人は夢魔と遊べるか?
遊び(卑猥の一切無い)
「ねぇねぇおにいちゃん? きょうはなにしてあそぶの?」
夢なのか現実なのかはもう正直どうでもいいから、とりあえず一言……
「またこれか……」
アリスちゃんが夢の中で作った場所なのか、それともまたミクヤさんにさらわれたのかは分からないけどとりあえず分かることは、ホテルの一室のような空間にアリスちゃんと2人きりということだ。
「そういえばおにいちゃん? ミクヤがやってた、かーどげーむってなぁに?」
「カードゲーム? ……どんなの?」
「これっ!」
そう言ってアリスちゃんは、洋服のポケットから2つのカードの束を取り出した。
「…………あ、懐かしいカード……って、なんでこっちの世界に有るの?」
「しらない。ミクヤがしりあいにゆずってもらったっていってた」
「知り合い…………まあ、僕も謝るから後で返せばそんなに問題ないかな……? まあそういう問題じゃないかもしれないけど」
ついつい自己完結してしまったが、知り合いに譲ってもらったというものを無断で持ち出したことは誉められたことではないだろう。
「おにいちゃん……カードゲーム、しよ?」
「うん!」
アリスちゃんがやりたいと言ったのだから、きっとミクヤさんも納得してくれるよね?
一方、その頃のミクヤは……
「……王遊戯のカードが行方知れずに……アワワワアワルティア……色々あってイズモさんから頂いた大切なカードが……ななな……ない!?」
徹昼明けの夜(夜行性のサキュバスの特性上、昼はだいたい寝るのである)、ミクヤは久し振りに帰った自室にて叫んだ。
持ち運べる物だからという理由でバッグの中に入れていたため、割と自業自得の面もあるが。
「あのカードがないと……それに、根本的にかなりあのカード自体初期ロットの物で、向こうでもかなりレアらしいし……」
そこでふとミクヤはある可能性……もしくは真実……を思い当たった。
「…………アリス様、もしかしてユートさんとやりたくて、わたしの持ち物から持ち出しちゃったり……?」
その可能性に行き当たったミクヤは冷や汗が止まらなかった。
なにせ、イズモがまだ10歳にも満たなかった頃の思い出の品なのだ。イズモにとって宝物である可能性の高い物なのだ。
「…………アハハハハ……アリス様、今回だけは恨みますよぉ……」
干物系アラサー女子、ミクヤの部屋に乾いた笑いが響いた。
「じゃあ……このカードをはつどーして、それからこのモンスターにこれをつけて、ダイレクトアタック!」
「うわ! また負けた……」
ミクヤさんの知り合いがどういう人かは知らないけど、かなりガチのプレイヤーなのかもしれない。
カードゲーム黎明期ではそれなりの強さを誇るデッキだった。流石にインフレの進んでいる今のデッキと戦ったらどうなるかは火を見るより明らかだろうが、遊ぶだけならこのデッキでも十分だった……といいたいけど……
「おにいちゃん……よわい?」
「うっ……」
デッキの問題もあるのだろうけど、それを差し引いても、僕ははるかに弱かった……
いつぞや乃原さんが言っていた「主人公になれそうな名前なのに弱いね、君」という言葉を思い出すほどに……
……あれ、なんか涙が出てきたよ。
「……あっそうだ!」
唐突に何かよからぬことを思い付いたのか、ポンと、手をたたいて叫ぶアリスちゃん……
よからぬことが始まる予感がする。直感だけど、酷い目に遭いそうだ。
「しぬきでやればうまくなれるかなぁ?」
そう言ってアリスちゃんはカードゲームのモンスターを、カードゲームアニメのように実体化させた。
「ひぇぇぇぇぇぇ!」
おたの死みはこれからだ
「ひぇぇぇ……壁の中から這い寄る電気ネズミが……」
「すぅ……おにいちゃん……」
「……おまえ達は何をやっているのだ、まったく……」
布団を被り、アリスを抱いて眠りながら悪夢にうなされる遊斗……カードの束を2つ持って、微笑みながら眠るアリス……その横で雑魚寝するミラ、真理、魔女先輩、シーを見て、呆れたように呟いた。
そして、ドラグが開けたドアからピンク色のウサギの人形が入り、魔女先輩を背負ってまた部屋を出て行った。
「…………センパイめ、またラビを酷使しおってからに……」
「……(フルフル)」
「……ああ、そうだな。これはお前の恩返しだからな……私は口出ししない方がいいな……」
「……(コクッ……フリフリ)」
「ああ、お休み。また明日だ」
イズモ「ボクの昔使っていたデッキも、今では二束三文のカードばかりなんですけどね。たまに数百円以上のカードもありますけど。地雷さんの動画のマスコットでお馴染みのシーホースとか、一枚うん千円のブルーアイズとか」
ミクヤ「ひ……ひぇぇぇぇ……!」




