蛇娘は辛き過去の悪夢を見るか?
ミラさんの過去の話とその関連話。つまりミラさん回です
「………………!」
どうして……? どうしておとうさまはみらをしかるの? どうしておとうさまはみらをなぐるの? おとうさま、みらがなにかした? おしえて……
どうしておかあさまはみらがわるくないというの? どうしておかあさまはじぶんがわるいというの? それじゃあどうしておとうさまはおかあさまじゃなくてみらをしかるの?
……どうしておかあさまはみらをたんすにかくすの? おかあさまはなにをするつもりなの?
どうして…………どうしておとうさまはぐったりとたおれているの?
おかあさま……おしえてください……
どうしておかあさまは……
「……ラさ……ミラさん……! ミラさん!」
「ユー……ト……?」
「ミラさん大丈夫!? 夢で魘されてたみたいだったけど……!」
「夢……ですの……?」
忌まわしい過去の夢でしたの……あの男(あいつを父親などと呼ぶのは真っ平御免ですの)の虐待がトラウマになったわけでも、あの男の死体がトラウマになったわけでもありませんの。
ただ……ママがあんな奴の為に罪を背負わざるをえなくなった事が……ちょっとしたトラウマになっているんですの……
「夢……?」
「…………ただ辛い過去の夢を見ただけですの……」
「…………大丈夫?」
「……ユート、甘締めさせて欲しいんですの」
「え、まあ……別に良いけど」
返事を聞いて、ゆっくりと下半身の尻尾をユートに巻き付ける……
「…………ところで、どんな夢だったの? あ、別に言わなくて良いよ。言いたくないなら言わなくても良いし、悲しみや苦しみを共有したいと思ったら相談してくれても良いよ。あくまでも同居人の僕に出来ることなんてそんな事ぐらいしかないからね……」
…………わたくしはどうすればいいんですの? ユートに話せば気持ちが楽になりますの? それとも……
……ユートの眼、澄んでいますのね…………もしかしたら、ユートならわたくしを救ってくれるかもしれませんの……
ユートなら……わたくしのパパに……
「…………パパ」
「………………」
「ユートパパ……」
「……………………なんで!? なんで僕をパパって呼んだの!?」
「……あっ……な、なんでもありませんのよ、パパ」
「……いやだからパパって……?」
「なんでもありませんの」
「アッハイ」
やらかしてしまいましたの……
それはそれとして……心なしか伝熱効率が上がった気がするんですの。
「ユート、これから話す話は口外してはいけませんの。特にママには言ってはいけませんのよ?」
「…………うん」
「分かった〜」
…………真理がいつの間にか起きてしまっていましたの。
「それじゃあ真理ちゃんは1時間ほど外に行っててくれないかなぁ? ……言葉を選ばない言い方をするけど、今から大事な話をするから、口を挟まないでほしいから外に出掛けててくれないかな? ドラグさんとの決闘ぐらいは僕が許可するから」
「う〜ん…………しょうがないな〜じゃあドラグにはミラとユートが激しい運動してるからしばらく放っておこうって進言しておくね〜?」
出来ることなら今すぐにでもそういうことをやりたいんですの……
「真理ちゃん、激しい運動の下りは要らないからね?」
「分かった〜」
「ねぇユート……わたくしの父親が死んだのは知っていますのね? ママが言っていた話ですの」
「……うん。既に割り切ったのかは夫婦仲が良くなかったのかは分からないけど…………あの態度はどこか引っかかるような……」
「…………おそらく……ママが……殺したんですの」
その言葉に、ユートは無言で応えた……
「…………でもそれってさ、それだけ父親として以前に男としても酷い輩だったっていう事だよね? あのエキドナさんがそこまでするほどに怒るっていうことは」
「………………」
ユートの言った言葉は確かに的を射ているんですの……
ママの堪忍袋の緒が遂に切れただけなのか、それとも何か別の要因があってあの男を殺すに至ったのか……
…………嫌な予感がしますの。これが蛇の勘という物ですの? ……悪いことが起こらなければいいんですの…………




