The result of DQ
ド素人が書くスポーツ小説です。一応、自身の経験のあるスポーツ「水泳 競泳」に焦点を当ててみました。文章力向上を兼ねてボチボチと書いていきたいと思います。
ST1:The result of DQ
鼻につく塩素の香りと湿度の高い空間。
ムワッとした空気の場内に響き渡る喧しい歓声。
「ピーッピッピッピ、、、ピーーーー」
審判の笛の合図と共にすべてのコースの選手がスタート台に上がると、この耳障りな歓声が更に大きく激しくなる。
「昴流ー(すばる)!!」
どこからか僕の名前を叫ぶ声が微かに聞こえてくるが、よもや誰が叫んでいるかは今の僕には分からない。
両手を台の先端の淵に掛け、飛び込みの体勢に入る。しかし、招集所のベンチで始まった僕の四肢の震えは台に上がった今も収まらず、心臓は激しく鼓動する。
(どうしよう・・・どうしよう・・・)
今にも台から滑り落ちてしまいそうな状態を何とか堪えるのに必死になる。
「よーい、、、」
審判がスタートの合図を掛け、電子ピストル(?)を空に構える。
(よし。あと一瞬だ・・・あと一瞬・・・)
気づけば先程まで耳障りだった場内は一瞬のうちに沈黙になっていた。
「・・・ウッセ。」
隣のコースから聞こえてきたボソッとした呟きに思わず横を見てしまった。
「パアアアン」
ピストル音が鳴り響くと同時に一斉に選手が水中に向かって飛び込んだ。
横に気を取られていた僕は周りが飛び込んだ直後に慌てて飛び込んだが、おもいっきり足から落ちる形になってしまった。
(・・・あぁぁ・・・)
案の定、水面に入ると直ぐに体が沈んでしまった。
何とか足がプールの底に着かないように必死にキックをして浮上し、クロールを泳ぎ始めた。
隣のコースを見ると、既に5m以上先を泳いでおり、差はどんどんつけられるばかり。
25mのターンも壁との距離を上手く計れず、かなり手前で回ってしまった。足の指先がギリギリ届くか届かないか位の位置で壁を蹴り、再浮上するが、既に回りには誰もいなかった。
(ちくしょう・・・)
飛び込みを失敗して、ターンも失敗した悔しさもあったが、何よりもこのレースでビリになるのが恥ずかしかった。
後半の25mもやけくそに泳いだが、僕がいちばん最後に壁をタッチした。
(・・・)
何も言葉が出なかった・・・と言うよりも、これがレースなのかという脱力感であった。
ぼおっとしながらプールから上がると、僕のコースの計測係の中年女性の人がタイムを教えてくれた。
「50秒09です。でも、飛び込みの時に動いちゃったから・・・多分、失格になりますね。」
(・・・???)
失格の意味が理解できず、ポカンと立ち尽くしていると場内アナウ
ンスが流れてきた。
「只今のレース、6コースを泳ぎました柳澤昴流選手ですが、フライングの為失格となります。」
ぼくはこの時初めて知ったのだが、飛び込む時には必ず体を静止させなければなないのだ。
そう。あの横を振り向いた時に、僕の上体が動いていたみたいだ。
「ダッセー!フライングで失格とかさ、笑えるー!」
僕がポカンと立ち尽くしていると、隣のコースで泳いでいた(僕がフライングになった原因をつくった(?))少年に馬鹿にされた。
「だって、君がいきなりしゃべるから・・・」
何も言い返せない僕は言い訳をしたが、こんな事しか言い返せない自分が恥ずかしかった。
「残念やったなー、せっかくのデビュー戦だったのにー。失格やで失格!」
そう言いながら彼はケラケラと笑いながらプールサイドから消えていった。
【競技結果】
男子自由形8歳以下
1位 5組目5コース 池田 雅 (小2)
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失格 5組目6コース 柳澤 昴流 (小2)
無惨にも僕のデビュー戦は失格に終わってしまった。
そして、この1位の彼こそが僕を馬鹿にした口の悪い少年、池田 雅であった。彼は僕よりも1年先にスイミングスクールの育成コースに進級し、期待のルーキーと言われていた。
「失格・・・」
僕は暫く、競技結果の掲示板前に佇んでいた。
遠くでケラケラと笑う声を耳にしながら・・・。
「DQ DQ DQ しっかくー(笑)」
DQ:失格(disqualification)