人は学を修められるか?その7
メタトロンさんが一晩でやってくれました
3日目の朝……起きた時には既に目隠しをして輸送させられていた……
率直に言うなら、誘拐されていた。いや、真面目に誘拐されていた……
「…………はぁ……」
「どうしたのでありますかユート殿、溜息をすると幸せが逃げていくでありますよ?」
「…………犯人はアンタか!」
メタトロンさんには色々と聞きたいことがあったが……どうして僕を誘拐したのか、どこへ向かうつもりなのか、誰に頼まれたのかエトセトラエトセトラ……かなり面倒な量になるのでとりあえず一つずつ聞いていくことにした。
「そもそもなんで僕を誘拐したんですか? 誘拐するならマコトさんが」
「マコト殿も、ユート殿の後ろにいるのであります」
「ゑっ? じゃあなんで」
「依頼されたからでありますが何か?」
「…………報酬は?」
「大きな真珠であります。時価にして百万円はあるかもしれないでありますな」
「……え?」
大きな真珠、かなりの価値があるというそれを持っているとあらば、容疑者は相当絞られる事になる……
洞窟住まいのエキドナさん(既に一度誘拐された)とミラさんはまず除外できるだろう。魔界の中に海は無かっただろうし。それにエキドナさんは実力行使に出るだろうし。
それに、部下まで揃って虫系統のイアリちゃんはそもそも真珠の存在すら知っているか微妙だし(というか、メタトロンさんに頼むよりもダリアさんに頼むだろうし)、真理ちゃんにしても直接僕をさらうだろうし……
アリスちゃんも、誘拐するより夢に現れるだろうし……
いや本当に誰が犯人なの? まるで見当もつかない。
……そういえば大きな真珠、だったか……じゃあ、犯人はマインちゃん……なのかな? 最有力容疑者は、だけど。
「……ついたのであります」
ドアが開いて、最初に気付いたのは海の匂いだった……
「…………海の……近く?」
目隠しを取られた後、周囲を確認するとそこは海がすぐ近くにある公道の脇だった……
「ちゃんと駐停車可能な場所だから心配は要らないのであります」
「いや、心配事はそこじゃないですから……」
しかし、この場所に何かの既視感を覚えてしまう……
「ユート殿、あなたの記憶は朧気かもしれませんが、確かにユート殿はこの場所に一度来たことがあるのであります……依頼人に聞いた話でありますがな……」
「……依頼人?」
「…………これ以上は何も言わないのであります。あとはユート殿自身が自分の目で確認してください、であります」
駄目な攻略本みたいな事を言い、メタトロンさんは海に向かえと言わんばかりに僕の背中をそっと押した……砂浜ではなく、引き潮になって露わになっている、ゴツゴツとした岩場へと……
「……メタトロンさん、サンダルか何かありますか?」
「サンダルフォン、でありますか?」
「サ! ン! ダ! ル! そもそもサンダルフォンって誰ですか!?」
「あ〜……マコト殿のサンダルでありますが……」
そういって、メタトロンさんはトランクに積まれていたマコトさんを転がすようにズラしてその下からサンダルを取った……
「わたしはこの後色々する故に、しばらく向こうに行っていて欲しいのであります」
……うん、まあ……どうしてこうなった。いろんな意味で、どうしてこうなった……
イズモ「今回は日本に置ける伝説の人魚、八百比丘尼……真理ちゃん、知ってる?この字読める?」
真理「ちゃんと知ってるし。あと、お兄ちゃんが言ってくれ……え?あれ……お兄ちゃんはどうやって発音したのかなぁ?」
イズモ「…………正解はやおびくに、です
今回は八百比丘尼がテーマですよ皆さん」
真理「その伝説も元凶は妖怪の仕業なのかなぁ?」
イズモ「元も子もない事言わない
大まかな話の内容だけど、人魚の肉を食べてしまった少女は最低でも八百年間を生きていた……っていう伝説で、真理ちゃんも名前だけなら読めなくても一応知ってたかな?」
真理「う~ん、妖怪○ォッチにいたような……」
イズモ「えっ、『火の鳥』(異形編)じゃなくて?」
真理「えっ?」
イズモ「えっ?」




