人は配られたカードで決闘できるか?
遊斗「なにこのタイトル! 地雷さんに怒られるよ!」
ミーミル「パッパラパッパッパッパラパッパッパッパラパッパッパー! リバースシュ」
遊斗「こらーっ!」
ミーミル「いざとなったら逃げればいいのデス! このリバース(略)でかっとビングデス!」
SNPI「逃げるんか」
遊斗「先輩が30分間かけて組み立てたそのトランプタワーにラリアットかましますよ?」
この世で最も激しく熱かりしトランプカードゲーム、大富豪……!
今回は大富豪という決闘に命をかけた、5人の少年少女達の物語である……
「まあ、ぶっちゃけただの日常回に近いんだけどね」
「ぶっちゃけた!?」
……まあ、とどのつまりそういう日常回である。
「わたくしが大富豪だからわたくしからですの。……8切りして4枚階段で即上がりですの」
序盤から魔王が襲いかかってくるようなRPG、1面道中の雑魚が圧倒的な弾幕を放つような弾幕STG、コンティニュー画面なのに選択肢次第では死ぬ理不尽ゲー、序盤がコイントスで中盤に手札チェックが有り終盤が先攻1ターン目と言われたMoMa、相手が勝手に自滅していると思いきやライフを入れ替えられていつの間にかやられる緑一色、ノーターンキル、ほぼ無駄なループに自分の寿命よりもはるかに長大な無駄ループ、1ターン目から襲いかかってくるレクイエム付与のウェディング。これらのような(大半は聞いた話だが)理不尽なワンサイドゲームを遥かに超越したゲームがそこにはあった……
ちなみにルールは666号室ルール、初期手札5枚で8切りJバック階段スペ3返し10捨て及びジョーカー込み革命が有りのルールである。
状況説明はさておき……
「上がられたら上がり返すよ〜Q―2の4段階段、更に3で上がり〜」
真理ちゃんは真理ちゃんで酷かった。
鞄一杯のガラス○仮面でも持ってきておけば良かったかもしれない。ジョークのネタだけど。
「ならアタシのターンか……ほいジョーカー。あと革命」
「ちょっとストップ、ルール的には問題無いけど、既に1つ根本的な間違いを見つけたんだけどね……初期手札5枚だとあっという間に終わっちゃうよね? ……こんな大富豪っておかしくないかな?」
「ユート、これは世の中の縮図ですのよ? 敗者はトコトンに落ちぶれて、勝者は上り続ける……世の中もそういうものですの」
「いや、そうじゃなくてさぁ…………さっきからみんな一巡する前に終わってるのっておかしくないかなぁ? 具体的に言うと僕に手札を使わせて!」
そう、実はさっきからみんながみんな最初からクライマックスでいくせいで、最初の一回を除けば一度も場にカードを出せていない。手札の良し悪しなど関係無く、だ。
分かりやすく例えるなら、『このカードを出してあのカードをサーチしてターンを終了かな』などと後攻での動きを考えていたのに相手は先攻1ターン目から意味が分からなくなるくらいに展開して気が付いたら負けていた、という状態だ。
理不尽な展開にそろそろ僕の我慢も限界が近かった。
「革命ですか…………あ、わたしは10を3枚、10の効果で手札を2枚捨てま」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
あまりの理不尽さに、親友だと思っていた奴が裏切っていて(しかも元から裏切るつもりだった)かつ、友情ごっこだったなどと嘲笑された時の主人公のような叫びを上げた。
シーホースさんがビクッとしているがそんな事は問題じゃない。
30個目にもなろうかという黒星に、そろそろ僕の我慢も限界だった。
「なんで! ワンキル!? なんで!」
「ユートユート、知ってる〜? カードゲーム至上最悪クラスのワンキルの対策」
「鞄に一杯の漫画本を持ってこいってこと!?」
「…………それか、祈ればいいと思うよ〜もしくは笑うか」
「…………それ以前に理不尽過ぎて心が折れてるんだけど……」
なんなんだ、さっきからの流れは……何をどうすれば良いんだろうか……
『……逆に考えるんだよ〜手札が多くてもいいや、ってね〜』
…………手札が多くても良い? ……なるほどね……
「ハハハッ! ……敗者は大人しく……ハンディキャップを背負っていくよ……!」
天井を仰ぎ、シャッフルしたトランプカードの山から20枚を抜き、残りの34枚を自分の手元に置き、残った20枚を皆に5枚ずつ配った。
「な……!?」
「え……!?」
「なんやて!?」
「…………へ〜」
四者四様の反応を見せたけど、真理ちゃんだけはほぼ驚いていなかった。
真理ちゃんの助言だしね、これは。
「僕からの先攻でもいいかな? ……いいよね?」
「まあ、ええわ……みんなも、ええやろ?」
無言の肯定の後、最初の手札を切った……
「さ……3やて!?」
「それも、スペードの……!」
手札にジョーカーが2枚ある以上、スペードの3は既に死に札だ……他に3は無いし、3のシングルで出した。
僕の手札に8が4枚あるから、一気にワンショットされてまた負ける可能性は限り無く低いだろう。もし2を出されても、ジョーカーで返せばいいだけだ。
「……クラブの4、ですの」
「じゃあクラブの6かな〜?」
「クラブの9や」
「……縛りが発生したので、クラブのJです」
「はい、クラブの8」
再び僕の番からだ……ここは何を出すべきか……
「じゃあ、ダイヤの4」
「ダイヤの6ですの」
「8でアタシのペースに持ち込みたいところやけど……まあハートの9や」
皆がペースを崩して無理矢理に勝ちに行こうとする、今がチャンス……!
お楽しみはこれからだ!
「…………勝った……っ!」
ジョーカー上がりなどというヘマはしない……っ!
勝った……っ! 今僕は勝者となった……っ! 今この瞬間、蛇や魔女、スライムや人魚に打ち勝ったのだ……っ!
奴隷階級から一気に出世……っ! 正に大金星……っ!
「おめでとうユート。でもね、助言の後も10回は負けてたよね〜?」
「それは言わないで!」
ここぞという時にここぞというカードを引くようなカードゲームの登場人物と一般人が戦ったらどうなるかを、今日の大富豪で実感した。無理ゲーだとかクソゲーだとかそういうのじゃなくて、ただただ理不尽だった。数々のワンキルのような圧倒的な理不尽さはなく、ただただ理不尽だった。
「そういえばさ〜ユート?」
「ん? …………あれ? これってさっきの一戦目の手札?」
真理ちゃんが差し出してきたのは、最初のハンディキャップマッチの手札だった……ギリギリ最下位は免れたから全部手札を使ったとはいえ、枚数やスートはおろか、並び方まで完全に再現しているのはどういうことなのだろうか?
「さっきの手札での勝ち方、教えてあげよ〜か?」
「……うん、出来れば」
「まずはジョーカー2枚とこの小階段とこの小階段で13段の超絶究極階段を作ってね」
「あ〜……もうそれ既に穏やかじゃないよね?」
確かにジョーカー2枚を使えば13枚階段を出来たのだが、色々無駄が大きい気がする。
「これで、13枚分の10捨てがあるから、あとはジョーカーで代用して余った8と2で革命を使って速攻で勝ててたよね?」
「あ、駄目だ、やっぱりおかし……って、え? 10込みのストレートって、10以外の枚数分も捨てられたの?」
「えっ?」
「えっ?」
10捨てを知ったのがつい最近だから知らなかったのだけど……
「…………まあ、そういうこともあるよね〜?」
「まあ、最終的に勝てたから良いけど」
頭脳の格闘技(仮)に疲れたのか、眠ってしまっていた3人に布団をかけながら言った。
ルシフェル「…………なんだかデジャビュを感じたわ」
イズモ「ルシフェルさん、とりあえず帰りましょう」




