幼神と妖塊の交錯
深く暗い森の中、逃げていたダアトと、ダアトを追っていた真理は、どちらともなく立ち止まり、真理の方が口を開いた。
「ボクがキミと初めて会った時、どうしてあんなにキミに嫌悪感を……いや、憎悪の方が近いかなぁ? まあとにかく、キミはボクのお兄ちゃんを過去に一度殺した。なんとなくそうだと思ったんじゃなくて、さっきキミがお兄ちゃんを刺した時……キミとお兄ちゃんの精神が一瞬接触した時に、何故かボクもほんの一瞬だけ接触したんだけど……その時気付いたよ。何故ボクが初対面のキミに憎悪を抱いたのか……更に言えば、ボクの神の力がどういう経緯でただのスライムに……しかも、神に成ったお兄ちゃんの妹の魂が核になったスライムに宿ったのかまで、知っちゃったんだよ」
顔を伏せて沈黙するダアトに、兄のような口調……イズモの口調が少し混じっている程度だが……をした真理が告げた。
「キミは末期の瞬間、代替わりを認めようとしなかった自分自身を、無意識のうちに恥じていたんじゃないかなぁ? ……そうだよねぇ、あの戦いの時にキミはお兄ちゃんを殺した後に、神として蘇ったお兄ちゃんと二度戦い、そして負け、その後情に絆されて自殺するように散ったんだったかなぁ? 多分その時じゃないかなぁ? 罪滅ぼしのつもりだったのか偶然なのか、それとも運命だったのかボクには分からないけど、結果論的にはその時ボクに神の力が宿った。恐らく、キミの末期の感情の欠片と一緒にね……」
「……そう、だったのね……この、心が引っ張られるような、感覚は……」
「多分そうじゃないかなぁ? キミの場合は欠けた神の力がボクの神の力に惹かれてそうなるんだろうし、ボクの場合はキミ自身……『ダアト』という存在に対する嫌悪感が力に混じっているから、キミに対してイラッとしたんじゃないかなぁ? まあ、今のボクは他にもキミにイラッとする要因はあるんだけどね……」
「………………」
「まあ、ボクもあの件であまりキミを責めるつもりは無いんだよ。ボクもあの状況ならお兄ちゃんを刺していたからねぇ……でもね、キミの精神とリンクした時に知った事があるんだけどさぁ……」
そこまで言って、真理はダアトの顔色を窺った……
ダアトは俯きながら戦々恐々とした表情で真理を見ていた……
「まず1つ目は、キミが神の力を失ったのは一種の呪い……いや、力の一部を持って復活したという意味では、祝いになるのかな? しかも、ほとぼりが冷めてきたこんな時期に蘇ってくるなんて、凄く運が良いねぇ
そして2つ目に、キミ自身も知ってるだろうけど、キミが神として復活するには無数の神の力の欠片を集めるかボクの持つ神の力をお兄ちゃんの手でキミに分け与える必要があるんだよね? 前々から素直に言ってくれたら考えなくはなかっただろうけど、もうボクはキミが嫌いだから嫌だよ。
そして3つ目、キミがお兄ちゃんを刺す事を選んだ一番の理由ってさぁ……ユートを殺したくなかったからでも、お兄ちゃんしか選びたくなかったワケでもなく、ただ『神河イズモ』の妹である『神河真理』を……ボクを怒らせたかったからだったんだよねぇ?」
「そう、よ……神河イズモには申し訳ないと思っているわ」
「あのさぁ……ふざけてるのかなぁ? 確かにキミがお兄ちゃんを刺した時ボクは腹が立ったよ? キミの精神と少しだけリンクする直前だけは……でもね、キミの真意を……自殺願望を知った時、正直呆れたよ。キミはどうしようもない馬鹿だって」
ダアトを睨み付けながら、拳を握り締めた真理はダアトへと歩み寄った。
「だからさぁ……まずこれは、ボクの怒りの分」
パァンと、真理が平手でダアトの右の頬を叩いた。
「…………、」
「更にこれもボクの怒りの分……汝右の頬を打たれたら左の頬を差し出しなさい、だっけ?」
パァンという鋭い音を響かせ、真理がダアトをはたいた。
「そしてこれは、お兄ちゃんの痛みの分」
ペシン、と、先の2回より優しく平手打ちした。
「そしてこれはユートを心配させた分とボクの怒りの分とリリス様との御約束を破った罰とボクの怒りとその他諸々とボクの怒りの分!」
最後と言わんばかりに真理はダアトの両の頬に往復ビンタをくらわせた。
「……ダアト、ボクはとりあえずこれで許してあげるから、一緒にお兄ちゃんに謝りにいこう?」 往復ビンタで倒れ込んだダアトに対して、暗にもうこれで許したと、真理が手を差し伸べた
今更補足ですが、ブチギレユートの攻撃力は瞬間で神補正による幸運抜きにしたイズモに並ぶレベルですが、すぐ力尽きてしまう軽巡夕張系男子のため、はっきり言って強くないです。
いつもの3人に限っても、ドラグには飛ばれ真理には避けられミラには近付く前にやられる等、かなり貧弱です。
攻めは強くて受けは弱い(意味深)
†白屍姫†「……つまり誘い受けか」
ノーム「……ギンユー……薄い本が熱くなる」
ユート「新キャラが2人いるんですけど!?」
†白屍姫†「…………和久名め、出番を寄越さぬばかりに我がこのような……!」




