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異常図書焼却課アーカイブ  作者: 稲生葵
16/42

異常図書1349-A-1[ヒメバチ1-3-50B-243]

分類:妖怪図書

人気推定値:計測不能

状況:封印

発見時の脅威:心的傷害/緑 やや衝撃的な映像

現在の脅威:事故誘発/黄 交通事故を誘発する危険


作品の概要

 1973年10月から██書店の週刊少年誌██████に掲載されていた、人間に寄生する捕食寄生者(ヒメバチ)の恐怖を連作短編形式で描くグロテスクホラー漫画。

 異常図書1349-A-1は、その1話3ページが異常性を付与されたらしいものである。


異常の発現

 三重県███市の██北交差点から撤去、破壊すると、同じ場所に約72時間かけて出現する。

 撤去した直後から、うっすらとホログラムのように現れ、徐々に透明度が下がる。完全に出現するまでは触れることができない。

 それ以外の異常性は確認できていない。


発見と対応

 19██年8月█日、怖い漫画が片付けるたびに置き直されて不気味だという住民の苦情から、市職員が異常図書事件の可能性を考え、我々に調査を要請。

 調査の結果、上記の異常性を確認し、異常図書と断定。

 焼却、鉛封筒内への封印、結界内への移動、アスファルトごとの移動等を試みたが、いずれの場合も再出現を防ぐことはできず、周辺住民の苛立ちも限界になりつつあったため、やむなくアスファルトを上塗りして被覆し、封印した。


異常発現の原因

 採取したサンプルを分析したが、紙に繊維のような細いラテックスとタンパク質が混じっていること、全体的に雑誌掲載版の約1.1倍のサイズに引き伸ばされていることしかわかっておらず、何が原因となって異常を発現しているのかは不明。


 ラテックスの取り扱い業者を一通り調べた結果、████工業のコンドームと成分が一致したが、████工業に不審な点は無く、何者かが████工業のコンドームを材料に何らかの手順を実行した疑いがある。

 タンパク質は細胞の構成材料であるアクチンフィラメントによく似ており、特異知的生物の体組織、またはなんらかの生贄を使用した疑いがある。


 周辺調査を進めたところ、通報があった19██年8月█日の前日夜、三重県███市の██北交差点から約50メートルの位置にある民家で不審火による火災が発生していたことがわかった。

 この火災はボヤ程度で消し止められたにも関わらず、当時中にいたと思われる一人暮らしの男性(32歳)が行方不明になっていること、火元と見られる場所に████工業のコンドームが散乱していたこと、週刊少年誌と思われる燃えかすが発見されたことから、何らかの関係があるものと思われる。

 幸いにも現場が保存されていたため、警察、消防と協力して詳細な調査を準備中。


 原作が異常性を持つ可能性を考え、ヒメバチ1話が掲載されている週刊少年誌██████、████工業のコンドーム、30代男性から採取した細胞を培養して作った細胞シートを1箇所に集め、そのまま着火するだけでなく、酒をこぼす、スナック菓子の欠片や人毛を挟む等、様々な条件で着火する再現実験を行ったが、いずれも単純に燃焼するだけで終わったため、原作に異常性は無いか、よほど特殊な操作を行わない限り発現しないものと思われる。


現状

 完全に焼却する方法を探るとともに、被覆の状態を監視中。

 異常図書1349-A-1には、若干の厚みと弾力があるため、車両が被覆部を通過する際にアスファルトが歪んで割れ、被覆が破綻することがある。

 また、被覆が破綻して水濡れすると糊状に溶けて滑りやすくなるため、交通事故防止の観点からも被覆の状態は注意が必要である。

 より安定した被覆を維持するため、██舗装と██大学への協力依頼を準備中。


備考

 異常図書1349-A-1は超常存在を召喚したり、人を殺したり、発狂させたりもしないため、放置できる異常図書であるが、将来これらの異常性を併せ持った異常図書が現れる可能性を考えると、異常図書1349-A-1の解析、焼却は急務と言える。

や―妖怪図書


 異常図書分類のひとつ。

 脅威度で言えば放置できるレベルだが、床や本棚に突然出現する、紙とインクと接着剤のみで作られているのに音や立体映像を出す、127ページをめくると表紙に戻ってしまう等、明確に異常性を示す異常図書がこれに当たる。

 動くものは図書凶器との線引きが困難な場合がある。

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