一方その頃のマコト君
「遊斗君どこなのぉぉぉぉぉ!」
橋渡し役(正式名称は絶賛募集中)であるぼくこと朝倉マコトは、遊斗君が転落したと思わしき岩場から海に飛び込み、叫んだ。
真面目に彼は事故死しましたじゃ済まない。下手をしなくてもぼくのクビが飛ぶ。下手をすれば頭に鉛玉が撃ち込まれる。
……冷や汗が止まらない。さっきから冷や汗が滝のように流れている……
『もしもし……マコト君か……ところで、もしユート君が見つからなかったら……分かっているね?』
さっきラトさんにかけた際のメッセージがさっきから脳内で何度も反響している……
……万が一遊斗君が見つからなかった、もしくは死んじゃったら……もう首を吊るしかないね、うん……
「やっほー! 縦笛蛸笛口笛やっほー!」
「どうしよう……イズモ君、こんな時君がいてくれたら……」
「やっほー! って言ってるでしょ! なんで無視するの!?」
考え事をしてて気付かなかったけど、人魚の子……確かシー・A・マインちゃんだったか……がいつの間にやら目の前にいた。
「橋渡しの人! ユートさんならちゃんと生きてるよ! 今ちょっと水神様に招かれてるけど!」
「…………よかった……ありがと」
「ねぇ橋渡しの人……」
マインちゃんがぼくの肩を叩き、あくどい笑顔で耳元に口を寄せてきた。
「アタシ達姉妹と水神様の姉弟、いろいろあってアイドルになるつもりなんだけど……ちょ〜っと口利きして権力を振りかざして、スタート地点を上の方にしてくれない?」
「うん、問題ないよ。むしろその方が好都合だからね…………その手があったか……アイドルがいれば親近感が湧くし、狙いづらくなるし……上の上といったところだね」
「……フフフ、おぬしも悪よのぅ」
「いやいや、マインちゃんほどではございませぬ」
水面にたゆたいながら、悪代官のように黒い笑顔を見合わせ言った。
simple2000 The 悪代官




