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短編集

アニメが見たくて、それでずっと見てました

作者: タオニア


アニメの中の世界はすべて生きている。

草も犬も人間も。登場人物が暮らすその地球も。


アニメの中で永遠に生き続けると、アニメを見てくれる人はそう言う。しかしアニメの中の登場人物はそのアニメが終わればもう何もできない。


一般に、中の人と呼ばれる声優が、声を充ててくれなければ、叫ぶことも、声を出すこともできない。登場人物の人生は物語でしかない。





主人公はあるアニメにハマっていた。フィギアなどのグッズを大量に買い込み、原作本はそれぞれ4冊ずつ持っていた。

熱烈なファンだった。


しかし、人気の低迷によりそのアニメの打ち切りが決まる。その日から主人公は廃れていった。不登校になり、一日中ネットの掲示板に愚痴を書き綴っていた。


そんなある日、パソコンの前で寝落ちしてしまう。起きた時にはアニメの世界に入ってしまっていた。






主人公はとても喜んだ。


しかし主人公はアニメの中でも脇役だった。そしてそのアニメは主人公が大好きだったアニメだった。しかし、主人公が入り込んだくらいでは、物語が変わったりはしなかった。


主人公(脇役)が成り変わったそのキャラクタ-には友達がいた。

そして主人公(脇役)よりもそいつの方が早く出番が終わる。最後の出番は主人公アニメの達の身代わりになって仲間を助けるというものだった。



そいつはとても輝いていた。カッコよかった。


出番が終わった後のそいつは喋らなくなった。動かなくなった。そして死んでいった。


そいつの人生は終わったのだ。

そいつの物語の続きは無かった。

そいつの表情は泣いていた。

そういう風に見えた。



他の登場人物たちにも最後の出番が訪れた。


今まで散々見てきた登場人物達の人生が終わっていく。


その時主人公(脇役)は、あんなに好きで夢にまで見たアニメの世界から抜け出したいと思っていた。でもそんな時間は無かった。主人公(脇役)よりも先にヒロインの方が早くに最後の出番が訪れたのだ。主人公(脇役)は怖かった。



そして主人公(脇役)はヒロインを誘拐した。





原作者はスランプに陥っていた。

そして今日は最後のアフレコの日だった。重い足取りで現場見学に向かった。しかし、そこで待っていたのは思っていたのとは違うものだった。



そもそも最後のアフレコでは無かった。


今まで地味だった脇役に、ヒロインへの片思いという設定が追加されていた。


その結果、思いがけない展開になっていた。




主人公(脇役)は自分の物語が終わってしまうのが嫌だった。死ぬのが怖かった。


だから最後の悪あがきをした。

しかしこの為に、主人公アニメのとまだ出番が終わっていなかった登場人物たちが、結束してヒロインを奪還しに来たのだ。主人公(脇役)はヒロインを連れてひたすら逃げた。

逃げ続けた。


自分の物語の最後をなんとなく感じていた。

だからヒロインに告白しようとした時、主人公アニメの達に見つかってしまう。あっけなく取り押さえられる中、ヒロインが一瞬だけ主人公(脇役)を振り返った。


表情は分からなかったが、主人公(脇役)にとってはそれだけで幸せだった。





続編を制作するためのお金を出資してもらえることに。

原作者はこれをきっかけにスランプから脱出。

人気はV字回復を果たす。一発屋と呼ばれることからも脱出した。




「私は時々とても怖い思いをします。

ほとんど話したことのないクラスメイトに誘拐されたり、監禁されたりします。

でもそのたびに、言いようのない不安から逃れられます。私って、そういう…。

あっ、友達が呼んでいるのでこれで。」


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