人は蛇に勝てなかった
最初の襲撃から数日……いくつかの偵察目的であろう接近を除けば、表面上は平和だった……
……平和というかなんというか……牙を研ぎ澄ましているような、不穏な休息だったが……
結果から言えば、その予感は見事に的中してしまった……それも、おそらく最悪の形で……
「…………!」
首を絞められて必死に足掻くも、無駄だと言わんばかりにまるで身じろぎせず、大蛇は僕の首を締め続けていた……
「そうだ、その顔だ……素晴らしいな、貴様の苦しむ顔は……」
「………………!」
「そうだ、憎め……儂を憎むのだ……! その憎しみこそ儂の……儂があ奴らを滅する力になるのだ……!」
どうやって校舎に侵入したのか、どうやって僕を尾行したのか、どうやって僕が1人になる時間を知ったのか。そんな事は分からないけど、ただ一つだけ推測出来る……
この場所など人気のない場所をたまに通っていた中で、人通りの少ないどころかほとんど人通りの無いこの場所で僕を襲った理由があるとすれば6、7割方誘拐する為だろう……
だからどうしたという気休めな理論だが、少しだけ落ち着いて……ほんの少しだけ落ち着いて行動出来た。
「…………っ!」
「窓を蹴破るか……無駄だ! 助けなど来んわ!」
窓を蹴ったのは助けじゃない……
…………黒に染まりつつある意識の中、誰かがこの窓が割れていること……そして『床』に気付く事を祈った……
「ったく……「割れている窓を放置するなんて生徒会長の怠慢だ」、つってもなぁ……!」
夕暮れ時、授業でもほぼ使われていない実習棟の中庭に、生徒会会長と副会長がいた。
「まあ仕方がないだろうな。実際、貴様は仕事をするイメージが無いのだからな……だが、見回りなどといった簡単な仕事しか能のない貴様がこのような凡ミスを犯すなど、失望したぞ」
「だぁっ! だから俺は昨日も一昨日も一昨々日も中から確認したし外からも見た! どこも割れてない事を確認した! つまり俺は悪くねぇ! もう一度言う! 俺は悪くねぇ!」
「だが……割れているという事実がある以上」
「大方、どっかのアホがアホな事をやって割っちまったんだろ……ま、窓を直すのはオレ達の仕事だけどな……」
「無駄口を叩く暇があれば、さっさと窓の応急処置に向かえ」
「…………なあ、前々から思ってたんだが、これって生徒会会長じゃねぇよな?」
ガイギンガが真理を呟いたが、ドラグには無視された。
「……ったく、どこの誰だか知らねえけどいい迷惑だっつーの……」
「…………ギン、ここを見ろ」
わずかに散らばったガラスの破片の辺りを照らしながら、ドラグが言う。
「あん? ……血痕に……引きずられた跡か」
「ああ……乾いてはいるが、まださほど時間は経っていないようだ……」
何かを引きずった跡……その続く先を見つめ、ドラグが言った。
「ギン、今すぐディアボロス殿を呼んでこい。カタキを見つけた、といえばサラマンダーよりはるかに素早く飛んでくるハズだ…………今すぐに行け」
「はいはい……って、カタキってちょっと待て……姉貴がすっ飛んでくるような要件ってまさか……」
「…………十中八九ガラガル家絡みだろう。分かったら行け」
行けと言ったものの、ドラグが気付いた時には既にガイギンガは居なくなっていた……
「……ユート、無事で居ろ」
誰も居ない実習棟で、ドラグが呟いた
\デデドン!/
イズモ「…………休みですか?」




