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死界の住人  作者: トモ
5/5

一夜が明けた日


MainCharacter:神風連夜



「おーい、朝だ………そういえば柚子は入院してるんだった」



 帰ってから直ぐに熟睡モードに移行した連夜はつい昨日のことが少し曖昧な位に寝ぼけていた。元々朝は弱いのだが、今日はさらに酷い。朝食も二人分作ってしまっている。



「しょーがない。帰ってから食べるか」



 今日の昼飯は学食に決めた。寝坊をしてしまったせいで弁当を作る余裕すらない始末だった。



「おい、住人。おまえは何かする予定でもあるのか?オレは今から学校なんだけど」



「無いけどさー。ところでその住人って呼び方さ、なんか呼びにくく無い?」



 制服に着替えている最中の連夜はその作業も続けながらもその言葉に酷く反応する。



「今更かよ!まぁ呼びにくいけどさ」



「うーん。むむむむ、ならクロにしよう!クロに決めた!」



「なんで、クロなんだよ」



「君が僕を見て黒いモヤって言ってたからさ」



「言ってたっけ?まぁいいや。じゃあクロ、行ってくるわ」



「ばっあーい!」



 朝からよくあのテンションでいられるな。あの甲高い声で朝から話していると相当疲れるな、と感じる登校中の連夜だった。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「おっす、連夜。どうした?顔色が良くねーぞ。柚子ちゃん大丈夫だったんだろ?」



 既に学校に着いてから寝かけていた連夜は、後ろから声をかけられて一気に睡魔が去っていくのを感じる。よくあるビクッってなるやつだ。



「あ、あぁ。大丈夫だったんだけどね。色々あって疲れてるんだ。気にするな」



「ならいいんだけど」



 今声をかけてきたのは真田雄二(さなだゆうじ)だ。なんと、オレとは小学校からの腐れ縁だ。高校も同じ理由は家から近いから。全くなんでこいつとは同じ思考回路になるんだか。



「おっ!死神様のお着きだぜ」



「し……死神!?」



「おいおい、どうした?そんな大きな声で反応しなくてもいいのに……やっぱ疲れてるのか?」



(おいおい、死神って単語に異常に反応してしまったじゃねーか!これも昨日の出来事のせいだな)と、心の中で叫んでしまうほど連夜はその類の単語に敏感になっているようだ。



「いや、大丈夫だ。それで死神って?」



「はぁー、まじかよ。これで四回目だぜ。早川莉乃(はやかわりの)のことだよ」



「あー………思い出した。あれか、入学してから二ヶ月で五十回以上告られてんのに毎回の如くバッサリと斬り捨てるような返事をするって噂の……」



「何だよ。ちゃんと覚えているなら、初めから言えよな」



「無茶言うなよ。今思い出したばっかりなんだよ」



「でも、可愛いだろ?いや、美人の方が合ってるな。無口でクールって感じ。雄二ポイント高めだな、これを機に連夜はしっかり彼女のことを覚えておくんだぞ」



「覚えて何の意味があるんだよ…………」



「損は無いと思うぜ」



「はは……善処するよ」


そんなたわいもない会話をしていると、担任が入ってきてホームルームを始めた。


それからの数時間の授業の内容は殆どを聞いていた覚えがない。かと言って寝ていたわけではない。やはり昨日の出来事、そして帰り道での会話が脳裏によぎって授業どころではなかったのだ。





昨夜ー帰宅途中



「そういえば、死界の住人ってなんでオレと契約できたんだ?柚子の一件で行けばその手の連中には守護が左右すると思うんだけど」



「なんだ?そんなことかい。やれやれ、もうちょっと面白い話題を振ることができなのかなぁ連夜は」



「おい、オレは真面目に聞いてるんだ。で、どういうことなんだ?」



「うーん。連夜には守護がいないかったからね。適任だと思ったんだ。丁度、死界の動物……面倒いから死獣でいいや。それに攻撃されていた柚子ちゃんのお兄さんだったしね。追いかけて正解だったよ」



「は?」



 その発言に気を取られてしまった連夜は目の前の電柱に頭をぶつけてしまう。



「おい、守護はどんな人間にもいるんだろ?おかしいじゃねーか」



連夜は頭をさすりながらも、クロにそう言った。



「うーん。詳しくは分からないけど居ないんだから仕方ないでしょ。結果柚子ちゃんも救えたから結果オーライでさ」



「ま、まぁ。柚子を救えたからいいか」



「そうだ!連夜。契約は明日から早速だよ。死獣に攻撃されている人達を守護を守るんだ」



「あ、あぁ」




「おい、神風。この問題に答えろ。おい、神風!」



「は、はい!す……すみません。聞いてませんでした」



「はぁ。なら早川だ」



「そこは二番です」



「正解だ。神風もしっかり授業聞いておけよ」



(完全に昨日の帰り道の会話について考えていたからだ。どうせ今更後には引けないんだ、考えるのは止めよう)



 その考えに至ったおかげか、それ以降の授業の内容はどうやらしっかりと覚えていたようだ。



そして、午後の最終授業。



「おーーい!連夜ぁ!」



「なんだよ、クロ…………。ってクロぉぉ!」



「なんだ、神風。黒がどうかしたのか?」



「いえ、赤ボールペンと思っていたのがただの黒いボールペンだったのに気付いて………」



「気を付けろよ」



周囲の視線と少し聞こえてくる笑い声を耳にしながら少々恥ずかしかったが、耐えたうえでノートに一部にこう書いた。


(どうしているんだよ。家で待ってろよ)



「いや、連夜に伝えとこうと思ってさ。今日は放課後に河川敷だ。忘れないでよ、絶対にね。いいね」



 クロはそれだけ告げると、連夜がノートに返事を書く前に窓をすり抜けて外に出て行った。



「なんて勝手な野郎だ」



 その様子を見てボソッとそう言いながら、今更クロは物体を貫通できるようだと知った連夜だった。





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