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虚空(そら)の深淵  作者: 神井千曲
第一部
5/19

5話 深淵よりの使者

 その男は、ここにいるはずのない人間だった。

 二十代半ばで、彫りが深い顔立ち。つい先日まで坑道の奥で、俺と共に作業をしていた男。

 そう。あれは……

「レスター⁉︎」

 俺は思わず声を上げていた。

 とはいえこの空気の薄さでは、声はほとんど伝わるまい。しかし……

『よくここまで来たな、タツマ』

「……!」

 音声とは違う、直接脳内に響く“声”。

『彼は……』

 フォージが呟く。

「レスター。俺たちの仲間だ」

 本来は喜ぶべき再会だった。だが……

『あの通信の彼か。しかし……』

「ああ……」

『死んだはず、か?』

 レスターが俺たちの会話に割り込んでくる。やはり、電磁波での通信を傍受したのか。しかし、彼はそうした機器を持っているようには見えない。

「……そうだ。少なくとも、船内に残された通信記録ではな。それに……なぜお前はここにいる? そんな格好で」

『確かに死んださ。ビームの直撃をまともに受けてな』

「……」

 ならば、何故?

『だが、蘇ったのさ。“命”を“与えられて”な』

「何、だと……」

『我々の文明にも、そんな技術は無い』

 死者の復活。それも、遺体がほとんど残存していない状態での。未だ俺達人類は、そんな技術は獲得できてはいない。チラとフォージを見やるが、彼女の文明でも不可能な様だ。

『当たり前だ。所詮、数万年前に宇宙に進出したばかりの新興文明にそんな芸当など出来るわけもない。ましてや、その技術の大半は……』

『黙れ!』

 フォージの、意外なほど鋭い声。俺に知られてはまずい事があるのだろうか? とりあえず、そこに触れるのは避けたほうが良さそうだ。

「レスター……。お前は、誰だ?」

『誰だ、か……。お前には何に見える?』

「……」

 可視光線で見る限り、俺の知るレスターと寸分の違いはない。しかし、幾つかのフィルターを通して見た奴の姿は……

『あれは、死人……』

 フォージが呟いた。

 俺にもそうとしか思えない。サーモグラフィを通して見たレスターの体温は、この空間と同じ氷点下。少なくとも人類が生きて動ける温度ではない。

 最初、あれはホログラムか何かかとも思ったが、少なくとも俺のスーツのセンサーには、周囲と幾らかの温度差は存在し、実体あるものとして捉えられている。それとも、レスターそっくりなアンドロイドなのだろうか? それにしても、いくらか熱は発するはずだ。まさか……ゾンビか? 残念ながら、未だそういったモノにはお目にかかった事は無いが。

 それにしても、おかしな話だ。生命反応が感知されたのは、この場所だ。しかしこの場にいたレスターは、とても生命活動をしているようには見えない。

 あるいは、まだ“何か”が潜んでいるのか?

 ふと見ると、フォージも同じ事を考えていた様だ。周囲を探るように視線を送っている。

 そんな俺達の様子を気にする事なく、レスターは更に衝撃的な言葉を発した。

『死人、か……。ま、当たらずとも遠からず。この身体は一旦原子の塵に還った後、再構築したものだからな』

「……! まさか、この遺跡の力でか?」

『ああ。正確に言えば、遺跡の、“今”の主の“力”を利用してな』

「この遺跡の“主”だと……?」

 まさか、あの生命反応は……

『そう。この遺跡には、数億年前に封じられた“あるもの”が眠っているのさ。そして時々目覚めては、“呼んで(Call of)”いる』

「“呼んで”?」

『そうさ。精神波でね。その呼びかけに応える者が現れるのを待っていたのさ』

「まさか、お前が」

『ああ。生来僕にはそうした“力”が備わっていたらしい。この遺跡の深部に潜り、初めて分かった』

「しかし前回の調査では、何も発見できなかったと……まさか!」

『僕は一人、仲間とはぐれて遺跡の奥へと侵入した。何かに呼び寄せられるように……。そう、この遺跡の“主”が呼んでいたのさ。そして、この部屋にやってきた』

「……」

 あの足跡か!

レスターは前回の調査時、プロフィアで単独行動中、坑道の床を踏み抜いて下階に落下し、数時間行動不能になっていたと言っていた。その時に“呼ばれ”て最深部へと侵入していたという訳か。

 あのよろめくような足取りは、この遺跡の“主”に呼ばれ、虚ろなままにこの部屋まで導かれたからなのか。

『ここで僕は蘇生途中の“主”と出会い……ニエを捧げた』

「ニエ、だと?」

『それは、知的生命体の生命(いのち)、あるいは“精神”さ』

「まさか、お前は……」

『そう。前回の落盤事故。あれは俺が仕組んだモノだ』

「! なんという事を……」

『重力コントロールで落盤を起こしたわけだ。が、流石に全滅してしまってはまずい。イキのいい奴らの命だけ頂いて、ご老人には帰還してもらうことにした。老人の生命では、大して足しにはなりそうにないからな』

 しかし、落盤の犠牲者の中には……。

「ナスターシャまでも……。何故だ⁉︎」

『生命……そして知的生命体の感情。それら全ては“主”の“糧”となる。死への恐怖。絶望。そして……愛するものを失った時の悲嘆』

「まさか……」

『僕が捧げたものは、ナスターシャを失った“悲嘆”だ』

「……!」

『僕にとって、何より大事なものだからだ。あの時点では、まだ俺自身の命を捧げる訳にはいかなかったからな。知的生命体の“思い”というモノは、強ければ強いほどより大きな“力”を秘めるのさ』

 ……だから、ナスターシャを殺したのか。最早、ヤツには人の心は残っていない様だ。

「なるほどな。そして、何食わぬ顔で地球に帰還し、また俺達と共にここにやって来た訳か!?」

『……まっ、そういう事になるか。もっとも、事故の後はここでの記憶を消去していた訳だけどね。そして、僕が死んだ時にまた記憶を取り戻した』

 つまり、あの時俺と共に調査隊の結成すべく奔走していた彼もまた、“本来の”レスターであったのか。

『まさか、我らが送り込んだ調査隊もここの“主”に……』

 フォージの独語。

『そんな昔の事はおぼろげにしか分からないよ。ただ、経緯は同じだろうな。“呼びかけ”に答えた者が、ニエを捧げたのだろう』

『そんな……』

 同胞たちの末路に、フォージもやはりショックを受けたようだ。

『……さあ、おしゃべりは終わりだ。とっとと帰るがいい。僕は、ここでやる仕事がある』

 レスターは俺逹から興味を失った様に視線を外した。

「仕事、だと?」

 レスターの目論み。それはとてつもなく危険な香りがする。

『昨日の戦闘で、ニエは揃った。後は……この遺跡の“主”の眠りを覚ますだけだ』

 最早レスターは俺達の方に向き直る事なく、床面にしゃがみ込み、何かをしている。

 ここからではよく見えないが、何かを描いている様だ。それでも、確認すべきことがある。

「その主とやらが覚醒したら、どうなるんだ?」

『さぁね。なにせ、自分の創造主に対して深い恨みを持っているそうだ。今から復讐に向かうつもりらしいな』

「……その創造主とやらは、今も存在しているのか?」

『それは知らない。とりあえず、生きとし生けるもの全てを破壊し尽くせば、いずれ創造主にたどり着くことができるかもしれん』

「待て。それじゃあ、俺達も……」

『そうなるかもな。僕にもその心を知る事は出来ない。ただ憎悪に満ちていることだけはよくわかる』

「止めろ、と言ったらどうする?」

 その言葉に、レスターは手を止める。

『無理だね。誰にも止めさせないよ』

「そうか……力ずくで止めるしかないか」

『やるかい? もし手加減すれば……死ぬのは君たちだぞ』

 レスターは立ち上がり、俺達に向き直った。

 その身体から、言い知れない“何か”が立ち上るのが“視え”る。あれは、一体……

 しかし、今はそれを気にしている場合じゃない。何としてでも奴を止めねば。

 その為には……

「……」

 フォージに視線を送る。彼女を巻き込んでしまうのは気が引けた。だが、ここで奴を止めなければ、彼女の属する文明にも被害が及んでしまう。

 そんな気持ちを汲み取ってくれたのか、彼女も俺を見、頷いてくれた。



 すぐさま俺達は左右に分かれると、銃撃。

 幾筋もの光弾がレスターの体に吸い込まれ、眉間と胸部中央、そして腹部に幾つもの穴を穿った。

 しかしレスターは倒れなかった。一撃で致命傷になり得る場所に穴を穿たれながらもなお、不敵な笑みを浮かべて昂然と立っていた。その場所からは、血すら出ていない。

『なっ……』

 フォージが息を飲む。

「チッ……頭と胸撃ち抜いた程度で死ぬ様なヤワな奴じゃないか」

 ハンドブラスターを右腰のホルスターに収める。

 俺達は今まで幾つもの異星文明の遺跡を発掘してきたが、その中には異星人の遺したと思しき怪物が潜んでいる事もあった。そういった連中の場合、銃で幾ら撃とうが大して効きはしない。ヤツらへ対処法は、ナマス斬りにした後にグレネードなどで木っ端微塵にするのが一番だ。

 一気にカタをつける。

 このパイロットスーツは、簡易パワードスーツでもある。本来は軍の装備であり、強烈なGを受ける戦闘機やMT、ドラグーン――MTの上位機種だ――などのパイロットが着用する物だ。それを、発掘作業や白兵戦に対応するように調整してあるのが、俺の着用しているものた。

 そのバックパック内にあるジェネレーターをフル稼働させた。

「おぉ……」

 スーツ表面にスパークが走り、強烈な電流が俺の肉体にも流れる。その衝撃に肉体が悲鳴を上げ、一瞬硬直した。しかしそれに耐え、地を蹴って跳ぶ。

「フォージ、援護を!」

 左腰に下げた超振動ブレードの柄に手を賭けると、空中でロケットモーターを噴射し一気に加速。フェイントを交えつつレスターに接近。その間に、フォージの射撃がレスターを襲った。

『フン……』

 フォージの銃で撃たれてもなお、レスターは余裕の笑みだ。

 俺を迎撃しようとしたのか、レスターが右手を突き出した。

『!』

しかし、フォージの銃から放たれた光弾が右手首に着弾し、そこから先を吹き飛ばす。

 奴の意識が一瞬逸れた。

 チャンスだ。

 その隙を逃さず、セイバーを抜きざまに一閃。左肩から右腰へと斬り下ろした。

 これはただの超振動ブレードではない。パイロットスーツの掌にある給電ポイントからエネルギーを送り込むと、ブレードの刀身が淡く発光するプラズマで覆われ、更なる長大な刃となった。

 エネルギーセイバーだ。

 手応えあり。切断面からヤツの身体がずれはじめる。

 その身体の切断面、それは……筋肉も骨格もない、ただ均一な肉色の平坦な面であった。まるで粘土細工の人形の様に。

『やってくれるな……』

 しかし、ヤツの左手が動いた。ヤツは左手で右脇を抑えてズレを止め、身体を戻そうとしている。

 俺はすぐさま踏み込み、横一閃にセイバーを振るった。

 しかしヤツはニヤリと嗤い、先のない右腕を突き出す。

 だが俺は構わずセイバーを振り抜くが……

「グハッ!」

 衝撃を受け、吹き飛ばされる。

 不可視の障壁が、ヤツと俺との間に現れたのだ。

 ……バリアーだと⁉︎

 ヤツは超常的な“力”を操る能力まで手に入れたということか。

 だが、絶望的ではない。バリアーが展開される直前にプラズマの刃はヤツまで届き、右脇腹に傷を負わせていた。斬り飛ばされた身体の一部が落下する。

『タツマ!』

 フォージの悲鳴。

 彼女が発射した光弾もまた不可視の障壁に阻まれ、あらぬ方へと飛び去った。

 アレは粒子砲にも干渉するのか。人間サイズであるにもかかわらず、機動兵器の持つ防御スクリーン並みの事をやってのけるとは……。

 ともあれ、俺の身体に大したダメージは無い。すぐさま立ち上がると左手にセイバーを構える。

 そしてブラスター抜くと、斬り離され落下したヤツの身体の一部――脇腹の一部と右手――にショットガンモードで光弾を発射し、焼き尽くす。幸い切り離された身体には、バリアーを展開する能力は無い様だ。

 少なくとも、もうその部分を接合することはできないはずだ。

 だが、その間にレスターは身体のズレを直していた。切断面が次第に癒合していくのがわかる。

「チッ……」

 牽制の為、今度はレーザーモードにしたハンドブラスターを連射。

 レーザーであれば、不可視の障壁を突破できる。

 だが、所詮オマケレベルの機能であるので、出力不足だ。当然ヤツには大したダメージはいかない。

 俺の攻撃に痛痒を感じる素振りも見せず、レスターは左手を突き出た。

 何をしようというのか?

 そう思った瞬間、微かな“揺らぎ”が見えた。

「!」

 反射的に横に飛び、更に床で一回転して起き上がる。

 その直後、不可視の“何か”が俺のいた場所を通り抜け、背後の地面に叩きつけられた。

 巻き起こる振動。そうか、あれは不可視の衝撃波。おそらくはバリアーと原理は同じ“力場”を使っているのだろう。それを収束し、相手に向かって投射した訳だ。

 あれは厄介だ。

 その時、光の帯がレスターの身体に突き立った。

 フォージの放ったレーザーだ。

 フォージの銃は、俺のハンドブラスターよりも高出力の様だ。それを射撃中にわずかに銃口をずらし、“斬って”いる。

 だが、あまり目に見えて効果はないようだ。やはり“斬る”ような撃ち方では威力が拡散してしまうためか。

 ならば……

 俺はハンドブラスターをホルスターに納め、すかさずバックパックの側面にあるラックから溶断用レーザートーチを後手に取り出した。

 右手に持ったセイバーを打ち込むふりをするフェイント。そして、左手のレーザートーチを突き出す。

「これは防げまい!」

 レーザートーチ本体は不可視のバリアーに阻まれた。しかし収束した高出力のレーザーは、レスターの身体を灼いていく。

『……』

 微かにレスターの顔が歪んだ。

 だが、浅いか! 胴を両断するまでには至らない。

 また衝撃波を放たれる前に、飛び退る。

 その間にフォージはレーザーを連射し、レスターを牽制してくれる。

 しかしこれではラチがあかん。……一気にカタをつける!

 サイドステップ。そしてジャンプ。レスターの頭上を飛び越え、空中で前転しつつセイバーで斬りつける。

 だが当然の如く、バリアーに阻まれた。

 しかしそれは織り込み済み。すかさずロケットモーターで方向転換し、レーザートーチを繰り出した。

 同時にレスターは左手を突き出し、衝撃波を放つ。

「うおっ!」

『ぐぅっ⁉︎』

 レーザートーチのレーザーはヤツの左掌から前腕を肘まで貫いた。だが、それまでだった。

 レーザートーチはヤツの衝撃波を受け大破してしまう。

「!」

 エネルギーチャンパーが暴走し、大爆発を起こした。俺は直前に慌てて手を離し、ロケットモーターを噴射して離脱。だが、爆圧をまともに受け吹き飛ばされてしまう。

「クソッ……!」

 キリモミ状態で姿勢制御が上手く出来ない。このままじゃ……。

『タツマ!』

 フォージの声。俺を追って跳躍してきたのか。そして、俺の体は彼女に抱きとめられる。

「ダメだ、君まで巻き添えに……」

「大丈夫」

 接触したヘルメット越しに聞こえた声。その声はいつもの機械的な音声ではなかった。息遣いまでも聞こえる、女性的な声。しかし、やけに息が荒い様な……。

 彼女は着地し、俺をオブジェの陰に下ろす。そして、レスターに向き直った。

「!」

 彼女の宇宙服の脇腹には穴が開き、そこから赤い血がにじんでいた。

 まさか、俺を庇って……。

『やってくれたな』

 レスターの、微かに笑みを含んだ声。

 見ると、ヤツの右腕が鋭い槍のように変形していた。その先端は、わずかに朱に染まっている。あれは、フォージの血か。

 一方の左腕は、前腕部がほぼ吹き飛んでいた。先刻のレーザートーチの攻撃と、それに続く爆発によるものであろう。

 しかし残った上腕が伸び、触手状に変形していく。

 まるで不定形の生物が、人間の形に擬態していた様にも思える。

 いや、そう考えるべきだろう。かつての仲間、という感覚を捨てなければ、命取りにもなりかねん。

 フォージは右腰のポーチからシール状のものを取り出して、スーツの傷口に貼り付けた。応急処置用の絆創膏か。

『貴方だけに戦わせるわけにはいかない。後は、私が』

 フォージは決然とつぶやく。

「待て、その傷じゃあ……」

 止めようとする俺を振り切り、彼女はレスターに向き直った。



 レスターを睨み据えた彼女は、宇宙服の右腕にあるパネルを操作し……

 次の瞬間、彼女の身体は銀と赤の装甲に覆われていた。

 流体金属だろうか? 宇宙服の表面から滲み出るように現れて身体を覆い、見るからに強固な装甲と化している。

『ほう……』

 レスターの眉がぴくりと跳ね上がる。

 直後、左腕の触手がフォージに襲いかかった。

「避けろ!」

 思わず俺が叫んだ瞬間、彼女の姿はかき消えていた。

 彼女は何処に? ……上か!

 レスターの頭上に、銃を構えた彼女の姿。

『!』

 レーザーが雨あられの様に撃ち出され、レスターを襲った。

 身体を蜂の巣の様にされ、よろめくレスター。

 だがすぐさま立ち直り、右手の槍を繰り出す。

 フォージは空中でひらりと身をかわした。さらに繰り出される一撃も、宙を蹴ったように急角度で身体をターンさせてやり過ごす。

 あれが重力コントロールの恩恵か。

 そして彼女は銃を左腰のホルスターに収めると、今度は右腰に装備された筒状のパーツに手をかける。

 あれはプラズマ溶断兵器であるアークセイバーの類なのだろうか? ……いや、違う!

 引き出した筒の前端から、リボン状の金属板が飛び出した。そしてその全てを引き出すと、筒の後端にあるスイッチを押す。と、金属板に火花が散った様な光が走り、硬質化して長い棒の様に――いや、それは鋭い刃を備えた剣と化した。

 そして、彼女は軽やかに着地すると。剣を構えてレスターに斬りかかった。

 襲いかかる触手。

 しかし彼女の剣が一閃すると、触手の先端が斬り裂かれて床上に落下する。

 続けて襲いかかる右手の槍。

 これも彼女は華麗なサイドステップでかわしていく。

 そして、隙を見て踏み込み。いや、そう見せかけて攻撃を誘い、槍の先端を斬り飛ばした。



 強い。

 最初から彼女に任せた方が良かったんじゃないか、とも思えてくる。

 だが、少なくとも俺の元部下が起こしたことだ。俺の手でカタをつけるのが筋であろう。

 忸怩たる思いでその戦いを見守るしかないのか。

 ……いや、今出来ることをやろう。

 ハンドブラスターを構え、オブジェの陰から飛び出す。そして、彼女に斬り落とされた肉片をハンドブラスターで焼き尽くしていく。

 そうする事で、レスターの力を削ぐことが出来る……はずだ。

 事実、ヤツの身体は両腕をほぼ失い、攻撃も手数が少なくなっている。

 どうやらレスターは身体を失うにつれ、不可視の障壁を操る“力”も衰えているようだ。

 そしてとうとう、レスターはフォージの剣に直接身を晒した。

 逆袈裟の一閃。そして横一文字にもう一撃。

 レスターはバラバラになって地面に倒れた。

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