第7話 ある事実
(えっと……秀の家、秀の家……)
学校の帰り道、秀の家を訪ねようと歩いていた。目の前には、団地やマンションが並んでいるが、秀の家は一軒屋のはずだ。
(いりくんでてわかりにくいなぁ……) 久しぶりに行くのでうろ覚えだ。ちゃんと行けるだろうか。右手の道路に、一軒屋の並びが見えた。確か赤い屋根の家だった。
(あ、この並びかな?)
てくてくと歩いていくと、赤い屋根に白い壁の家が見えた。表札に《児島》と書いてある。
(あ、ここだ!)
ドキドキしながら、ピンポーンとボタンを押す。
はーい、と中年くらいの女性の声がした。ガチャッとドアが開くと、年はいっているが整った顔、うっすら栗色の髪、白い肌の女性が出てきた。
「あら、貴方は……?」
和葉は緊張している。息を飲んで、声を出した。
「あ、あの、私、桜井和葉と申しますが……」
「あら!?和葉ちゃん!?」
女性はビックリした顔で、嬉しそうに言う。
「大きくなったわね~和葉ちゃん!秀一がいつもお世話になってます」
ペコリとお辞儀をする。和葉もお辞儀をする。
「お久しぶりです、おば様」
年こそいっているが、まだ若々しい母親だと和葉は思った。まさに見目麗しい。秀は母親似だ。
「あの、秀は……?」
「まだ帰って来てないのよ、ごめんなさいね。一体何してるのかしら…ー」
和葉は唾をごくりと飲み込み、勇気を出して言った。
「秀のことなんですけど、ちょっと変なんです……」
「変?秀一が?」
「はい……あの、何か、心を閉ざしてるというか……」
あー、と母は視線を上に向けてこう言った。
「普段からあの子はね、そんな感じなのよ。私達親にもね」
「え、そうなんですか?」
和葉は意外そうに答える。
「そう、だから、和葉ちゃんには感謝してるのよ。秀一と仲良くしてくれて……」
「……」
(両親にも心を閉ざしている?しかも普段から……知らなかった……)