表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

ちがう、と言いたくなる気持ち

 静かそうで、ながい髪がきれいなおんなのこ。

「××から引っ越してきた梅田翔子といいます。皆さんと一緒にいられる時間は短いかもしれませんが、よろしくお願いします」

 黒板の前で、一礼。


 転校生は多くを語らなかった。

 でも中学生である僕の心の中には、何だかざわざわしたものが。

(……どきどきする)

 溢れかえって、たくさんの言葉になりそうで。

 早く彼女に話しかけてみたかった。



 お昼前の授業の終わり、右斜めに振り返るとかろうじて彼女が見える。

 席遠いなあ。

 彼女は廊下側の一番後ろで、僕は窓側の前から二番目だから仕方ない。……仕方ないけど、席が近かったらもっと普通に話しかけられるのに。

(こんのヘタレがっ)

 自分で自分に一喝入れて、最終的には酷く落ちこむ。勢いで机に突っ伏すと、掛けていた眼鏡の渕がガツンと当たって痛かった。

 そのまま顔だけを上げつつ限界まで首を斜め後ろに動かすと、やっぱり彼女(梅田さん)が見えるのだった。かろうじて。

 かろうじてと言うのは、梅田さんの座る席の周りを他の女子たちが囲んでいて、見えにくいからだ。

 転校生だもんなあ。興味を持たれるのは当たり前だろう。梅田さんに話しかけてる女子たち、ずっと笑っててすごく楽しそうだ。梅田さんも座ったまま何か喋ってるけど、……緊張してるのかな? あまり笑顔じゃない。


 もしかして僕と同じコミュ障タイプ……。

 親近感を持ってかなり嬉しくなった。まただ。またどきどきしてる。どきどきして、色んな浮わついた言葉が隙をついて口から漏れてしまいそうで、それもあの梅田さんの前でーー。ずっと後ろ見てたから首が痛い! もう!

「いでででででで」

「なに、育矢(いくや)って女子のストーキング始めたの?」

 首に手を当ててから前に向き直ると、普段は隣の席にいる祐稀(ゆうき)が正面に立っていた。

 お前の弱み握ってやったぜ、みたいな顔でニヤニヤされている。

「ムッツリだなお前」

「はあ? ちげえし」

「がはっ! 何がちげえんだよ」

 祐稀は一人で爆笑していた。爆笑しながら盛大にツッコミを入れてきた。笑いながら喋ってるせいか裏声が交じっている。

「だってたまたまお前のほう見たっけさ、アヒャー! 何か……何かずっと女子がいる同じとこばっか見てんだもん。ぼげーーーって! つーかさっきからフエッ、フオハハハハハハ! 顔赤いぞ? ん? さては育矢くん」

 笑い声が狂った鳥の鳴き声みたいになる奴、たまにいるよね。

「恋ですかな? ンンン、臭いますぞ」

「ちがっ! ちーがーいーまーすー」

 真っ先に否定したかったものの、こいつの笑い声につられて頬が緩んでしまった。つられたからだ。決して僕が浮かれているからではない。絶対に!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ