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死界の住人  作者: トモ
3/5

接触


MainCharacter:神風連夜




「ヴォォォォォ!」



 連夜が病院内に入るやいなや低く、重い叫び声が耳の中に響いてくる。



「おい、住人。日没まで四十分あるんじゃあ無かったのかよ」



「うーむ。どうやら予測機械がバグを起こしていたみたいなんだ」



 日没になってもこの病院内は昼間の如く患者や医師、看護師達で溢れかえってくる。



「あれ?そういえば、オレこんな変な格好と刃物持ってるのに誰も気にも留めないのはどうしてだ?」



「そらそうだよ。だって、今の君は死界の住人の力を得ているからね。普通の人には見えないよ、見せる意志が無いとね」


 なるほど。オレがこいつの姿を見る事が出来たのはこいつの意志って訳か。

 それにしても……もう既に手術は終わっているだろう。声のする方向が二階の西側、手術後の入院場所に指定されている方向から聞こえる。



「よし、ここの角を曲がれば……!」



「連夜さん、どこかなぁ?」



「!?」



連夜が角を曲がると同時に明梨とすれ違う。柚子が入院場所へ移動したのを連夜に伝える為に、入り口、もしくは屋上へと探しに行く所だろう。



「ごめんな、明梨ちゃん。今は柚子を救うのを優先させてくれ」



そう、心の中で呟く。



「連夜!ここが柚子ちゃんの病室みたいだよ」



「おう」



 203号室。神風柚子様。そう書かれたプレートを確認してドアに開ける。



「な!」



「へぇー、面白い展開だね」



そこにいるのはベッドの上に寝ている柚子だけ。死界の住人が話していた動物らしき存在は確認出来ない。



「おい、住人。ここにいるんじゃ無いのか?」



「普通……はね。もしかしたら守護が彼女への直接攻撃をさせないように遠くまで誘導しているかも。ただ、離れられる範囲はおそらく三百メートルが限界なんだけどね」



「くそ、早く見つけないと」



 連夜が扉に手をかけようとした瞬間だったー


 バンッ!

 

 刹那、扉が破壊させる。

 

 それと同時に小学生くらいの大きさの黄色に発光している羽の生えた妖精のような生命体が連夜の頬をかすめながら後ろの窓に衝突し、甲高い音を立ててガラスが崩れ落ちる。


 連夜は咄嗟に振り向こうとしたが……



「連夜!前だよ!刀で受け止めて!」



「くっ!」



 死界の住人の声にギリギリ反応し、振り向くのを辞めて左手の刀を下から斜め上へと斬り上げる。


 キィン!


 独特の金属音を上げながら連夜の繰り出した刀は未知の生物から振り下ろしていた手から鋭く飛び出ている殺傷能力が高いであろう爪を受け止める事に成功する。



「連夜、ここじゃ危険だよ。出来るだけ病院から離さないと」


 

「あぁ。その妖精と柚子を頼む」



 その大きな生物。死界の住人の言葉を借りるなら通称ー死界の動物。豚のような顔にオークのような体。こんなの相手に一時間弱もあの妖精は耐えたのか。



「この豚野郎……でけぇな。四メートルはあるな」



 連夜の刀と、その豚野郎の爪はお互いに譲ることなく尚もぶつかり合っている。



「外に出すには………」



 そう考える連夜の正面。おそらく妖精がぶっ飛ばされてきて破壊したのであろう病院の通路側の壁は崩壊していおり、外風景が目に入ってくる。

 数カ所に残った電光灯がチカチカと消えそうな光で光っている。



「この大きく穴が空いた窓からこいつを外に出せれば!」



 そう作戦を考えた連夜は足と腕に大きく力を入れる。今まで均等の力で釣り合っていた刀と爪は、刀が爪を弾き飛ばすように豚野郎の腕が上に払い上げられようとしていた。



「柚子から離れろぉぉぉぉ!」



 一閃、その左手は天井付近まで振り抜かれた。それと同時に豚野郎はその威力から病院外へと弾き飛ばされる。



「連夜、追うんだ。建物とこの守護はボクがどうにかする」



「あぁ。絶対に逃しはしない」



 連夜も豚野郎に続くように外に飛び出る。どうやら、死界の住人の力が継承されているみたいだ。空を自由に移動出来る。つまりは飛んでいる状態だ。



「すげーな。ん?あの豚野郎は何処…………!?」



 空を飛べるということに気を取られていた連夜な上空から落ちてきたながら爪を繰り出す豚野郎に反応しきれず、その体にモロに攻撃が入ってしまう。



「ガッ……!」



 物凄いスピードで地面に叩きつけられる。植木鉢に植えられていた花達や、ベンチを巻き込む形で地面に大きな凹み跡がついてしまう。



「い……痛くない。このローブ、なんて防御力と衝撃吸収能力だ」



 上を見上げると、豚野郎はさっきので連夜を殺ったと思っていたらしく苛立ちからか叫び声を上げる。



「おい、豚野郎。反撃開始だ」



 連夜は地面を蹴って大きく空へ飛ぶのだった。


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