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異常図書焼却課アーカイブ  作者: 稲生葵
41/42

[閉架図書館]█████████計画

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format D: 計画は特別秘匿指定されています。いかなるデータも持ち出すことはできません。


立案:2042年9月4日


概要

 本計画は、大規模召喚事象による世界の上書きによって、我々が住む世界の常識的法則の強度を高め、超常現象の発生を根絶しようと企図した上書き保存計画から発展したものである。


意図

 有害図書追放運動は、異常図書を生成しない人間を作ろうとした結果、好ましくない方向に想像力を導き、破滅的な事象を発生させた。

 そこで、上書き保存計画では、人間ではなく世界に働きかけ、観測データを用いてこれを再設計し、異常図書が機能しない世界を生成しようとした。

 しかし、上書き保存計画には次のような問題があった。


 まず、異常性は観測範囲外の何かによってもたらされている可能性があり、現在得られる観測データを用いて世界の再設計を行ったところで、同じ色を同じ形に塗り重ねるようなもので、肝心の部分には手が加えられず、実行しても、何の問題もなく異常を発現できる可能性が高い。

 最悪の場合、かえって世界のあやふやな部分を増やしてしまい、異常性を増悪させる恐れさえある。


 次に、上書きに失敗した場合、衝突が発生する恐れがある。

 人間が2倍に増える。

 建材が瞬時に重なり合って核融合、または急激な圧力上昇から致命的な破裂を引き起こす。

 海水が2倍に増え、大津波が発生する。

 大気が2倍に増え、致命的な大気圧の増加が発生する。

 いずれも極めて重大な問題である。

 これらの問題により、上書き保存計画の実行は無期限に保留された。


 そこで、format D: 計画では、異常性をもたらしている領域を観測し、これを白紙で上書きして削除する。


問題

 上書きする領域を観測する手段が無い。

 また、上書き保存計画にもあった問題だが、異常図書を利用しなければならない。

 ベースとなる異常図書のメカニズムは概ね解明できているが、改変した結果、まったく別の異常を発現する恐れがある。

 また、制作中に[霊界接触]が発生し、超常存在のための世界を誂えてしまう恐れがある。


実行

 問題を解決するため、多元宇宙望遠鏡と、魔術的無菌室の開発を進める。

 これらが完成次第、上書き領域を観察し、現実的に実行できるか否かを再度判断するものとする。

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