月夜に微笑む淫魔妃
ダアトちゃんとリリスさんの奇妙な友情の短編……と、どうしてこうなった
「ダアトちゃん、本当に良かったのかしら? かつての神の力を捨てちゃって……」
『禁誘屍人』の来襲から数日後……紆余曲折を経て、ダアトが魔皇リリス公認で生徒となった日の深夜、歓迎会の一二次会を抜け出したダアトは寮の屋根で月を見ながらリリスと語り合っていた……
「良いのよ、これで……あれは今のわたしには過ぎた力よ。今のわたしはかつて神だっただけの女の子なのよ」
「女の子、ね…………」
「……なによ、その沈黙は」
良い年なのに自分を可愛いという女性を見るような生暖かい目を向けるリリスに対して、ジト目でツッコミをするダアト……
そんな視線を受け流し、リリスは空を仰ぎ呟いた。
「月が綺麗ね、ダアトちゃん」
「月……? 月がどうかしたのかしら? あの朱い満月が……」
「んもぅ、ダアトちゃんったら感性がまだまだ子供なんだからぁ」
「だから、それはいったいどういう意味かしら!?」
小さな翼で空を飛びながら逃げるリリスと意味が分からないと追いかけるダアトの鬼ごっこは、ダアトが屋根から落ちて地上の真理に正面衝突するまで続いた。
「それで、そうなっちゃったワケか……」
寮の目の前で喧嘩をしていた真理ちゃん達(大きなたんこぶが出来ているが、ダアトちゃんが屋根から落ちたそうだ)の頭を撫でながら言った。
「そうよ、神河ユート。だから責任はわたしじゃなくて」
「それって責任転嫁じゃないかな?」
真理ちゃんの言葉に対してツッコむダアトちゃん……口調がおかしい? ハハ、ありのままの状態ですがなにか?
まあ、一応正しく言うけど……真理ちゃんの姿をした中身ダアトちゃんが、ダアトちゃん(略)真理ちゃんに対してツッコんだ。
「…………ハハ、どうしてこうなったのかな?」
そう呟き、魔女先輩に助けを求めようとドアノブに手を伸ばした……
直後、ドアが開いて額を思いっきりぶつけた。
『大変だよ遊斗君! 魔女先輩がかっとなっちゃってぼくとラビの中身を入れ替えちゃったんだ!』
目の前に突き出されたプラカードにはそんな事が書いてあった……
「…………よし、寝よう」
あれから一週間以上経ったのだから大丈夫だろう。きっとイズモ君さんが助けてくれる……
そう願い、後ろを向かずベッドへと倒れ込んだ……
……後頭部を強打し、気絶するように眠った。もとい、眠るように気絶した。
※この後(イズモ君さんが)無茶苦茶酷使された




