第2話 秀の影
和葉が少し呆け気味にそう言うと、加奈は笑顔を崩した。
「どうしたの?元気ないよ?」
心配そうに加奈が言うので、和葉はためらった。
(言ってもいいのかな……)
明るかった頃の秀とはうって変わって、あの影を落とした表情ーー生気の無い目が、和葉の脳裏にちらつく。秀の身に何かあったのか。和葉は心配でたまらなかった。加奈は親友だし、信用できる。話しても秀を傷つけることはしないだろうと和葉は思い、加奈に話した。
「え、児島君がおかしい?」
「そうなの……」
和葉は物憂げに話す。
「児島君て和葉の幼馴染みでしょ?確かに雰囲気変わったかも」
「でしょ?」
和葉はそう言うと、フゥとため息をつく。加奈は、秀を心配する和葉に思うところがあったのか、こう言った。
「……児島君のこと、好きなの?」
「え!?」
加奈の口から思わぬ言葉が出てきたので、和葉は取り乱し、顔と耳まで真っ赤にした。
「わ、わかんない、そんなこと……。ただ、秀とは何でも話してきたから、心配なの」
和葉の心情を汲み取ったのか、加奈は控えめに笑顔で言った。
「そっか、心配なんだね」
「そ、そうだよ、もう……」
和葉は熱くなった頬に手を当てて、冷まそうとする。
フワリと、加奈の顔に桜の花びらが落ちる。
「あ、加奈、桜が……」
和葉はそっと手を出して、花びらを取った。
「ありがと。それにしても、桜キレイだね~」
「ね、ホント……」
桜の花びらがあちらこちらに舞っている。歩いていると、和葉は道沿いにある家のベランダに、たくさんのつるバラが咲いているのを見つけた。