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人は魔女裁判を逆転出来るか?

遊斗「異議有り!」

センパイチョ「弁護人の異議は却下や」

遊斗「今の言葉は」

センパイチョ「弁護人!」

遊斗「矛盾」

センパイチョ「これにて閉廷!」

遊斗「酷っ!」

 部屋に入った直後にいきなり上下逆さまに吊されるのはこれで何度目だろうか? すぐ降ろされたのを抜きにすれば、少なく見積もってもこれで3回目だろう。

 それにしても、今度は何に怒っているのだろうか? デュラハンに血をかけられたせいで起こし忘れていたけど、ひょっとしたらそれかな?

「被告人小杉ユート」

 あれぇ? おかしいなぁ……なんでミラさんと真理ちゃんはともかく、先輩にシーホースさんまでいるのかなぁ?

「え、いったい何が始まるの? 魔女裁判か何か?」

「にゃっはっは! どうしたぁ、ユートはん? 今日はアタシらがアンタを裁いたげるからなぁ? ウヒヒッ」

「……マインの言っていた事が本当なら…………ユートさんを殺して私も死んででも、ユートさんが誰かとくっつくのを阻止しなければ……!」

「ねぇねぇユート? …………ボクはスライムであって湯たんぽじゃないんだよ?」

「みんながヤる気満々だ!」

 猛獣の眼光ビーストアイ闇照の眼ダレモイマセンヨ処刑者ジャッジメント、そして蛇女神メデューサの差はあったものの、みんなは色んな意味でヤる気満々だった。

「さあ……お仕置きを始めますの」

 もう既に、某龍騎士の裁判並みに理不尽な裁判の予感しかしなかった……


「まず、ユートはんのここ数日でのフラグ建築量、アタシのチェッカーで調べた結果やけどな……13本や」

「はぁ?」

 全てのツッコミを破棄して、一言だけ言った。

「半分を越した恋愛フラグに死亡フラグが数本や」

「へ、へぇ……」

 死亡フラグが大半だろうとは思うのだが、なまじ恋愛フラグにいくつか心当たりが無くもないから、落ち着けない。

 まてまて慌てるな落ち着けそれはKO=MEIのバナナわなだ! 粉バナナこれはわなだ

 落ち着け僕クールになれ、素数は良い数字だぞ。心が豊かになる……1、2、3、5、7……

「ん〜どうしたんや〜?ユートはん? ま・さ・か、この期に及んで心当たりなんてあるわきゃない〜なんて、寝ぼけたこと言うわけ無いわなぁ〜?」

「17、19、23……サア、ナンノコトヤラ……29、31、37」

 41、43、47、53、59……

 誤魔化すのはおそらく無理だろう……だって、先輩の威圧感だけで震えそうになってるんだよ……

 これ以上凄まれたら僕……正直に言いたくなくなっちゃうよ……

「確かに先輩の言ったとおり、恋愛フラグは1本か2本ぐらいなら立てたかもしれないよ。でも……」

「マインドクラッシュ!」


「次はわたくしの番です」

「…………ん? あれ……魔女先輩は?」

 ついさっきまで魔女先輩のターンだったと思うのだけど……いつの間にか居なくなっていた。

「魔女先輩? …………それはさておきまして、あなたの罪を数えてください!」

「馬の被り物を被ったまま凄まれても……」

 馬と人と魚の組み合わせがシュールなため、真面目な空気にはなりそうにはない。まあ、真面目な裁判になるよりはマシだろうが。



 シーホースさんとの裁判は何があったのか思い出せないくらいに、あまりにも適当であまりにも締まらない裁判だった……

 ただ、その後に残っていて次に裁判するのが真理ちゃんだったワケで……

「ユート……ボクの苦労、分かっているよね? ……冷たいスライムの体で、精一杯ミラの体温を上げて起こさないといけないっていうキツ~イ状態……」

「あ、うん、ごめん……」 決してミラさんの事を忘れていたワケじゃないけど、デュラハンを真っ先に追いかけたのは事実だった……

「まあこの件はもう謝ってくれたし、いいかな〜?」

「あ、真理ちゃんのターンはもう終わり?」

「…………『何勘違いしているんだ? まだ俺のバトルフェイズは終了していないぜ?』」

「へ?」

「エキドナをオトした件について、じ〜っくりと教えてくれないかなぁ〜?」

 この後無茶苦茶尋問されそうだ。

「……まあ、それに関してはアレだよ。その…………エキドナの種族特性を把握してなかった僕の責任だよ」

 折れた。説得が不可能に近そうだったから、僕が折れた。

「はいはい立ててしまったフラグがここまでになってしまったのは僕の責任かな。」

「謝って済むと思ったら大間違いだよ〜!」

 真理ちゃんならイケるかなと思ったけど、割と無理だった。


「最後はわたくしのッターン! ……ですの」

「なんで強調したの? ねえ、なんで強調したの?」

「………………」

 特にこれといった理由はなさそうだから、この話はここでお終いにしようか。

「それはそれとして、ミラさんは」

「ママとのフラグを立ててしまったことは別に良いんですの。クイーンサキュバスの件も許さないけど今は別に関係ないんですの。問題は……ここ2、3日わたくしを起こす役目を真理に任せてばかりいることですの」

「あー……いや、でも仕方がなかったんだ。明智光秀の本能寺焼き討ち事件ぐらいに」

 正直、ほぼ天下人である信長に謀反をしている時点で仕方がないとは言えないだろうが。

「…………まあそれは良いとして、とにかく出掛けすぎですの。特にここ数日……何回トラブルに巻き込まれたんですの? 場合によっては外出を制限しますのよ?」

「……今日だけでも……デュラハンに血をかけられて、コボルトの掘った穴に落ちて、シルフの吹かせた風にあおられて泉に落ちたり、野生のスライムに吸収されかけたり、ハニーホーネットにさらわれかけたり……」

「当分の間、わたくしの許可無しの外出は禁止ですの」

 ミラさんにとっては当然の措置かもしれないが、僕としてはかなり理不尽だった。

「まだ僕の話は終わってなかったんだけど……」

「もう良いですの。もう休んでいて良いんですの」

 僕にそう告げるミラさんは優しい目をしていた。


イズモ「今回は……お休みですね」

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