会心の一撃 後編
やっと終わったよ……。
掛かり過ぎて、第1話と色々文面が可笑しいので校正しますね。
ブクマ2件の方、お待たせしました!(笑)
カイ・シンの一撃だった――。
俺の龍刀は魔王"アザマ・シン"の急所を貫いた――。
「こんな……ことが!!」
魔王は自分の置かれている現状を認められないようだ。
『11柱の中でもお前は強いほうだ。膂力も大したものだが――』
俺は龍刀を大きく振り下ろす――。
『真の魔王ほどではない……』
冷たく、小さな声で囁いた。
『当然だ』と心の中で真の魔王が同感している。
俺は薄く笑い、細身の刀を鞘にしまう。
龍刀"黒夢"。黒龍である魔王の魔力を最大限に留めた無敗の剣。
『この剣が無ければ、負けていたかもしれないな』
心の中で『それはない』と魔王は断言する。今の俺の身体は、人間の力を凌駕しており、全身の魔力をこめた肉弾戦でも負けないらしい。
『貴方がいない間に幹部の中で魔王を選んだようだな。最後に2柱と同時に死闘を繰り広げるとは思わなかった。……して、魔王よ。楽しめたか?』
魔王は『大いに満足、どちらが命を落とすか分からない真剣なる時間、存分に味わうことが出来た』と語る。
それはよかった――お姉ちゃん、ボクやったよ……。
***
数時間後、町の者たちが一斉に入城してきた。そして、俺を大いに称えるのだ。
今まで俺のことを相手にもしていない者たち、俺にひどい仕打ちをしてきた者たちが手の平を返す様に「勇者だ!」と叫ぶ。
俺は苦い笑みを浮かべるので精一杯だった。
人はこうも浅ましい存在なのか、と人ではない者の立場で物事を考えている自分がいた。
それは、この後の町の人たちの行いで確実なものとなった――。
町の者たちは、城の中をひっくり返し、金目の物を探す。そこまではまだいい。暫くすると、俺が倒した幹部たちを磔にしていくのだ――!
「この悪魔め!よくも仲間を!」
町の者たちは小さい瓦礫や石を見つけては、投げつける……!
『この人たちは何をしているのだ?強きものが無力になった途端にこの仕打ちをするのか――!』
俺の怒りに魔王は『人間というのはそういうものだ。絶対悪を探し、根絶やしにしなければ気が済まないのだ。カイは知らなかっただけのことだ』と淡々とした口調で語ってはいるが、怒りが沸々と湧き上がっているのがわかる。
戦ったとは言え、真名を与えた臣下たちが惨い仕打ちを受けているのを許せるわけではない。
俺達、魔物は正々堂々と戦ってきたのだから――。
『俺は認めない――生死を懸けた者達への仕打ちを……!』
魔王は『好きにしろ、面白そうだ。だが、お前は勇者ではなくなる。覇王……そう覇王になるだろうな。ふはは!』と嬉しそうに笑う。
覇王か……望むところだ――!
俺は魔王と共に戦っていた幹部の1柱である”サミエル・シン”に近づく。
……まだ意識はある。
サミエルは膂力こそ他の幹部よりも劣るが、智慮深いと真の魔王から聞いた。
『サミエルよ、相変わらず身体よりも頭が動くのがお主の悪い癖だな』
俺は精神を真の魔王……”シン”に一時的に渡す。
シンの声を聞いたサミエルは「……まさか!」と瞬時に理解する。頭の良い柱だな。
「……道理でお強いわけだ」
『我ではない、この体の持ち主が優れた精神を持ち合わせていたのだ。我は手助けしたに過ぎない』
「左様ですか。本来のお姿に戻るおつもりは……なさそうですね。暇を持て余していた魔王の良い余興になれたのなら、我等幹部も喜ぶでしょう」
勇者が魔王だと分かっても、怒りを覚えず、名誉なことと喜ぶ忠誠心。彼等こそが真の勇者であると俺は感じた。
『……少し眠っていろ。お主には色々と手伝って貰う』
サミエルは頷くことなく、意識を失った。
『さあ、覇王への第一歩だ。哀れな人間どもに会心の一撃を――』
俺は静かに龍刀を鞘から抜き出す――。
***
覇王となった俺は、寿命が尽きるまで平和を築き、それに反発する薄っぺらい絶対悪を持った罪の勇者と戦い続けるのだった――。
有川浩先生の阪急電車を読んで、「視点を変えた物語構成って面白そうだな」と思い書き始めたと思います。
何せ完成までに半年かかっっております(おい、マジか)
なろう。上級者の皆さんなら長編一作書き上げて、「書籍化決定です!」くらいやっていると思うと冷汗が出ます。
まあ、僕もぼちぼちではありますが長編・短編と書いております。進捗?ぼちぼちだって言ってるだろ?(はったおすぞ)
時間がありましたら読んでくれると有難いです。
以上、庭城でした。