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想い出のバラ園  作者: 月野メグ
5/10

第5話 涙

それでも精一杯の愛嬌で「おはよう」と返していた。無理してるな、と和葉は思う。秀が席に座ると、和葉は立ち上がり、秀の方へ向かう。

「秀、おはよ!」

和葉が元気よく笑顔で挨拶すると、秀は視線を和葉の方へ向けた。少しだけ見つめると秀は、

「ああ、おはよう」

とさっきの女子達とは違う感じで返した。和葉は、少しだけ嬉しかった。

「ねぇ、昨日LINEしたんだけど……見てくれたのよね?」

秀の視線は真正面を向いている。何も答えてくれない。

「……秀?」

和葉は秀の顔を覗きこむ。秀は、少し不機嫌そうに答えた。

「……いいから、僕の事は放っておいてくれないか」

「え……」

和葉の目の前が、真っ暗になった。どうしてそんなに突き放した言い方をするんだろう?和葉はそう思った。今まで何でも話してきたのに。幼い頃からずっと遊んできたのに。あんなに仲良しだったのに。

「何で?秀、どうして……?」

和葉は泣きそうになる。秀は和葉の顔を一瞬見ると、スッと立ち上がってどこかへ行ってしまった。

(そんな……放っておいてくれなんて……何で?何でよ?秀……)

和葉は秀の姿を教室から出るまで、ずっと見つめていた。あまりのショックにポカンと立ち尽くす。親友の加奈が、心配そうに寄ってくる。

「和葉、大丈夫?」

両手で顔を隠す和葉の肩を、加奈はゆっくりと揺らす。

「……うん、大丈夫。……大丈夫だよ」

そう言うと、和葉はポロポロと涙を流した。

加奈は和葉の肩を優しく擦ると、ハンカチを差し出した。ハンカチでも拭いきれないほどの大粒の涙をこぼした。朝の教室で、和葉は加奈以外の人に悟られないように、泣いた。泣きすぎて嗚咽が出た。

とにかく胸が苦しかった。和葉はなんで自分でもこんなに苦しいのかわからなかった。こんなに涙が出るなんてビックリだ。涙を止めたかったが、あふれでてくる熱い雫は一向に止まらない。その日一日、和葉は大泣きした後の腫れたままの目で過ごした。秀とも目を合わせることもなかった。苦しい一日だった。

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