第1話 事件
初めまして。東といいます。
四人組の男たちが鬱蒼と茂る森の中を真剣な表情で進んでいる。無数に張り巡らされた枝が陽光を遮るその場所は、まだ昼間だというのに薄暗い。足元にはいたるところに蔓性の植物が自生しており、男たちはそれらに足を絡めとられないように注意しながら進んでいく。人気はおろか、動物の気配すらない。男たちの足音も、足下の落ちた枝木を踏んだ音も、周囲の静寂に飲まれて消えていく。
ここは古代樹の森の奥地。そして男たちは冒険者と呼ばれるもの達だ。彼らは冒険者として依頼を受け、この場所へと足を踏み入れたのだ。依頼内容は古代樹の森奥地の調査である。優秀な冒険者であり普段から強力な魔獣の討伐依頼などを積極的に請け負う彼らにとっては易しい依頼のようにも思えるが、決してそうではない。男たちの浮かべる表情の険しさもこの依頼の危険性を十二分に示していた。それでも彼らが相応の覚悟をもってこの依頼に臨んだのは、冒険者に特有の成果のためには多分な危険性をも許容できてしまう精神性故というよりはこの依頼のもつ特殊性故であった。
この依頼の目的は、近頃古代樹の森周辺で起きている異変の解明である。最近古代樹の森周辺では魔獣の異常出没が問題になっており、特に普段は森の奥地に棲息している強力な魔獣の目撃例が頻発しているのだ。このままではより強力な魔獣の分布域が人の生活圏に接近する可能性があり、そうなれば都市は深刻な被害を被ることとなる。これを未然に防ぐために異変の中心地であると予想される古代樹の森奥地に冒険者が派遣されることになったのだ。そして今回の依頼の依頼元は冒険者ギルドである。正確にはギルドの防衛戦略部からの依頼であった。この防衛戦略部は都市とその周辺の平和と安全を維持するために設立された部署である。その性質上、都市や国とも密接な関係にあり、男たちが都市に住んでいる以上防衛戦略部からの依頼を下手に蹴ることは出来なかったのだ。彼らは四人組の冒険者グループで、名前は『アルマジロ』といった。
『アルマジロ』の一人、大きな斧槍を担いだ無精髭の大男が小声で呟く。
「…ずいぶんと静かだな」
「静かすぎるよ。魔獣の気配どころか虫の声すら聞こえないなんて…。どう考えても異常だよ」
導入だから、短い。すごい短い。
ていうより、書くってすごい難しいね。