表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異常図書焼却課アーカイブ  作者: 稲生葵
6/42

異常図書140F-7-7捜査資料WSL1410-10

 この資料は異常図書140F-7-7[満開さくらは散りませんッ!!11.5]の筆者のものと思われるSNSアカウントの投稿内容と、それに対する我々の対応をまとめたものである。


・20██年10月15日6時36分

[目が覚めて、腕の中にかわいいさくらがいる。僕は幸せです。]

 同日6時40分に監視網がとらえた最初の投稿。ここから1日90〜100回のペースで「さくらがかわいい」という旨の内容を投稿し始める。

 ただちに発信元の特定を試み、(黒塗り解除)名古屋市中村区のマンションから投稿した可能性が濃厚となったが、当該マンションに条件が一致する入居者はおらず、不法入居者や、マンション内のネットワークに不正アクセスした形跡も見つけられなかった。

 しかし、下記の投稿を見ると、まったく虚偽とも考えにくい。


・20██年5月16日20時59分

[ミッドランドスクエアの映画館で█████を見てきた。さくらはとても気に入ったみたいで、僕は楽しそうな彼女をずっと見ている。]

・20██年6月13日18時32分

[押木田公園に蝶を探しに来た。おまじないに使うみたいだけど、そんなことしなくたって僕はさくらのものなのになぁ。]

 いずれも名古屋市中村区にある施設である。これらのことから、中村区近辺に居住している可能性が高いと思われるが、映画チケットの購入履歴追跡、映画館、公園付近のカメラ記録、いずれも空振りに終わっている。

 追跡を避けるために、偽装した発信元に合わせて利用した施設の名前を改変している?

 中村区に監視網を構築。


・20██年11月1日8時59分

[遅めの朝ごはんをさくらと食べる。ジャムパンをほむっと頬?? ???? ????]

・20██年12月21日13時2分 

[お昼を過ぎて眠くなってきたらしい。今は僕の胸の中にいる。とてもあったかい。なん・。、A、 駆?ォュ]

・20██年2月4日8時50分

[朝?????????????????]

 時折、上記のように文字化けした投稿が行われる。回線になんらかの偽装を行ったことでデータ破損を生じたものか?

 筆者は気付いているはずなのだが、修正しようとしない。文字化けしていることについて言及する様子も無い。

 実は筆者の手によるものではなくBOTが書き込んでいる?

 ↑一考に値するとは思うが、下記の投稿までBOTだろうか?


・20██年6月9日21時40分

 筆者のものと思われる投稿を引用して、「口からイチゴシロップが出そうなアカウント見つけた。とりあえず、彼女さんがかわいいことはよく伝わってくる」とコメントした人物への返信。

[そう、さくらはとってもかわいいんです]

 この投稿にはカップル自撮り風のイラストが添付されていた。

 これを異常図書140F-7-7の記憶が比較的明瞭な被害者に見せたが、残念ながら「満開さくらに似ている……ような気がする」と、多分に迷いを含んだ回答しか得られなかった。

 とはいえ、筆者の新作と思しきイラストが添付された初めての例であり、仮にBOTでも筆者がなんらかの形で関与していると考えて間違いないだろう。


・20██年7月28日22時17分

[中村公園の夏祭りに行ってきた。赤い花火が開く瞬間にキスをするおまじないを二人でやってみた。おまじないの効果は秘密]

 この投稿には満開さくらと思しき女性と花火のイラストが添付されていた。

 中村区の監視網から得られたデータを詳細に調査したが、2人の姿がどこにも見つからなかった。

 さらに、祭りに参加せずに遠くから花火を見ていた可能性や、地域偽装の可能性まで考慮し、別件で構築された他の地域の花火大会の監視網から得られたデータまで調べ上げる大規模調査を行ったが、それでも見つからなかった。


 何かがおかしい。まるで中村区が二重に存在しているかのようだ。


 SNS上で筆者から情報を聞き出す試みの許可を申請中。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ