始まりはモン娘無しで進められるか?
モン娘無し(人間だけとは言っていない)
「う……どうしよう……」
小動物めいたアトモスフィアを放つ(クラスメート談)小柄な少年、ボクこと小杉 遊斗(16)は悩んでいた……
何を悩んでいたかというと、将来の事に……
あと2年と経たずに来る卒業……その後、どうするべきか……すぐに就職するべきか、進学するべきか……進学ならどこに進むべきか。
無理をしてでもワンランク上の大人になれるように上の大学に行くべきか、それとも自分のレベルよりも少し上の大学に進むべきか……
……それとも、親の勧める大学に進学して、親のコネで就職し、親に頼り切っていくか……
「あらら、どうしたんだい、ユート? そんな……敵のルドガーに質問しそうな蟹頭ぐらいに悩んだような顔をして……ぼくの占いでキミを導いてあげようか?」
相当に悩んだ顔をしていたらしく、クラスメートで親友の乃原さんに心配されてしまった。喩えは分からないが、相当深刻な表情だったらしい。
「……はぁ、いつものアレだよ。いつもの」
「ああ、アレだね?」
そう言って乃原さんは僕を見下ろしながら、可哀想な生き物を見る目で呟いた。
「植物捲り占いによれば初手含むトップ10枚が死に札の絶望的な未来……つまり縮むことはあっても伸びないという結果が出たのに……牛乳を飲んでも骨が強くなるだけだよ?」
「違う、そうじゃない」
確かに絶対絶望な占い結果だったけど、そうじゃない……
……あれ、目から流れるこれはなんだろう……?
「ああ、なるほど……進路の事だね? 第一手は何度占っても必ずリクルーターが来る、つまり定まらない未来を示しているんだよ」
「それじゃあ駄目なんだよ……悩みが悩みのままじゃないか……」
占いで進路を決めるのもだめ? ……ほら、奈良時代や平安時代は占いで都市の位置を決めたという話があるじゃないですか?
……本音を言ってしまえば、占いよりも自分で決めたいんですよ。でも、それで決めるには時間が少なすぎる。だから、占いに頼るしかない……でも、占いは悉く……タロットは月、カードゲームではリクルーター、その他色々な占いを試しても結果はほぼ同じ……未来は決まっていないらしい。
「……これは……占いの結果が出たよ。まずはリクルーター、これは」
「無限の可能性、だよね?」
いつも通りの結果だった……百発百中で当たる占いなのだが、いつも将来の進路はこうして示される……
「まだ4枚あるんだよ? じゃあ、4枚一度に捲ってしまおうか…………これはこれは……まず2枚目は間接的なサーチカード、遠回しに未来を決める人物が現れる暗示。そして3枚目はコストに最適なカード、その未来の糧となり未来を確定する人物の暗示。そして4枚目はドローソース、知識が必要となるが、それには取捨選択が必要となるであろうという暗示。5枚目は……知識がちょっとした厄に成りうるという暗示。」
5枚目以外はかなり良い結果だった……
ただ、1つだけ聞いてみよう……
「今回も聞くけど、その占い本当に当たるの?」
「当たるさ、だって……ぼくの占いは必ず当たるからね」
完全に結果論だが、乃原さんの占いは外れなかった。勿論、今回も……
「ん? メール着信? ……なる程、ぼくが…………ねえユート、ちょっと……夏休み、開いてるかい?」
「夏休み? ……何日?」
「全部」
「夏休み全部? うーん…………全部!?」
せいぜいが一週間だと思っていたのだが、まさか夏休み全部とは……
「……乃原さんがそういうお願いしたらさ……断ったら色々とマズいパターンだよね?」
去年の年末など、思い出したくない……
冬休み数日前に呼ばれて何が始まるのかと思いきや、原稿の手伝いだったりしたのだが……
いや、よそう。脳内で厳重にロックされている出来事を無理に思い出す必要はないだろう。
「……それで、今回はどういうお願いなの?」
「小規模な政府機関からの依頼でね……」
「前回と規模が違いすぎだよ!」
コミケの期待の新サークルと、政府の機関とでは……というか、乃原さんの伝手はどうなっているのだろうか?
コミケの時だって、NOと言い続けていた印刷所の人の首をいつの間にか縦に振らせていたし……
「ぼくの知り合いの知り合いにそこに勤めている人がいてね……」
「ス○夫君かな?」
「まあとにかく、詳しい事はまた説明するから……行ってきて、くれるかな?」
「うーん…………そこまで言うなら……行ってもいいかも……」
「分かった! じゃあ伝えておくね? 身長は155センチ、ひょろひょろ可愛い男の子君だって」
「ひょっとして、怒られたいのかなぁ? じゃあお望み通りに叱ってあげるよ」
冗談めかした会話だったのだが、まさかこの会話が後にあんな事になるとは……思っていなかった
カードめくり占いは別名森羅占いです。
リクルーターは遊戯王プレイヤーなら大体分かると思います。準制の「奴」です