美少女が俺ん家にあらわれました
「こんにちわー」
俺はこれから自分の家となる建物の一階部分にある喫茶店に入った。しかし、店内は薄暗く人の気配が無い。こういう場合、厨房の方を覗いてもいいものかと逡巡しながらも、その場に止まったままで、もう一度声をかける。
「あのー、すみませーん。誰かいませんかー」
すると、厨房の方からガッシャーーンという盛大なお皿が割れる音が聞こえてきた。それと同時に、
「セイラ!何をしてるんだい!まったく...片付けておくんだよ!」
おばさんが誰かを叱る声が聞こえる。
(うわぁ、怖えーーーー。もしかして俺、この人と暮らすのかな?マジかよ...)
俺がこれからの生活について不安に思っていると、ドシドシと地響きとともに、人が近づいてくる音が聞こえてきた。
「お客さんかい?すまないねえ、待たせちまって。それで?注文はなんだい?」
厨房から横も縦も俺より大きいおばさんが出てきて、俺に向かって豪傑(豪快じゃない)な笑顔で話しかけてきた。
思ったよりも愛想がいい。
俺は少し安心して、さっきの物音について恐る恐る聞いてみた。
「あの、さっき何かが割れる音がしたんですけど大丈夫ですか?」
「ああ、あれかい?うちの新人がちょっとね。お客さんが心配する必要なんてないんだよー、気にしないでいいから」
「そ、そうですか...」
迫力のある笑顔に少し怯えつつも、悪い人ではなさそうだ。すると、俺の肩に乗っていた猫が地面に飛び降りて、カウンターに立つおばさんに近寄った。
「おや、可愛い猫だねえ!よしよし。
しっかし、随分汚れてるんだねえ。あんた、どんな世話してるんだい!」
おばさんは俺を疑いの目でギロリと睨んで問い詰めてくる。
え、まさか俺疑われてる!?動物虐待なんてしてねえし!
「ちょっと!俺はーただかわいちょうだったからさっき森で拾っただけで!虐待とかひょんなことすーるわけないじゃーないでしゅか!
第一!俺がこんな小さな動物をいじめるような奴に見えましゅか!?」
盛大にかんでしまった。おばさんのとてつもない迫力に気圧されるとは、俺もまだまだなようだ。
(ヤバイ!俺、また死ぬ!)
俺は、殺されないように、せめてかっこいい叫び声を出す隙ができるくらいの防御力をもって身構えた。すると、
「冗談だよ!ハッハッハー!あんた面白いねー!」
「なんだー冗談ですかー、あっはっは」
俺の今の笑顔はとても引きつっていただろう。筋肉が変に動いた気がするが気のせいなのだろうか?
(気のせいでもいいけどな!顔の筋肉使えば小顔になるってよく言うけど、俺は小顔なんて目指してねえ。ていうか、顔デカイ奴が小顔マッサージに行くんだよ!元から顔小さい子はそんなこと気にも留めてねえ!)俺は何を言っているんだ...。ビビりすぎて言ってることが意味不明。
このおばさんは笑い方も大胆でデカくて大迫力だった。クラスに1人はいるうるさい奴など比じゃない。
「それで?あんたはここに何しに来たんだい?」
「ああー、俺な。俺も正直わかんねーんだけど、ここに泊まりに来たっていうのが正解なのかな?」
そう言われれば、俺はあの天の声から何も説明を受けていない。思い出したら、また腹が立ってきた。今度会ったら絶対ぶっ飛ばす!
「おかしな奴だねえ。待ってな。今予約を確認するから、名前を言いな」
「一条トウマ」
「はいよー。あ、そうだ。私の名前を言ってなかったね。私はアレア、この店の女将さ。みんなからはかあさんって呼ばれてる。あんたもそう呼びな」
(クレアじゃねえんだ!でも、みんながかあさんって呼びたくなるのわかるなあ。デカさからして頼り甲斐ある)
おばさんは名簿のようなものをペラペラとめくりながら自己紹介をしてくれた。
「あー、あったよ、一条トウマ。そういえば、あんた冒険者かい?その格好。ここに職業未定って書いてあるけど」
うっわ。俺の履歴はそんなことになってるのか。でもなんて言えばいいんだ?おっさんから何も説明されてねえぞ。ここに転移してきたって言っても頭のおかしな奴って思われるのがオチだ。ここは、当たり障りのないことを言っておこう!
「実は俺、冒険者を目指してここまで来たんだよ。この服は貰い物」
「そうかい。はいこれ、部屋のカギだよ。書いてある番号の部屋に行きな。ギルドは、あとで私が教えるよ」
「おお!かあさんありがと!」
俺はカギを受けとってかあさんに礼を言って部屋に向かった。部屋は最上階の3階の3つ部屋が並ぶうちの手前の場所だった。
俺は扉を開けて中に入った。
中は思ったより広々としていて、椅子、テーブル、ベッド、カーペット、タンスその他もろもろが全て揃っていた。
すると、俺に乗っていた猫が肩から飛び降りてカーペットに寝転んだ!そのドッロドロの汚れた体で!
「おい!お前ーーー!部屋を汚すな!お前は先にシャワーだ!こっちこい!」
俺は猫を抱いて急いで一階に向かうと、かあさんにシャワーの場所を聞いた。
「そこに共同のシャワー室があるからそこを使いな」
「ありがと!」
俺はシャワー室に入るやすぐにお湯を張った桶に猫を入れてゴシゴシと今までのイラをぶつけるように洗った。すると、汚れがどんどんと落ちていく。元からこびりついた汚れではないらしい。
洗い終わりには真っ白に輝く綺麗な白猫になっていた。
「うわぁ、お前って結構な美人猫なのな」
つい見とれてしまうほどに綺麗だった。綿あめのような毛を撫でると、毛が手に吸い付いてくるようにふわふわしている。
俺は綺麗になった猫を抱いて部屋に戻ることにした。途中でかあさんにミルク瓶を一本もらって来た。
部屋に戻ると、猫はすぐさまカーペットの上で丸くなった。もう寝そうな勢いだ。
俺はさっきもらったミルクを飲ませようと、皿に入れて猫の前に置いた。すると、くんくんと匂いを嗅いでからぺろぺろと可愛く飲みはじめた。
「俺も飲もっと!」
棚からコップをとって猫にあげても残った分のミルクを飲んだ。
「うんまーー!ミルクだけでこの味とか!クリームシチューは期待大だな!」
俺は勝手にクリームシチューが出ると期待した。まろやかな舌触りが気持ちいい。
「さて、そろそろあいつも飲み終わったかなぁ」
俺が猫の方を見ると、そこには!猫ではなくとてつもない美少女がちょこんと座っていた。#銀髪__シルバーブロンド__#は腰の辺りまであり、肌も雪のように白い。その上から真っ白なワンピースを着ているから、全体的にとても儚げだ。特筆すべきは頭だ。そこには、フッサフサの猫耳が生えていた。
俺は一瞬目を疑い、猫、じゃなくて美少女から視線をそらし、また見た。俺の目に狂いはなかった。正真正銘の猫耳美少女がそこにはいた。
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