人はダンジョンを抜けられるか?
ダンジョンに突入した僕らを真っ先に待ち受けていたのはご丁寧にも囲まれるような立ち位置で始まったモンスターハウスだった……
いや、正しく言うならば小さなモンスターの群れか……
開幕モンスターハウスだと嘆きたくなる程の、小さなモンスター達の群れがダンジョンに入った僕らを待ち受けていた……
……ただ
「弱い!」
ドラグさんの爪の一薙でモンスターの群れは四散し……
「ん〜……どんっ!」
真理ちゃんによる範囲攻撃で、四散したモンスター達はみんな倒れた。
「早いよ! 開幕モンスターハウスだったのに全滅させるの早いよ!」
というかそもそも、モンハウ相手に範囲攻撃ってなんか……卑怯だよね?
「どうしたの〜? 正攻法だったと思うんだけど〜」
「ああ、うん……まあ、人によって正攻法って違うよね……」
通路に後退してタイマン張ろうとも、囲まれながら戦うMな戦法も、全体攻撃で一網打尽にするのも、みんな正攻法なのだ。
ただ……
「高いステータスでごり押しって、なんか違うよね」
ゲーマーとして、少なくともそれだけは言いたかった……まあ、手段を選ばないのなら今ので100点満点だったのだろうが。
「さっさと行くぞ、にもつ……いや、ユート」
「荷物って酷くない? ……何も出来ない荷物で悪かったね!」
僕は涙が止まらなくなった。
この後も無双状態のまま進み……
「弱すぎる!」
「アンタが強いだけや!」
「あすとらる〜っ、テンペスト〜」
『ヲォーッ』
「ああ、中ボスが外に流されて行く……」
「おう後輩! ここで会ったが百年……めぎゃりっ!」
「邪魔!」
「ユートがさり気なくひど〜い」
まあとにかく色々あったが、なんとか大きな扉の前……ボスの間らしき場所までたどり着いた……
たどり着いたのだが……
「…………」
「どうした、ユート?」
道中いくつか罠にハマりかけたものの、あっさりとたどり着いた。いや、道中が|楽過ぎた(・ ・ ・ ・)。
例えば落とし穴、全ての階の同じ場所に……少なくとも一階までは落ちてから少し動くだけで連鎖的に落ちるように仕掛けられていた。見え透いた罠だが、本来下まで落ちる為に仕掛けたかのような罠だった……
他の罠は? よく注意すれば引っかからない上、もし引っかかったとしても、音だけの仕掛けなど、殺傷力の無いしょうもない仕掛けばかりだった……
僕らはダンジョンを登るということに拘りすぎていたのではないか?
「なんやユートはん? 犯人の手の平で踊らされとった事に感付いた探偵みたいな、思い詰めた顔しとるやんけ?」
……そうか、|地下室(・ ・ ・)だ。この寮には地下室があるのだ。
不自然な罠の数々には遠回しに戻れという忠告ではないのか?
「……ちょっと忘れ物思い出したから、真理ちゃんと取りに行ってくる。あ、ちゃんとすぐに戻ってくるよ」
「え? ボクも行くの〜?」
「…………まあ良いだろう。すぐに戻って来い」
「うん分かった」
嘘だけど。
イズモ「第2回はスライム!」
真理「真理ちゃんだよ~
というわけでお兄ちゃんの出番はないから帰っていいよ?」
イズモ「……じゃあこうしよう。真理ちゃんの苦手な神話を先に説明してから帰るよ?」
真理「いいよ~」
イズモ「じゃあ……スライムの始祖は色々言われているけど、多分クトゥルフ神話のショゴスが最初のスライム的モンスターだと言われています」
真理「ボクのターンだね~?
『危険』なスライムのルーツはD&D、TRPGの時代に生まれたらしいよ~。
でもね……いつの間にかスライム=ザコになっちゃったんだよ~」
イズモ「真理ちゃんとかショゴスとか、本来のスライムは強いハズなのにね。まあこの辺は時代の流れっていうことで納得してね、真理ちゃん?」
真理「お兄ちゃん、スライム状の強い人で、忘れちゃいけない先輩を忘れてるよ~?」
イズモ「何? クラゲ?」
真理「『バイオライダー』さん」
イズモ「…………あの人をスライムの枠に入れること自体がかなり失礼に当たるからね?」