呼び寄せているからフル稼働出来る。落とされる事はないだろうが、無人機じゃなかった場合はどうする?』


「総統のミサイル迎撃を見せ付けているんだもの、そう簡単に有人機で攻め込んでこないでしょう。それに、そっちには捕虜がいるんだから簡単に爆撃はしてこないでしょう?」


しかし、麗子の言葉が起爆スイッチになったかのように各艦隊から一斉にミサイルが発射され、斎藤のいる強制労働施設へ向けて雨の様に降り注いだ


「ごめん、やっぱりミサイルが発射されたわ」


『ほうら言わんこっちゃない!』


斎藤のいる強制労働施設上には既に数百体の執行者が待機しており、既に迎撃態勢が整っていて、迫りくるミサイルに向けてゴルフボール大の鉛玉を次々に投射していく。


銃火器などは所持しておらず、人の域を超えた身体能力で投擲される鉛玉は大砲の威力をも凌駕し、ミサイルの傍らをかすめるだけでも衝撃波によって迎撃することが出来る。


国連軍から発射されたミサイルは次々に上空で爆発を起こし、その爆風で周りのミサイルを巻き込みながら一つ残らず施設に届くことなく撃墜される事となった。


『五十崎君、流石にあのミサイルの量は手加減してなかっただろう』


「そうね、あとは総統が上手くやってくれるでしょう」



 先程ドローンで飛び立った総統は防衛省のある部屋に到着していた。


乗っ取ったとはいえ現在国のトップである総統は誰に止められるという事も無く中に入る事が出来た。


総統が部屋の扉をノックして中に入ると年老いた白髪頭の軍人とその下役と思われる初老の男性の2名が出迎えた。


「お待ちしていました。どうぞこちらへ」


総統を待っていたのは陸上自衛官の最高位である陸将の赤石だった。


部屋の中にはいくつものモニターが並んでおり、総統は全てのモニターを一望できる席へ案内された。


「あちらの準備はいかがですか?」


「済んでいますよ」


赤石は補佐役の男に指示を出すとモニターが起動され、それぞれの画面に様々な国籍の人物が映し出された。


赤石が総統に頷いて見せると総統は落ち着いた口調で語り出す。


「皆さん、まずは先程新政権の祝いで頂いた花火に心より感謝します」


総統の皮肉にモニター前の面々はざわついている。


「私が新政権の総統です、以降お見知りおき下さい。所で」


一度言葉を切り、総統は顔を強張らせて再び話始めた。


「私はクーデターにより正式に新政権を宣言し、現在一国を統治しています。


既に政権が代わっている我が国を武力によって制圧しようというのであれば宣戦布告として受け止め、反抗しなければなりません。


ご存じの通り、私は先の災害で貴国らを震撼させた殺人鬼と同等の物を数百従属しています。


ですが私は貴国らへ攻め込む気はありません。


今まで通り貿易も何一つ変わりなく執り行われています。


国内の騒動に首を突っ込まないで頂きたいのです」


『この平和な時代にクーデターなど認められるものか、今すぐに元の体制に政権を引き渡したまえ』


総統の話に大国の首相が声を荒げて避難をする。


「私は今回の騒動で誰一人殺すことなく政権を奪取しています。


こんなに平和なクーデターなどないでしょう?


ある一部の制度を変えただけで今まで通りこの国は平和そのものです。


むしろ貴国らの国よりも平和と言えるでしょう。


ですので今すぐ軍を引いてください。


何か申し立てがあるようならば国として外交手段を行使して正式に申し立てを行ってください」


『ふざけるな!ならば改めて正式に宣戦布告を行うだけだぞ!』


「もう一度だけ言います。今すぐに軍を引きなさい。これ以上私から話すことはありません。それでは」


総統が赤石に目線をやると補佐の将校が通信を切り、モニターは再び沈黙した。


「もう少し、説得した方が良かったのではないですか?」


「あれで良いです。十分に我々が脅威だと示すことが出来ているでしょう」


「この体制はいつまで続けますか?」


「平和になったら終わらせますよ」


「では、私は静観させてもらいます」


総統は赤石に僅かに微笑みかけ、外套を翻して防衛省を後にした。


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