人は拾った幼神を保護出来るか? その9
「……クク、怒りに身を任せ我を斬ろうとするか……」
仮面の男が口を開いたが、即座にその顔は縦に斬られた……
……魔力の剣は魔女先輩に使うなと言われた禁じ手だが、切り刻んでも斬り刻んでも気が済まないこいつを斬るにはこれぐらいしなければなるまい……
魔女先輩やラト、それに真理ちゃんを傷付けただけでなく……もし本当に『禁誘屍人』というニャルラトホテプなら……かつて人間だった頃の魔女先輩やラトを言葉巧みに唆したような悪人だ。
「無駄だ人間風情が!」
仮面の男が首を掴んで持ち上げてきたが、両腕を斬って再び急所を斬る……
「不死身の『禁誘屍人』たる我にそのような温い攻撃が通用すると思うたか!」
今度は『禁誘屍人』の抜き手が頬を掠めたが、一切顧みず首を落とした
「やめやユートはん! そいつの命削るには効率悪すぎや! それに……そもそも、アンタの体が耐えきれんやろうが!」
「…………止めないで……下さい……」
『禁誘屍人』の心臓を貫き、魔女先輩に対して呟いた……
「その手は最後の手やから、使わな死にそうな時か確実に相手を殺せる時にしか使うなゆうて」
「…………こいつを殺し足りなくて殺せなくても……僕が……絶対に殺して……」
脳天への狙いが逸れて目を貫いた……
……予想以上に消耗が激しく、疲労状態からくる眩暈で狙いが逸れてしまった……
「………………」
限界まで刺し続けていたからか、口を開くのも難しい程の疲労が僕の全身を襲った……
「………………ま、だ……」
まだまだ戦いたかったのに、僕は眠るように倒れた……
「ク……クク……クハハハハ! 所詮は愚かな人の子の業、これでは犬死にではないか!」
「ユートさん!」
『禁誘屍人』はボク達の目の前で、まるで見せしめのようにユートさんを持ち上げた……
「こいつの命が惜しいか? クク……ならば選ばせてやろう、神河イズモの命か! こいつの命か!」
「…………」
「卑劣な奴デス……!」
「そんなん……選べるわけないやろうが!」
『禁誘屍人』は片手でユートさんを掴みながら、もう一方の手でダアトちゃんを指差し言った……
「ダアト、貴様が選ぶのだ……片やわずかな時間とはいえ仲良くなった少年、片や切札である神の少年……貴様はどちらを殺し、どちらを生かす?」
ダアトちゃんは肩を震わせながらボクの方を振り向き……
「…………ごめん……なさい……神河、イズモ……」
ボクへと歩み寄り、手に握っていたナイフでボクを刺した……




